第9話 帝都への道と異世界

馬車に揺られながら話をしている。

「さて、忍君の素性も分かって、簡単な私達の事情も話しておくわね、巻き込んじゃったし、私は元帝国憲兵隊長よ、シキモリは元騎士団副団長、ユカリはまあ辺境伯親族」

なにやらすごい肩書きが出てきた。それで襲撃の時も、慌てなかったと理解した。

普通は命乞いか、騒ぐか逃げる、情けないことに私ならそうする。


「それで襲撃の理由は、派閥争いに関連しているわ。詳細は現在知らないほうが君のためでもあるの、学園に入ると分かるわ、君が狙われることは現状ではないわ」


一通り話して一息つく。命の危険は無いようだ。


「話は変わるけど、学園にはルールがあって、入学学生は基本寮住まい、外出は自由、門限あり、冒険者活動や外泊は申告制、暦は一ヶ月三十日、一週は六日、四日、活動日で二日が、安息日よ」


ユカリさんも話し出す。

「私も貴族だから、入学は決まってるけど、忍も貴族扱い、そこは同じよ、忍のいた所ってどんな所、馬がない馬車。空を飛ぶ乗り物。鉄の船や鉄の馬車。一人で乗る二輪車も記述があったわね」


ユカリさんは、目を輝かせながら、質問を連発してくる。

こんなに話が好きだとは、気がつかなかった。話では古い時代の話のようだ。


内容を聞く限り、産業革命、工業化はまだされてないらしい。


「この国では自動車、飛行機、自転車かな、二輪車かな、それは無いんですね。ぜんぶ開発されて実用されてます」


「あるのね、こちらでは動力機関が、開発が難しいらしくて、燃料も問題があるらしくて、作られて無いのよ」残念そうに話す。


言われて見れば自転車はともかく、他のものは石油、ガソリン、電気が必要なものばかりだ。気球とかはありそうだが、聞いてみた。


「気球というか浮かぶ箱の、技術はないんですか」


「浮かぶだけの気球ならあるわよ、ただ速度も遅いし風任せだから、軍用にしか普及してないわよ、飛行魔物の影響もあるしね」


気球はあるらしいが、飛行船と呼べるかは怪しい。

飛空する魔物もいるらしい。航空技術の未発達の事情が見えてきた。


天空の城のようには、いかないようだ。


事情を話していたのだが、ユカリさんの邪魔をしないように口をつぐんでいた、ミズキさんが、見計らって口を開いた。

「異世界見聞録のファンなのよ、ユカリは、百年前の転移者が残した本よ」


どうやら転移者は本を遺していたらしい。


「現在の技術水準では本の内容は、再現不可能ではないけど、技術が壁になっているのよ」


話を聞いてて技術チートできると思ったが、専門技術を学んだ訳でもないので、返事が出来ない。


本の技術を思い出して木炭、石炭、魔石ではどうだろうかと思ったので聞いた。

「木炭、石炭、石油、魔石の技術は無いんですか」


「あるわよ、石炭、石油は分からないけど、現在も検討されてた木炭技術は、軍用だけで現在も研究中よ、魔石技術は民間用もあるわ、過去の遺産の応用だけどね」


技術が停滞している、又は安定している時代らしい。

魔石技術とはなんだろう。気になりミズキさんに聞いてみた。


「失った過去の技術、魔石を使った大帝国があったと言う伝承にある技術で、あるときを境に衰退した技術、戦争があったとか、神の怒りに触れたとか、伝説がある話よ、遺跡から、たまに出てくるの遺物が遺産」


興味深い話だが、神様から転移のときに聞いた話では、神罰ではなさそうだが。

神様も話をした時に、隠してそうだったしな。


ユカリさんに風景や、どんな生活だったのか聞かれた、若返っており転移時期までの話だと、四十年余りの人生で矛盾が出る、学生生活の時代までの話をした。


「そうなんだ、貴族のような生活ね、十五歳までは幼年学校か、教会が学びの場で。そこで読み書き、計算をおしえられるの一年間ね、あとは、任意で学園に行く」


「成績優秀者、又は跡継ぎ意外の子供は執事、メイド見習いも多い、帝都の学園でコネを、兼ねての就職活動の場のような感じね」

「昔は貴族と、金持ちの子供だけしか通えなかったの、学費も高かった、転移者が来てから、学園の学費は、国から出るように変わったらしいわ」

自慢げにユカリさんが説明してくれた。


この国では読み書き、計算は国が教えてくれる。


転移者がこの国を、変えていたようだ。チートが、また一つ消えた。

試験自体は中学並みのようだ、受験勉強自体は、私にとっては簡単だ。


道中何事も無ければ良いが、その危惧が抜けない。


襲撃を受けるのが一度とは限らない、連絡手段が乏しいからだ。


魔物が出ることもあり、最初より道はいいが、舗装されてないので揺れる。


一日で馬車でたどりつける距離に、大きな街がある。


無事につけるか不安がよぎる。


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