第5話 迷い
「俺はお前を確かに元いた場所とは違う世界に送った。それは事実だ」
「じゃあ、青太郎が見つからないのも、、、」
「いや、正確に言うとそれは違う。彼は特殊な人間だからこっちにはいない。それだけだ」
「、、、せめて青太郎の安否だけ教えろ」
「、、、彼は無事だ」
「そうか、それなら安心だな」
「彼は私の弟、氷の悪魔に力を託された。彼もお前と同じように力を持つ者となったのだ」
「なんだと!?それじゃあ、あいつも力を得て俺みたいに不老になっているのか?」
「いや、それはない。人間は元いた世界とは別の場所では歳を取らないだけだ。だから、彼は今、70代で生存している」
「そうか、俺のような苦しみは味わっていないんだな、よかった、、、」
俺はほっと胸を撫で下ろした。あいつが無事で、ちゃんと老後を過ごしているならそれでいい。
「お前、元の世界には戻りたくないのか?てっきりそう懇願するかと思ったが、、、」
「いや、いいさ。俺にはこの世界で守りたい存在が出来たからな」
「だが、お前は歳を取れない。その守りたい存在とやらが死んでもお前は生きながらえるのだぞ、永遠にな」
俺は一瞬迷ってしまった。確かにそれは辛い。自分だけ生き残るなんて、、、
「まあ、頼み込まれても、願いには応じられないがな」
「それは、何故だ?」
「世界のパワーバランスのためだな。炎の悪魔である俺が力を託したお前と、氷の悪魔である弟が力を託した青太郎。この二者が同じ世界にいては均衡が取れない」
「いや、構わないさ。さっき言った通り、あいつが無事ならそれでいい」
「ああ、せめて悔いのないように行動しろよ。またな」
「ああ、またな」
最後に別れを言い、炎の悪魔は消えた。
俺は寝床で考えていた。さっき、炎の悪魔との対話で俺の中に迷いが生じた。それは不安だったからだ。本当にこのまま歳を取らずに周りの人間が死んでいくのを見ていることしかできないのか。だが、俺には才華が、、、
俺は眠れずに外を歩いていた。すると、、、
「やあ、須藤、こんばんは」
「よお、相馬チーフ」
「どうした、眠れないのか?」
「ああ、そんな感じだ。そう言うチーフこそどうした?顔がやつれているようにも見えるが、、、」
「私の心配はしなくていい。そう言えば、今日は才華様のゲリラライブの警備をたった1人でよくこなした。流石は期待の新人だな」
「まあな」
「お前は私亡き後でもしっかりと才華様をお守りするんだぞ」
「?それはどういう、、、」
「まあ、いいじゃないか。これからもよろしく頼むぞ」
相馬チーフはそう言って闇の中に消えた。
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