第7話 親子

「今日は報告がある!」

俺たちガードマンは、いつもの朝礼に出席していた。だが、そこで聞かされたのは驚きのものだった。

「相馬チーフが無期限の休養の入ることになった。彼女の復帰まで、この俺、佐藤がチーフを務める。皆、よろしくな!」

なんだと、相馬チーフが!?ひとまず、朝礼の後、詳しい事情を佐藤新チーフに聞くことにした。

「ああ、やっぱり気になるよな。相馬旧チーフからお前だけには言っていいと伝言を頼まれている。とりあえずそこの路地裏に入るぞ」


「なあ、勿体ぶらずに教えてくれよ」

「相馬チーフは、、、」

佐藤は言いづらそうにしていたが、決意を固めたのか、、、

「末期のガンなんだ」

「、、、」

あの言葉があったから何となくは予想してはいたが、やっぱりか。

「そうか、その様子だと察していたか。流石だな須藤」

「なあ、それは才華も知ってるのか?」

「いや、彼女には伝えてない。心配をかけまいとするチーフの配慮だ」

「、、、仕事の後に会いに行ってくる」

「ああ、行ってきてやれ」


仕事後、、、


俺は相馬旧チーフが入院している病院を訪れていた。彼女のいる部屋の前に来るや否やドアが開いた。

「やっぱりな、来ると思っていたよ」

「あんたからお叱りを食らわないようにしっかりと仕事をしてから来たぜ」

「うん、それなら私から言うことは何もない。さっさと帰りな」

「ちょっと待て。俺が言いたかったのは病気のことを才華に伝えないのは間違ってるってことだ。彼女は俺たちが思ってるより遥かに強い」

「いや、私たちは親子だ。才華様の側に長い間付き添っているから、彼女のことはお前よりもよく知っている。だから、、、」

「よし、分かった。じゃあ、1組の親子の話をしよう」

俺はそうして自分とその母親について語り出した。

「時はまだ世界が戦争を繰り広げていた頃、1人の母親と、彼女の4人の子供がいた。長男と次男が彼らをまとめ、長女と次女が場を和ませていた。だが、母親は大黒柱となり毎日休むことなく外で出稼ぎに行っていた。長男はそんな母親を心から尊敬し、彼女の邪魔にならないようにと可能な限り配慮をしていた。だが、戦火が街に広がり、母親も空爆で命を落とした。そんな彼女の最期の言葉が分かるか?」

「、、、」

「『ごめんな、最期までお前たちの役に立てなくて』だとさ。けれど、長男は逃げることに全力を注いでいたから、そっけない返ししか出来なかった。彼はそれを永遠に後悔し続けたんだ」

「その話、まさか、、、」

「いや、聞かないでくれ。俺が言いたかったのは、例え家族だったとしても、何も言わないまま死なれると生き残った方が辛い目にあうってことだ。じゃあな」

俺は振り返らずにその場を後にした。


翌日、、、


「今日も警護お疲れ様!では、解散!」

佐藤チーフの言葉で俺たちは散る。今日も宿舎に戻ろうとしたとき、才華から声がかかった。

「煉太郎さん、お母さんのこと、本人から聞いたよ。煉太郎さんが助言してくれたんでしょ?ありがとね」

「?さあ、なんのことだか、、、」

「もう、とぼけちゃって。でも、私は大丈夫!明日からのお仕事も頑張るぞー!」

どうやら相馬旧チーフは考えを改めたのだろう。俺の昔話も役に立ったのか。そう考えると普段の仕事にもより一層力が入るのだった。

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