第12話 帝都とメイド
再度応接室へ。そこには先ほどお茶を入れてくれた、メイドさんがいた。
「忍様、カグヤと申します。暫くお世話させて頂きます、判らぬことは、ご用命を」
メイドのカグヤさんは、スカートを両手でつまみ、優雅にカテーシーをきめていた。
「よろしくお願いします、忍です。暫くお世話になります」
カグヤさんは、アイドルのように可愛いので、すこし焦ってしまう。
「緊張なさらなくても、言葉使いに遠慮は要りません、カグヤとお呼びください」
「じゃあカグヤさんで、改めてよろしく、忍て呼んでくれてもいいんだが」
ミズキさんが横で、なに言ってんだこいつ、みたいな顔をしていた。
「お客様は、呼び捨てできませんので、ご了承ください」
こうして専属メイドが、喜びも束の間だった、
「明日から受験のための、カリキュラムが御座います。書類に目を通してください」
渡された紙を見ると、びっしりと予定が記載されていた。
午前は早く起床、剣術の基礎錬、昼に休憩を挟み魔術講習、訓練、夕食後に一般常識講義、就寝。マジですか。
計算、文字は、出来てるから講習いらないとの事。時間が無いそうです。
買い物は、揃えてくれる、徹夜、缶詰でも時間が足りない、
カグヤさんが敏腕秘書にみえてきた。論破して悔しがる時に、活き活きとしている。
少しSっ気がある様だ。話が終わると夕方近くになり、食堂へ向かう。
夕食の準備が、進められていた。
お箸とフォークと、ナイフと、スプーンが、準備されている。
着席を促される、長方形のテーブルで、皆対面で座るようだ、真ん中を指定された。
着席が終わると、お盆に載った料理が、運ばれてきた。
見たことがある、京都観光に行った時に見たメニュー、懐石風の和食である、米と、味噌汁かなフタが、付いているのでわからん、刺身と天ぷらがのった皿、空の小皿はわさびショウユ用かな、小皿には豆腐が、更にもうひとつの皿には漬物。
しずくさんが口を開く
「忍さんの故郷の味と、食べ方は同じと思うんだけど、使いやすい食器を使ってね」
料理は京懐石に近いが、食器の違和感半端ないな。
「過去に、金色の髪の青い目の転移者の人も、居たらしくて、お箸が使えなかったの、両方の食器を最初に出すの、食べてちょうだい、調味料は醤油と、ダシを入れたものがあるから、好きな方を使って」
「はい、お箸にさせてもらいます、いただきます」
納得である、日本人だけとは限らない、外国人の転移者も、居たようだ。
椀のふたを開けると、味噌汁であった、具には芋と、さやえんどうが入っていた。
天ぷらは海老と、これは竹の子、丸いのはしいたけ、十字に割れ目が入れてある。
竹の調味料入れを開けると、醤油の香りがした、片方はシイタケ出汁かな、色が薄い、薄い方はダシ入りのようだ、小皿に醤油を入れる。
何の魚かは分からんが、いやな匂いがなく、歯ごたえがある新鮮だな。
熟成させた魚も、とろけるようで、悪くないが、新鮮な場合は歯ごたえがいい。
わさびはない様だ、あれば使いたかったが、贅沢は言えないな、これだけの料理日本だと、本来はお高いんでしょう。
「おかわりいりますか」
聞かれたので遠慮なく頂いた、異世界初めての日本風料理は、大満足だった。
食器が片付けられ、応接室に。
カグヤさんは給仕、ヤガミさんは立ったまま、しずくさんの対面に座った。
「では、明日からの予定が、決まったんだけど、色々聞きたいことはある」
「これから俺は、どうなるんでしょう」
「そうね、まずは学園に入学ね、寮に入り三年間学ぶことになるわ。卒業後は就労でそれぞれの道に、進むことになるわよ。忍君の場合、他家への養子も、在学中に希望すれば有りね、そうなれば、家を手伝うことになるわ」
「次に転移者なんだけど、この国では百年前が最後なんだけど、今までの間でも、うわさ話は出ているわよ」
異世界に来ている人が居るかも?。
「真偽は分からないけど、急に技術が伸びた国が、有るのは事実、多分本当よ、石油だったかしら、その言葉が、外国から来たのが、ここ一年だからね、この国に転移者が来た時代には、石油と言う言葉はないのよ」
街並みや服装のデザイン的には、明治大正の雰囲気に近い。過去の転移者がその時代の人なら納得だ。刀が普及しているしね。
過去の転移者は、元いた世界では、石炭は知識としてあったが、ここでは、どれが石炭の代用になるかが、分からなかったんだろう。
「最近、鉄製の馬が要らない馬車、帆の無い鉄製の煙を出す船が、作られた国があるのよ、鉄車、鉄船と呼んでいるわ、表にはでてない情報よ」
驚いた、自動車と鉄製の蒸気船が、作られているようだ。産業革命の国がある。
「顔色を見ると、気になるようね、忍君の、故郷の技術だと思うわ、別に来ている子が、居るんじゃないかしら」
百年、停滞していた技術が動き出すか、転移者が居るなら、会って見たい。
「その国は近いんですか、転移者がいる様だと、会いたいですが」
「今は止めて置いた方が良いわ、この国と覇権を争った国よ、現在も余り仲が良くないわ、それに居るとは、公表されてないわよ」
「転移者ということは、この国の、皇帝、宰相、ミツバ辺境伯、そして、この家の者、シキモリが知ってるわ、他の人は、知らないわよ、かん口令が、敷かれてるのよ、外で転移者と言うことは、話しちゃだめよ、安全のためよ」
俺参上、とはいかない、チートが遠のいていくな。保護されただけでも良いか。
最悪モルモットか、奴隷、この国には、あるのか?。
「しずくさん奴隷って、この国にあるんですか?」
「奴隷制度は、この国では犯罪者だけ、重犯罪者は永年奴隷か処刑ね、一般にはないわ、だだ、奴隷制度が、残ってる国もあるわよ」
あるらしい、やはり怖い世界のようだ。
「他に質問は、他に気になることは、聞いてくれるといいわ」
自室に、暫くすると、ノックがあり返事をした、開けるとカグヤさんがいる。
「お風呂の用意が、出来ました、準備が出来次第、ご案内致します」
「少し待って、着替えを準備するから」
「あと、洗物が有れば、部屋の扉横にある箱に、入れて置いてください」
そういえば服を買ったが、着替えは洗ってない。
「分かりました」
風呂場まで案内されて、脱衣所に入る、脱ごうとした時に、ふと気になる。
なんで、隣に居るんですかね、気になったので、聞いてみた。
「カグヤさん、もう案内はいいですよ。入りますので」
「脱衣のお手伝いを、しようかと」
お手伝いフラグきた、軽い男と、見られてはいけない。
ここは断ろう。
「大丈夫です、宿でも問題なかったですし、自分で出来ます」
「ではお体を、お流しします」
「お願いします」即答だった。
そこでノックの音が、扉の開く音がした。ヤガミさんがいた。
「おお、今からお風呂ですかな、私が洗って差し上げよう」
ヤガミさんの登場と、返事で、一挙にテンションが下がった、断れねぇ。
「よろしくお願いします」
意気消沈ながら、返事をするのが、やっとだった。
そこ、男の付き合いですねって、表情しないでくれます、カグヤさん。
カグヤさんに、遊ばれてたような、気のせいだろうか。
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