第4話 才華の機転

ある日、俺は事務所の前で警護をしていた。そんな時、、、

「才華ちゃんに会わせてください!お願いします!」

「ダメだダメだ。ほら、あっち行った!」

「そこを何とか、、、」

「おいどうしたんだ、何を揉めている?」

「あ、須藤じゃないか。このファンがしつこくてさ。須藤からも何か言ってくれよ」

「そう言われてもなあ。俺も最初はそのファンと見た感じは大して変わらなかっただろうし、、、話だけでも聞いてやらないか?」

「あ、ありがとうございます!」

俺はひとまず小太りの男から事情を聞くことにした。

「僕は鶴岡圭也(つるおかけいや)。実は僕の妹の、ほら、この写真の子、ケイミが才華ちゃんの大ファンなんです。でも、今は病気のせいで病院暮らし、回復の兆しも見えないんです。そこで、妹を元気付けるために、彼女を才華ちゃんに会わせてあげたいんです。どうでしょうか」

「うーん、確かに事情は分かった。俺としても是非協力してやりたいんだが、いかんせん1人のファンをそこまで依怙贔屓(えこひいき)するのはアイドルとしてどうなんだろうな」

「そ、そんな、、、」

「ちょっと待ったぁ!」

俺たちの間に割って入ったのは、なんと才華本人だった。

「話は聞かせてもらったよ!それなら私にいい考えがあるの!」


後日、才華の提案で俺と才華の2人はケイミのいる病院を訪れていた。

「なあ、才華。本当に警護は俺1人でよかったのか?」

「いいのいいの、煉太郎さん強いんだし、1人で十分だよ。それに病院っていう場所だし大所帯で来るのは避けたかったからね」

彼女は病院内の特設ステージに立った。そう、才華の案とは、病院を相手にゲリラライブをすることだった。これなら大々的に、そしてちゃんと慈善活動としてライブが出来て才華をケイミに会わせられる、彼女の名案だった。流石アイドル、機転が利くな。

「みんなー!盛り上がってるー?」

「きゃー、才華ちゃーん!」

「今日は楽しんでいってねー!」

才華のライブは大盛り上がりだった。ケイミも観衆の中にいて、彼女もとても楽しそうだった。


ライブ後の握手会にて、、、


「わ、私、才華さんのファンなんです、、、!今日は来てくれてありがとうございます、、、!」

「いえいえー、こちらこそ今日はライブに来てくれてありがとうね!」

才華とケイミは固い握手を交わす。するとその時、ケイミは才華にこっそりと耳打ちした。

「今日はお兄ちゃんの頼みで来てくれたんですよね。ありがとうございます」

俺には超人的な耳の良さで聞こえたが、それは俺と才華にだけ聞こえたのだった。


ライブ後の事務所にて、、、


「今日は無茶を通してくれてありがとうございます、社長」

「いいのいいの、まあ、こういうのはたまににしてね。さあ、須藤くん、才華ちゃんを頼むよ」

「了解だ、社長どの」

俺は才華を自宅まで送っていた。

「煉太郎さん、今日は付き合ってくれてありがとね」

「いや、お前の仕事ぶりもいつ見ても見事なものだな」

「いやいやぁ、それほどでもぉ」

「お前はアイドルとして立派にやっているさ。いつも通り胸を張っていろよな」

「はーい」

「おっと、もうお前の家だな」

「そうだね、もっと煉太郎さんとお喋りしていたかったなぁ」

「はいはい、また明日な」

「じゃあね、煉太郎さん」

俺たちは才華のマンションの前で別れた。その直後、、、

「久しいな、青年」

「お、お前は、、、!」

俺の目の前に現れたのは、なんと炎の悪魔だった。

「おい!お前のせいで散々な目にあったぞ!」

「まあ、そう言うな。久しぶりにお前の様子を伺いたくなってな。ここまで来たんだ」

通りかかる人は俺に好奇の視線を向ける。どうやら炎の悪魔は俺にしか見えていないらしい。

「、、、とりあえず、そこの路地裏に入るぞ」


「お前、俺を別の世界に送りやがったな!」

「ああ、やはり気付いていたか。それには理由があるんだ。実はな、、、」

炎の悪魔は語り出す。

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