第15話 ドメーヌ?

「よかったら、依織のパパとママのことを聞いても大丈夫?」

「もちろんいいですよ」

「それじゃあ、二人共今はフランスにいるんだよね」

「そうです。祖父が年齢を重ねてきたので、事業の手伝いをしに行ったんです」

「フランスなんか行ったことがないから想像もつかないけど」

「綺麗なところですよ。祖父はフランスでも少し田舎に住んでいるので過ごしやすいです。虫はちょっと苦手ですけど」

「依織は行ったことがあるんだ」

「はい、夏休みとかに結構行っていましたよ」

「そうなんだ。フランスの虫ってどんなの?」

「日本と同じようなのが多いんですけあまり見かけないのもいたり。あと結構食べたりするみたいで」

「食べるってなにを?」

「人が食べるんです。日本でも昆虫食ってあるじゃないですか。それがもっと進んだ感じです」

「そう。文化ってあるからね」

「はい」


確かに昔から日本でも地方によっては昆虫食の文化もあるし、最近はタンパク源としての昆虫食も増えてきた。

ただ個人的にはカップラーメンの方がいいと思う。


「わたしも一緒に来るように誘われてたんですけど、祖父がドメーヌをやっているので、特に虫がおおくて、住むのは少し難しいかなと思って」

「ふ〜ん、ドメーヌなんだ。あ〜ごめんドメーヌってなにか聞いてもいい?」


知ったかぶって同調してみたけど、聞いたことのない言葉だし後が続きそうにないので正直に聞いてみた。


「あ、すいません。ドメーヌっていうのはワインを作っているところなんです。葡萄畑があって醸造したりワインを一から作っているところのことです」

「そうなんだ。なんかすごそうだね」

「はい。祖父はすごい人だと思います。ですがわたしはワインを作れる自信もなかったので」


それはそうだろう。日本で中学生まで過ごしていきなりそのあとにワイン作りを手伝うっていうのは普通に考えて難易度が高いと思う。

確かに畑があるところなら、ここよりも虫が多いのも納得だ。

それにしてもワイン作りか。テレビでしかみたことがないけど、もしかして依織のおじいちゃんは結構お金持ちだったりするのか?


「睦月さんのご両親は、沖縄なんですよね」

「そう、父さんの仕事の都合でね。俺は今の高校に進学が決まったあとに転勤が決まったから一人でこっちに残ることにしたんだ」

「そうなんですね」


それからお互いのことを少し話ながら過ごした。

そもそも俺は学校での依織のことしか知らなかったので、少しでも普段の依織の事を知ることができてよかった。

だけどおじいちゃんがフランスのドメーヌって俺とは全く違う。

俺のおじいちゃんは今は退職しているが以前は地方で普通のサラリーマンをしていたはずだ。

学校でも俺とは住む世界は違う気がしていたけど、話を聞いて本当に違うんだと実感じてしまった。

ドメーヌか。多分これからの人生の中で出てくることはない気もするけど、憶えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る