第52話 父と母


「依織ちゃん! そんな事があったなんて不安でしょ。ご両親も帰って来られないなんて。ご両親が帰って来られるまではずっとここにいてくれていいからね。でも、依織ちゃんのご両親にはきちんと挨拶しておきたいわね」

「依織のママも是非にって言ってたんだけど、俺から伝えるからって言っといたんだ」

「そうなのね。睦月、それで私は今までなにも聞かされてなかったんだけど、これはどう言う事かしら」

「あ〜ごめん、言いづらくって」

「それで済む話かしら」

「ごめんなさい。私のせいです。睦月さんは私を庇ってくれて何も悪くないんです」

「そうね。依織ちゃんは何も悪くないわ。悪いのはこの常識を知らないバカ息子ね」

「こ、この度は、相談もせず、すいませんでした」

「まあ、罰は後で与えるとして、依織ちゃんのお母様と話せるかしら」

「はい、少し待ってください」


依織が早速スマホでママに連絡を取る。


「うん、そう。睦月さんのご両親が。…………うん。そう。お母様が………うんそう。それじゃあお母様に代わるね」

そういって依織がスマホを俺の母親に渡した。

「高嶺睦月の母です。………はい。依織さんと……………。はい、心配でしょう。はい………安心してください。………はい。責任を持って…………はい。その時は是非………はい。お待ちしています」


どうやら無事に依織のママとの話は終わったようだ。


「依織ちゃん、これから私の事はもう一人の母親だと思ってお義母さんと呼んでくれていいのよ。こっちの人の事も義父だと思ってくれていいわ。将来的に本当にそうなるかもしれないし、今からそう呼ぶのも悪くないでしょ。依織ちゃんのお母さんとも話は出来てるから問題ないわ」

「はい」

「私依織ちゃんみたいな娘に憧れてたのよ〜。もう心配いらないわ。記憶が戻るまで睦月にしっかり頼るのよ。まあ戻らなくても、ずっと睦月を頼ってくれて私達は問題ないからね」

「ありがとうございます、お義母様、お義父様」

「きゃあ〜依織ちゃん。女の子っていいわ〜」


依織普通におかしくないか? 初対面でお義母様とお義父様って……

それに、そう呼ばれた両親の反応がおかしい。

感極まった感じで、若干目も潤んで顔が紅潮している。しかも父さんまで。


「父さん……」

「睦月、娘ってこんな感じなんだな。俺は今猛烈に感動しているよ。依織ちゃん! 何か欲しいものとか無いか? あったら言いなさい、なんでも買ってあげるから」


おいおい、父さん。父さんってそんなキャラじゃないだろ。

もう完全に依織にメロメロじゃないか。


「いえ、大丈夫です。お義父様ありがとうございます」

「お義父様か……。いい響きだな。睦月じゃもう無理かと思って半分諦めてたんだ」

もう無理って、父さん俺のことそんなふうに思っていたのか。俺はまだ高校二年生だぞ。まだ可能性はあるだろ。

「依織ちゃん可愛すぎるわね。そんな可愛いのになんでうちの睦月と?」

「いえ、そんなことないです。睦月さんは優しいですし、いつもわたしのことを守ってくれますし、わたしにはもったいないぐらいの人です」


依織、親に対して俺のことを褒めてくれるのは嬉しいけど恥ずかしすぎる。

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