第14話授業の開始
聖剣学園に入学式を終えてから、色々あった。
主人公ジャンヌちゃんに突撃しようしたけど、壁ドンなラインハルトに邪魔されて失敗。
その後の《顔合わせ会》でも喧嘩の仲裁をして失敗。
その後は引き籠り生活からの、食堂(レストラン)で令嬢ヒドリーナさんと友だちなる。
あとラインハルトと、銀髪のクールな美男騎士ジーク様との、汗ふきシーンを堪能。
本当に色々あった、ここ数日。
だが学生である私たちの本分は、勉強と鍛錬。
ファルマ学園の新年度はスタートしていた。
◇
授業が始まってから、二週間が経つ。
えっ、いきなり時間がとびすぎ?
もしかして私が、また引き籠りしていたと、思っている?
いえいえ、心配無用。
ちゃんと学園生活を頑張っていました、私マリアンヌは。
でも、この二週間の授業は、本当にバタバタしていた。
学園のことを、とにかく覚えることが多かったの。
まずは広大な学園の敷地内の、設備を全部覚える必要があった。
あと訓練によって変わる装備や準備も、必死で覚えていった。
そして授業や訓練が開始となって、改めて分かったことがある。
ここが“学園”であり、決して“学校”ではないことだ。
この世界は戦乱の続く異世界だ。
世界を救うべく私たち乙女指揮官(ヴァルキリア・コマンダー)が受けていたのは、主に軍学だった。
基礎的な戦術論にはじまり、大陸史や戦記の考察。
人心掌握術や陣と補給線の構築など、そのジャンルは多岐にわたる。
それ以外でも女性としての礼儀作法や教養学など、一般教養も組み込まれていた。
常識的には覚える事は、かなり多すぎる。
でもクラスの女の子たちは、今のところは何とか授業に付いていっていた。
何しろ乙女な生徒たちのほとんどは、貴族令嬢である。
幼い時から帝王学として教養や軍学、歴史などを、厳しく叩き込まれてきた。
この世界では《貴族=上級軍人・指揮官》である。
だから貴族令嬢たちは、ある程度の余裕をもって授業や訓練を受けていたのだ。
えっ?
平和な日本から転生してきた私は、大丈夫かって?
ふふふ……よくぞ聞いてくれましたね。
この私には“今世の貯金”というものがあったの。
簡単に説明すると、マリアンヌさんの方の高い知識のこと。
侯爵令嬢あるマリアンヌさんは幼い時は勤勉で、才能あふれる子だった。
だから基本的に頭はかなり良い。
だから中身がアホな私でも、鼻ホジホジでも授業は大丈夫だった。
えっ?
油断大敵、だって?
た、たしかに中身の私も、ちゃんと勉強しておいた方がいいかもね。
ねえ、ハンス。
そこの勉強の本をとってちょうだい。
うっ……急に眠気が。
やっぱり戦術とかの難しい勉強は、マリアンヌさんの方に任せておこう。
ふう……。
さて、こんな感じで、学園生活は順調に進んでいた。
◇
そんな二週間が経った、ある日のランチタイム。
「マリアンヌ様、今日はこちらの席にいたしますか?」
「ええ、そうしましょう、ヒドリーナ様」
今日もクラスメイトな令嬢ヒドリーナさんと一緒。
食堂(レストラン)の空いている席を見つけ、腰をかける。
ここは宿舎の方ではなく、校舎の方の食堂(レストラン)。
例によって高級ホテルのような食堂(レストラン)だ。
「さて、いただきますか?」
「そうですわね、マリアンヌ様」
ヒドリーナさんと優雅なランチタイムを楽しんでいく。
今は午前中の座学を終えてからの、長めのランチの時間。
二時間くらいはゆっくり出来る。
えっ?
人類を救うべく軍事学園なのに、スケジュールが余裕すぎる、って?
そうなのよね。
ファルマ学園での
――――◇――――
・朝はゆっくり起きて、宿舎の食堂(レストラン)で、
・午前中の授業は、主に適度な軍学や座学など。
・ランチタイムは二時間の休憩。食堂(レストラン)で食べ放題。
・午後も授業や訓練。でも三時からは九十分のお茶の時間。
――――◇――――
平日はだいたい、こんな感じかな。
うーん?
でも、こうやって客観的見ると、かなり優雅すぎるスケジュールだよね。
設定では《滅ぶべき運命にある大陸を、救うべき人材を輩出する学園》なんだけど、それにしてはおかしいよね、この優雅さ。
きっと、ここは乙女ゲーの設定の世界の中だから、仕方がないよ(小声)
現実に近い世界だけど、変なところはゲームしているからね。
私も慣れて気にしなくなってきた。
とにかく今はヒドリーナさんとの、楽しいランチタイムを楽しもう。
ん?
誰かが、こっちをチラチラ見てくるぞ?
何だろう?
……「ほら、マリアンヌ様よ……"あの”……」
……「今日も"あの”ヒドリーナ様とご一緒だわ……」
これは他の乙女たちのヒソヒソ話の視線だ。
会話も"あの”が強調されている感じだ。
ふう……また、これか。
あの《顔合わせ会》の事件以来、やっぱり私は女の子たちから敬遠されていた。
ヒドリーナさんも他の女子から、距離を置かれている。
つまり、ここ二週間、私は常にヒドリーナさんと一緒。
授業中も一緒の席で、ランチも一緒。
学園も有名になりつつある“ふたりボッチ”なのだ。
まぁ、これも私は自業自得だから仕方がない。
顔合わせ会の私の説教を聞いたら、誰だった敬遠しちゃうよね。
予想をしていたといえ、これは少し心のダメージがきた。
同じ学年に数十人も、乙女な同級生がいるのに、誰も近寄ってこない、
はっきり言って辛い。
でも、なんとか大丈夫。
だってヒドリーナさんが友だちになってくれたから。
あの時に勇気を出して、友だし申請してくれた彼女に感謝だね。
ちなみにヒドリーナさnは今日も、真っ赤に染まった激辛料理を食している。
彼女の実家のある地域では、辛い料理が名物らしい。
それにしても真っ赤なスープ。
対面にいる私は、見ているだけ涙が出てきそう。
本当にヒドリーナさんは辛い物好きなんだね。
「ところで、マリアンヌ様。明日の休日は、いかがなさいますか?」
「えっ? 明日ですか? そうですわね……」
明日は週に一度の休日。
この二週間でも休日はあったけど、授業開始直後でバタバタしていた。
ほとんどゆっくり出来なかった。
だから明日は本格的な初の休日となるのだ。
うーん、何して過ごそうかなー?
家事と雑務は、執事と侍女さんたちが全部やってくれる。
でも休みの日まで、勉強はしたくない。
こっちの世界はゲームとネットも無いから、中身の私は休日がけっこう暇。
うーん、明日は何しようかな?
「もしも、お暇でしたら、私(わたくし)と街へ、買い物に出かけませんか?」
「街へ買い物に……ですか?」
ヒドリーナさんの提案に思慮すること、約一秒。
「ええ、喜んで」
提案を了承する。
そうか、ここは異世界。
つまり街で買い物も出来るのか。
すっかり忘れていた。
「では今日のうちに事務室に、外出届を出しておきましょう。あと、買い物のリストも……」
ヒドリーナさん先週の週末に、街へ買い出しに行っていたという。
だからテキパキと段取りをしてくれる。
おー、有り難い。
未経験の私は、うんうんと頷きながら話を聞いていく。
あと後ろに控えている若執事のハンスに、指示を出しておく。
書類とか面倒くさいから、頼むよ、ハンス。
それにしても外出か。
だんだんとテンションが上がってきた。
異世界の街は、どんな感じなのかな?
来るときは馬車の中から、素通りしてから、ちゃんと見て見たいな。
ちなみに私はこっちの異世界で、街に出かけた経験は無い。
何しろ基本的に上級貴族令嬢は、街には出かけない。
買い物はお抱えの商人が、直接屋敷に持ってきてくれる。
お父様が支払いしてくれる感じだ。
あと学園の乙女は、気軽に敷地外にはいけない。
正式な外出の許可を申請する必要があったのだ。
あー、明日は買い出で買い物か。
更にテンションが上がってきたよー。
馬車の小窓から見た感じだと、ファルマの街は中世ヨーロッパ風な街並みだった。
大通りには商館にギルドがある。
あと路地には市場や小さな雑貨もあって、通行人の活気もかなりあった。
中性ヨーロッパ風な異世界の街か。
もしかしたら定番の冒険者ギルドも、あったりするのかな?
冒険ギルドは憧れの設定だなー。
鑑定や冒険者の登録の水晶も、あるのかな?
なんか妄想したら、興奮して鼻血が出てきそうだ。
ふう……深呼吸して落ち着かないと。
◇
そんな感じで、その日はヒドリーナさんと、買い物の計画を立て。
いよいよ休日の朝を迎えることとなった。
「おはようございます、マリアンヌ様!」
「おはようですわ、ヒドリーナ様。では、参りましょうか」
いざ、異世界の街へ!
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