第8話 街と領主と過去の転移者

昨夜のうちに領主の館に、行くことが決まった。


手前が男子、奥の部屋が女子で、寝ることに。


見透かされているのだろう、いい事は無かった。

馬車でえらい目にあったうえ、動き回ったのもある、気がつくと朝。


新しい朝がきた、窓から入る明かりと肌寒さで目が覚めた。


シキモリさんも起きていた、刀を手入れしていた。

「おはよう、よく眠れたかい、疲れは取れたかな」


いい笑顔だ、これが女性なら、顔を赤くしていただろう、だが、男だ。

「おはようございます、疲れは取れたようです」


「それは良かった、今日は領主の館で、忍君の手続きを、してから出発予定だ」

少し考え込んでしまう。


「どうかしたのか忍君」

不安を見透かしたのか聞いてくる。


「手続きどうしても必要ですか、このままでも、いいんじゃないかと」


「君を守る為に登録は必要だよ。登録制度は、戦争の原因になるのと、行方不明になるのを防ぐためだよ」


「戦争と行方不明ですか」


「神の加護持ちは、優秀ゆえに、いや優秀でなくても取り合いに、なるんだよ。実験体、奴隷など人権を無視しても保護されず、犠牲になった子もいる、そのための保護なんだよ」


ぞっとしてきた、まあ大戦にまでなってたので、ありえる。


「ここ百年は、迷い人の記録が無い。唯一分かるのが神の加護だ、人間は余ほど神に好かれないと、加護はもらえない、それだけでも特別なんだ」


「わかりました」そうとしか返事が出来ない。


女性陣も奥の部屋から出てきた。

「「おはようございます」」

二人からの挨拶にこちらからも答え、宿屋出入り口に向かった。


出入り口のカウンターにつくと、昨日の親父が居た。

「朝食、食べてから出立するかい、同じく銅貨5枚だ」


「そうさせてもらいます」ミズキさんが返事をした。


食堂では昨日の、おねーさんが、配膳していた。


見るとハムエッグと、バゲツトにバターを塗って焼いたものが皿に置かれた。干し肉と野菜の入った、スープも付いていた。


この世界でも、日本と似た朝食なんだ。


食事が済み、領主の館に。山の手にある領主の館が近づいてきた。

二十分ほどで館についた、大理石の館の隣に、石造りの二階建ての建物があった。

そこが役所のようだった。


中に入ると、質素であった。受付嬢にミズキさんが話す。


「緊急の案件で上に、お話できないかしら」


何か手帳を、受付嬢に見せると。一時驚いたようだったが、直ぐに平静を取り戻し返事をした。


「うかがってまいります、暫くお待ちください」



暫くすると女性が、降りてきて案内してくれた。

「どうぞ、こちらへ」階段を上り二階の豪華な扉の前で扉を開けてくれた。


中には執務机があり、壮年の時代劇に出てきそうな、渋いおっさんが待っていた。


「ようこそミズキさん、今日は例の用件でかな、隣のお譲ちゃんはユカリちゃんか」


「はい、おじ様お久しぶりです」顔見知りのようだ。



「お久しぶりです、襲撃の件、対応どうなりましたか」


おじさんが話す。

「ミズキさん裏はとれた、刺客だったようだ、これから暫くは大丈夫だよ」


どうやら襲撃の件は、片付いたようである。

ふと、ミズキさんが何者か気になってしまった。


「ところで、隣の男の子は誰かね」


「迷い人のようなので、確認と登録に、うかがいました、忍君カード出して」

ミズキさんにギルドカードを渡す、おじさんに見せる。


「ほう迷い人か、わが国では百年出てなかったが、証明は出来そうかね」

ギルドカードを見ながら、おじさんが急に眼光鋭くなり俺を見定める。


「君の出身の国は、どこかな、帝都の名称でもいいよ、名前は、年齢は」

おじさんから俺に質問が来る。


「日本国から来ました、首都は東京です、名前はカミヤ シノブです、15歳です、古い時代では江戸です」

返事を聞いたとたん、おじさんの顔が緩んだ。


それから、暫く前の世界の聞き取りがあった。

資料があるらしく、前の転移者の資料を見ながら、話を比べてる。


「神の加護もあるし、間違いなさそうだね、君を転移者として協議しよう、過去の記録では帝国となってたが、国が変わったか、名称が変わったようだね」


「確認で、また帝都で、話を聞くかも知れん、そうだ加護は、隠して置いた方が良い」


どうやらこちらに来た転移者は、かなり古い時代の、日本人だったようだ。


「君の身分は、我がミツバ辺境伯家が、仮に保証しよう、保障人登録をしてやろう」


「迷い人認定され、君の身分が決まれば、騎士爵相当だ貴族になる」


「それまでは平民だからな、仮でも私が後見人なら、下手な手出しもされるまい」


辺境伯様だったようだ、恐縮してしまう。しかも不穏な話もまざってる。


「ああ、硬くならなくてもいいよ、皇帝陛下はの前では、あまり横柄では駄目だが、私はこの帝国では、元老院の議席と、執政官の地位を持ってるぐらいだ。昔ほど身分制度は厳しくないよ、まあ一部のバカどもは分かってないが」


最後の方はつぶやきに近かったが聞えてしまった。いわゆる県知事みたいだと、解釈した。不穏な発言もあったように思う、一部の人は気にすると言うことだろう。


「それで君は、これからどうしたい、どこかの爵家の養子になりたいなら、正式に認められた後、斡旋もするよ、まあ学園を卒業してからになるが」

辺境伯様から提案は、意外なものであった。


「まだ分かりません、生活基盤も無いですし、まず帝都に受験に行こうかと」

すぐに返事をした。


「そうだな君には爵位が、もらえると思うが、ほかの貴族子息、子女は親の爵位を継ぐまで一代騎士爵同等の身分になる、学園に入れば貴族だ、親の爵位の低いものは、軽く見られる傾向がある、急がんでも良いが、考えてくれ」


「何かを探し、夢を追うのもよかろう、若い者の特権だな」

辺境伯様は話しながら、優しい笑顔を浮かべた。


ミズキさんが話し出した。

「うまく確認が取れて何よりです、本日中に帝都に向かいます」


ユカリさんも「おじ様、私も行ってきます」と返事をしていた。


「了承した、忍君のことは、こちらからも連絡を入れておこう、いずれ私も帝都へ上京するがな、ユカリちゃんも、気をつけて行っておいで」辺境伯様も返事をした。


こうして役所を出て、辺境伯領を出て馬車は一路、帝都へと進む。


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