第51話来訪者

『ピンポ〜ン』

「睦月さん、誰か来たみたいです」

「誰だろう? 基本この家には誰も来ないんだけど、宅配かな」

「出てみましょうか?」

「ああ、じゃあお願い」

まあ、親から何か送られてきたのかもぐらいに軽く考えていたので、特に気に留める事もなく、依織に応対してもらった。

「はい、どちら様でしょうか?」

「えっ? あなたこそどちら様?」

「えっ?」

「ここ、高嶺睦月の部屋よね」

「はい、そうです」

「じゃあ、あなたはどちら様?」

「私は草薙依織です」

玄関でのやりとりが聞こえて来て俺は一気に血の気が引いた。

この声はまさか……

俺は慌てて玄関へと走った。

「あら睦月いるじゃない。違う家に来ちゃったかと思ったわよ」

「か、母さんどうしてここに……」

「それは、睦月が全く連絡よこさないからどうしてるかと思って心配になって、父さんと見に来たのよ」

「それなら電話してくれれば……」

「睦月、それよりもこちらの可愛いお嬢さんはどちら様かしら」

「…………」

「睦月さん……」

「ふ〜ん睦月さんね〜。睦月さん説明してくれるかしら? ねえお父さん」

「ううん、まあ、睦月も男だからな」 

気まずい……

気まずいが説明しないわけにはいかない。

「中に入れてもらっていいかしら」

「は、はい、中へどうぞ」

少し前の俺なら、依織が俺の部屋に俺の両親を招き入れるこの風景を想像する事など、絶対に出来なかっただろう。

というより今でも、この状況に現実感が全く湧かない。

「あら、綺麗にしてるわね。それに……。ところで紹介してくれないのかしら」

「あ、うん。こちら草薙依織さんです」

「それはもう聞いたわよ。それで?」

「同じ学校の同じクラスで……」

「そう、それで?」

「あの……お付き合いを」

「きゃ〜! やっぱり彼女なのね。こんなに可愛い子が睦月の……信じられないわ」

「お父様、お母様、睦月さんとお付き合いをさせていただいています草薙依織です。よろしくお願いします」

「お母様……。感動しちゃう。こんな可愛い子からお母様……。信じられないわ」

「まあ、そういう事だから」

「ちょっと睦月、それだけじゃないわよね。その腕もそうだけど、まだ言う事があるんじゃないの?」

「え……腕は骨折しちゃったんだけど」

「他にもあるでしょ」

これは、もう完全にバレてる?

「他にって?」

「睦月さんは一人暮らしなのかしら」

なんでわかったんだ? 依織の服とか食器とかでか?

「あ、ああ、そのうち伝えようと思ってたんだけど、依織もここで生活してるんだ」

「やっぱり。睦月の部屋にしては、女性らしい感じがしたのよね。それで、どういう事かしら?」

観念した俺は、これまでの事情を両親に全て話す事にした。

もちろん俺の嘘だけは隠して話したが。

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