二日目 後編

「じゃあ…こっち行きましょうよ。こっちに新しくできたコンビニがあってそこの品揃えがいいんです」そういって何も聞かずに自然に私の手を取って優しく引いてくれる姿はとても頼もしかった。


私は今のこのあたりのことを知らなくてもここに何年も住んでいたという事実だけがある。そえれでも私はこの場所にはコンビニがあると思ってたし、これから行くコンビニも知らない。「御影君。……今日は何をしてたんですか?」手を引いてくれてるのに何も話さないっていうのがいやだったから考えた末の会話の初め。格好をみればわかりきったことでもこれくらいしか会話の糸口がなかった。

「俺はジョギングを少ししてました。この道、車も人通りも少ないので走りやすいんですよね」「へぇー今度走るときにこっちの道を走ってみます」普段、走らないくせに会話に対する反応をしなきゃっていう脅迫概念の元そんな感想をもらす。


「ここです」何を話そうか、なんでこんな風に接してくれるのかを疑問に思いながらついていく。話題も、理由も何も思いつかないままついてしまった。

新しくできたというコンビニは普通のコンビニと同じで、何も違いがなかった。特に真新しいという感じでもなければ商品が特別珍しいということもなくただ普段行くコンビニだった。

でも、ここまで落ち着かないのは多分…御影君と一緒にここにいるから。

これ買うのがお弁当と求人の本っていうのがなんとなく恥ずかしくて御影君を失望させてしまう気がする。だから何にも買う気がないっていう風にして雑誌コーナを横目で見ると目当ての求人雑誌があった。でも御影君の前だと買いにくいからもう一回ここにこよう。そう決意して特に買う予定もなかったけどとりあえずお菓子だけ買って御影君と別れる。

そして家に帰ってお菓子を置いてからもう一度御影君に教えてもらったコンビニにいく。


御影君に連れられて歩いた道を繰り返し歩いて行く。この道を使うのは二回目で景色をようやく覚え始めたところなのに『懐かしい』『寂しい』『愉しい』みたいな感情が同時に湧き上がってくる。

感情が何事もないのに大きく揺れ動いた以外は特に何事もなく求人の本を買えた。それに朝ごはん用のお弁当も。

もうお腹が減った…。



 日記の記述

6月16日 最近は雨が多くなってきた……。髪がはねて困る。明日はミー君と近くのコンビニで待ち合わせでそこから遊びに行くからその為にも早めに寝て体調を万全にしよう!

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