第9話まさかの来訪者
皆さんこんにちわ。
悪役令嬢マリアンヌこと、私です。
ご無沙汰していました。
えっ、そんなに久しぶりじゃないって?
あれ、そうなのかな?
こっちじゃ時間の流れが、ちょっと違うから勘違いしちゃった。
さて本題も戻ります。
◇
ちなみに私マリアンヌ今は絶賛、引き籠り中。
理由はずばり、教室に行くのが恥ずかしいから。
だって皆の前で、あんな恥ずかしい
主人公ジャンヌちゃんとヒドリーナさんを止めるためとはいえ、あれはちょっとやり過ぎた。
こうして思い出しただけでも、また恥ずかしくなってきちゃった。
だから宿舎の、自分の部屋から外に出られないのだ。
入学式の後の準備期間は終わった。
いよいよ明日から本格的な学園生活も始まるというのに、どうしよう。
えっ、なんで私がこんなにも、恥ずかしがっているのかって?
えーと、分かりやすく説明する為に、以下に質問に答えてみてちょうだい。
――――◇――悪役令嬢クイズ――◇――――
Q1.いきなり現れた悪役令嬢が『
…この場にいる皆さんにもですわ!』と言われたら、普通のクラスメイトは、どう思いますか?
~答え選択~
▶ ・ひく
・ドン引き
・精神的に怖い
Q2.その悪役令嬢が、いきなり赤ワインワインを自分のドレスにかけたら、普通のクラスメイトは、どう思いますか?
~答え選択~
▶ ・かなりひく
・超ドン引き
・おかしな子と今後は関わりをもたないようにする
――――◇――クイズ終了――◇――――
そうよ……。
そこの、あなた見事、全問正解です!
こんな感じで私は、学友たちをドン引きさせてしまった。
これからの学園生活を考えると、本当に恥ずかしく
あっ、そうだ!
思い切って三年間この宿舎で、このまま引き籠っていようかな?
幸いにも我が家は金持ち貴族だから、生活には困らないはず。
ぐぅー、ぐぅー
あー、それにしてもお腹が空いたな……。
昨日から自室に引き籠っていたから、何にも食べていない。
空腹で倒れそうだよ。
その時であった。
「マリアンヌ様……
若執事ハンスの声が、扉の向こうから聞こえる。
えっ?
昼食⁉
いくいく!もちろん行くんだから!
「すぐに準備をして、食堂に参りますわよ、ハンス?」
「……はい、お嬢さま。かしこまりました」
このままじゃ餓死しちゃう。
急いで化粧を直して、着替えて食堂に行かないと。
えっ?
三年間、ここで引き籠っていく話は、ですか?
こ、これは……兵糧攻めにあったら、仕方がない決断なのよ。
『腹が減ったら戦はできぬ』っていう、あの格言があるでしょ。
さあ、食べなかった昨日の食事の分まで、今日は沢山食べるんだから!
◇
私はハンスを引き連れて、宿舎の一階の食堂に到着。
無事にランチを頂くことに成功する。
あー、美味しかった……
そして無事に満腹になれました。
よほど私は空腹だったみたい。
気がついたら、今日のランチをペロリと完食していた。
ちなみに食堂と呼んでいたけど、宿舎のここは豪華すぎ。
日本的に分かりやすく説明すると、ここは食堂(レストラン)だ。
テーブルクロスが敷かれた卓が、広い室内に整然と並んでいる。
壁には高そうな絵画は飾られて、優雅な雰囲気で高級レストランみたいな所だ。
私が前世で利用していた学生食堂なんかとは、天と地ほどの差。
フレンチのフルコースとレトルトカレーとの差ぐらいある。
なんと驚いたことに、この食堂(レストラン)には、専属の料理人(シェフ)が何人もいる。
各国の宮廷料理や、郷土料理に精通した料理人(シェフ)たちが勢ぞろい。
まさにザ・本格派な多国籍なレストラン。
しかも生徒は食べ放題だという。
食いしん坊な私にとっては、ここは天国のような場所だ。
でも今世の自分は、一応は侯爵家の令嬢。
人前でガツガツと食べることは出来ない。
だから今の私は音もたてず、素早く食事を接取していた。
でも本音を言えば、日本式の箸(はし)が欲しいかも。
ナイフとフォークは苦手なんだよね。
あっ、そうだ。
今度、木の枝を削って、箸を作ってみようかな?
もしかしたら、その箸が学園で大流行。
注文殺到で、巨額の富を得たりしないかな?
"異世界生産系チート”みたいな感じで?
あっ……そういえば、今の私は貴族令嬢だった。
特にお金に不自由することは、なかった。
なんとなく残念である。
◇
そんなことを食堂(レストラン)の席で、妄想していた時であった。
「マリアンヌ様……席を、ご一緒しても、よろしいでしょうか?」
「えっ? はい? ええ、もちろんですわ!」
もちろんオーケー。
大歓迎です。
私は食べ終わっちゃっているけど、相席は大歓迎。
お話しながらの食事こそ、女子の
それにしても誰かな?
こんな悪役令嬢顔なマリアンヌさんに、勇気を出して同席をしてくる素晴らしい方は?
私も顔を上げて、この方のご
「……ヒドリーナ……様?」
なんとヒドリーナさんだった。
顔合わせ会で、ジャンヌちゃんと事件を起こした張本人。
「はい……ご迷惑でございましたか?」
「いえ……もちろん、嬉しゅうございますわ……ヒドリーナ様と同席できて!」
でも、ここまできて無下には断れない。
満面の作り笑いで、了承する。
「ほ、本当でございます! 私(わたくし)も嬉しゅうございます!」
ヒドリーナさんは本物の満面の笑みで、私の向かい席に座る。
料理は先に頼んでいたみたい。
給仕係りは、すぐにランチを運んでくる。
「では、失礼いたします、マリアンヌ様」
「どうぞお構いなく。
ヒドリーナさんは私の目の前で、ランチを食べ始める。
彼女の地元のドルム伯爵領の郷土料理だという。
スパゲティに似た麺料理。
でも、とにかく真っ赤で、見ているだけで辛そうな料理だ。
例えなら、タバスコやラー油の原液のパスタ。
うわー、すごい。
ヒドリーナさんは、何事もなかったように、食べきっちゃったよ。
私も辛い物は嫌いじゃないけど、さすがにこの赤さは無理かもしれない。
食事が終わり、ヒドリーナさんも紅茶タイムになる。
ここから令嬢のお話タイムだ。
「ふう……さて、先日は誠にありがとうございました、マリアンヌ様」
「"先日の”と言いますと……?」
「《顔合わせ会》で、仲裁して頂いたことです。実は私、あの時は……」
紅茶を飲みながら、ヒドリーナさんの話を聞いていく。
何でも、最初はジャンヌちゃんに対して、悪意はなかったという。
軽く揶揄(からか)うつもりが、あそこまでエスカレートしてしまったと。
「マリアンヌ様の演説を聞いて、私は自分の行いが、恥ずかしくなりました……それで勇気をもって、本日はここに参りました。汚されたドレスの件を含めて、本当にご迷惑をおかけしました!」
「お気になさらないで、ヒドリーナ様。あの件は私が勝手に、出しゃばったこと。過ぎたことは気にしないでおきましょう」
本当はついさっきまで、私は、後悔しまくっていた。
でも、そのことは内緒にしておこないとね。
「あ、ありがとうございます! マリアンヌ様……」
ヒドリーナさんは感動していた。
感極まって涙まで流している。
うっ……なんて感情が激しい子。
でも、ちゃんと話をしてみたら、ヒドリーナさんの性根は、そこまで悪くないかも。
きっと自分の感情に、素直すぎるのかもしれない。
性格に裏表がない真っ直ぐな感じ。
私は嫌いではないタイプの子だ。
どっかの若執事みたいに、無表情で何を考えているか分からなない人より、何倍も好きかも。
ジロリ
あー。
私の背後に控えていた若執事ハンスが。こちらをジロりと
ごめんさない。
ちなみにファルマ学園では上級令嬢は、執事や侍女を持ち込んで入学可能。
侍女は身の回りの世話係りで、執事は秘書みたいな感じかな。
私も面倒くさいことは、全部ハンスに丸投げしてある。
伯爵家の令嬢ヒドリーナさんの後方にも、執事さんがいる。
こちらはベテランで優しそうな渋い方。
なんか、そっちの方がいいなー。
ジロっ。
あー、ごめんなさい。
ハンスの視線が怖いので、ヒドリーナさんに意識を戻そう。
ん?
もじもじしながら、何か言いたそうにしているぞ?
「寛大なマリアンヌ様に、もう一つお願いしてもよろしいでしょうか……?」
ヒドリーナさんは急に真剣な表情になる。
いったい何のお願いだろう?
また違う喧嘩の仲裁を、して欲しいのかな。
もしくはイケメン騎士でも、紹介して欲しいとか?
あー、それだったら、助けるのは無理かな。
何しろ私は顔合わせ会から、逃亡した身。
うっかりパートナー騎士を選び忘れたの。
つまり交友関係がゼロに近い、
だからイケメンは紹介できないよ。
ん?
でもヒドリーナさんのお願いは、違うことみたい。
何だろう?
「おともだちに……なってくださいませ、私と」
「えーっと、……"おともだち”でございますか?」
私が引き籠っている間に、"おともだち”という新語が、学園内に出来たかもしれない。
一応確認しておかないと。
「はい。マリアンヌ様とお友達となりたいです……
聞き間違いじゃなかった。
それにして学園生活の初日、いきなり厳しい選択がきたもんだ。
自慢じゃないけど前世でも、私は友だちが少ない。
ネット上のフレンドは沢山いたけど、リアルで友人と呼べる人は皆無。
そんな生粋の
しかもお相手はトラブルメーカー型のヒドリーナさん。
えーと、こういう時は、どう返事をすればいいのかな?
うわー、どうしよう……。
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