第3話 初めてのお仕事
「いいか、新人!お前は才華様のお気に入りのようだが、我々は容赦しないぞ!ビシバシ指導して行くから覚悟しろよ!」
俺は教官の女性、相馬(そうま)チーフからガードマンのイロハを叩き込まれていた。
「まずは服装!そんなみすぼらしい格好じゃダメだ!このスーツを着るんだ!」
俺は言われるままに黒スーツを身にまとった。
「うむ、様になっているじゃないか!だが、問題は中身だ!次は対人訓練を行ってもらう。佐藤!来い!」
「うっす、新人、よろしくな!素人だからって情けはかけないぞ!」
佐藤と呼ばれた大柄の男がこちらに向けて突進してきた。俺はそれを正面から受け止めた。
「おお、すげえ、あの佐藤を真正面から、、、」
「あの新人、大物かもな、、、」
観衆のガードマンからひそひそ声が聞こえる。
「ぐぬぬ、新人に負けるわけには、、、」
佐藤は何とか巻き返そうと姿勢を整えようとする。
「あらよっと」
俺は佐藤を軽く片手で持ち上げると、少し離れたところにあるマットに投げた。
「ぐ、、、なんてことだ。この俺が手玉に取られるとは、、、」
「そ、そこまで!須藤(すどう)煉太郎といったな。お前、戦闘の経験は?」
「ああ、長い間生きてるから色々あったさ」
「おお、、、」
「あの見た目で一体何歳なんだ、、、」
「お前は早速前線で働いてもらうぞ。望み通り才華様のお側での勤務だ!さあ、ついて来い!」
俺は早速初日から才華のすぐ側で働くことになった。
「あ、煉太郎さん、おはよ!今日もお仕事頑張るぞ!」
「ああ、ほどほどにな」
才華はライブホールでたった1人で堂々と歌って踊る。それは見事なもので、観客だけでなく、ガードマンの俺たちをも圧倒した。そんな中、無線で通信が入る。
「現在ライブホールの近くで過激派のファンの一部が暴動を起こしている模様!手が空いてるやつはすぐに来てくれ!」
「須藤、才華っちの周辺警護は俺たちに任せろ。お前は現場に慣れるために行って来い」
俺はすぐに応援に行った、なるべく才華に悟られないように、、、
「須藤、よく来た!ほら、あそこだ。ああいう連中が暴れていては才華様が集中してライブが出来ない。よし、お前の初仕事だ、さあ、行け!」
「了解だ、相馬チーフ。言われなくても、、、!」
俺は猛スピードで暴徒化したファンの群れに突っ込んだ。
「はっ、はっ!」
手っ取り早く、且つ穏便にことが済むように、手刀で一人一人なるべく早急に気絶に追い込んだ。
「すごい、何、あのガードマン。只者じゃないわね、、、」
野次馬からも驚きの声が上がっていた。
「須藤、こっちはもう大丈夫だ。才華様のところへ戻っていいぞ」
「イェス、マム」
俺は相馬チーフの指示通り元の位置に戻った。
それからは特に滞りなくライブは進み、無事終わりを迎えた。
「みんなお疲れ様!外で暴動を抑えててくれたんだよね。ありがとう!」
正直驚いた。あの見事なライブをしながら、外の状況も伺っていたのか。
「特に須藤さん、あなたは1人で、しかも手刀で全員を抑えたんでしょ?流石期待の新人ね!」
その晩、、、
俺は用意された宿舎で久しぶりに横になっていた。だが、睡眠をしばらく取っていなかったため、寝方を忘れてしまったようだ。それに俺の幼少期とは明らかに違う点がある。それは陽が沈まないことだ。確か炎の悪魔から力をもらい、現世に戻してもらってからはずっと沈まない太陽が存在していた。俺はその異常性にようやく気づき始めた。
「煉太郎さん?」
俺は眠くなれないので外を散歩していたところを才華に目撃された。
「どうしたの?やっぱり眠れない?まあ、こんな仕事は初めてだろうし、仕方ないよ」
「いや、そうじゃないんだ。ただ、、、」
「?」
「やっぱりなんでもない。お前こそ早く寝ろよ」
「はーい」
才華は事務所の奥の方へ消えていった。俺も宿舎に戻っていった。
電気街巡りが習慣になっていた頃には既に気付いていた。ここが元いた日本ではなく、ネイルという国だということに。恐らく炎の悪魔が何かの手違いで別の世界に送ってしまったのだろう。それだと、青太郎の安否が分からない。あの戦争を切り抜け、生き残れていたならいいのだが、、、
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