第3話 異世界と盗賊
目を覚ますと草原に居た。
のどかな草原風景を見ながら元おっさんは、ノンビリ空を見上げた。
「夢だったのかな、異世界そんなうまいこと無いよな。」私は独り言をつぶやく。
自分の服装を見ると現実と気がつく、見たことも無い服を着ているのだ。
過去の大戦時の西洋国家の将校軍服のような服だ。
デザインがおしゃれである。本の表紙で見た服装そっくりであった。
周りを見ていると街道のような、舗装されて無い道が見えた。
リュックと日本刀のようなものが、隣に置いてあった。
開けると、綺麗な石のようなものが数個。
惣菜パンと、水筒入り飲料が入っていた。いたれりつくせりである。
何が出来るか試したくて、異世界定番のあれをやってみることにした。
「ステータスオープン」
何も反応が無い、この世界にステータスシステムは無いのだろうか。
「鑑定」再度叫んでみた。こちらも何も反応が無い。
本当に普通の人間として、異世界に送られたようだ。
それと、共にかなり恥ずかしくなってきた。
草原とはいえ大声で叫んで、ポーズを決める俺。
絶対に変人、又は中学の病だと思われること、請け合いである。
仕方ないのでリュックと刀を持ち歩き始めた。
歩き始めて街道に出た。悩んだが街道のどちらを向いても道が続く。
どちらに行くか棒切れを見つけて、倒してから行く方向を決めた。運任せである。
暫く歩いていると腹が減ってきた。
少しひらけている小高い丘に、イスに出来そうな石と大きな木があった。
そこで昼食にした。パンと飲料を腹に入れた。
休憩を取っていた。慣れない未舗装の道、普通に歩くより疲れる。
ハイキングに行ったことはあるが、ここまで路面は悪くない。
遠くから馬の鳴き声が聞えてきた。だんだん近くに来ているようだ。
時代劇などで聞く、馬の急いで走る音に近い。
ひずめと馬車の音も聞えてきた、近づいてくる。
近くで、大きな衝撃音が聞えた。
直ぐに木の陰に隠れて、音の方向を見る。
三頭の馬に乗った、みすぼらしい男達が、馬車にむらがっていた。
強盗のようだ。ちょうどこの場所は木に隠れていて、私は見つかっていない。
強盗の男たちが、大きな声を張り上げる。
「おとなしく両手を挙げて出てこい、命だけは助けてやる」
剣を持った男が話した。
馬車に群がる男達を見ると、こちらに背を向けたままだ。
助けに入りたいが、ここは異世界。
異世界テンプレだと、能力があり見つかってしまうかもしれない。
武器も使った事がない。どうするか悩んだ、足が震えて立てない。
日本では、こんなことに会うことはまずない。
争いも、けんかでも、怯えるぐらいなのに、ましてや強盗である。
ふと気がつく、ここは馬車の、ぶつかった木から、5メートルほど離れている。
気がつかないのでは?
馬車からも、大人っぽい女の人と、高校生ぐらいの女の子が出てきた。
強盗は声を荒げて更に話す。
「こっちにこい、悪いようにはしない、命は助けてやる」
他の強盗二人は、御者の男性の方をけん制。
御者は男性で、皮よろいに刀を持っていた。
御者の男の人はぶつかった時に、投げ出された様だ。
御者のほうには強盗二人がいた。大きな剣を持った強盗と、刀を持った強盗が。
馬車の近くの女性の方には剣を持った強盗。私は強盗の背後にいる、チャンスだ。
逃げるか悩んでいたが、俺のもっている刀なら、今なら強盗を殴れるかも。
足音に気をつけ、近寄ってみた。
御者の男の人も、私に気がついたようで、強盗のヘイトを集めるため叫んだ。
「おい、彼女達に手をだすな」
いった矢先に御者の人が刀を抜いた、直ぐに二人の強盗と切り結ぶ。
その瞬間、私も、鞘に入った刀で馬車側に居た一人の強盗を、思いっきり殴った。
首にあたり強盗は倒れた、そこに再度腹に鞘入り刀をぶつける。
必死にたたいた、無我夢中だった。
急に目の前が空転した、宙返りのような感覚。空を見上げる形になった。
何が起こったのか、さっぱり分からなかった。
大人っぽい女性の方が、私を覗き込んで話しはじめる。
「はい、そこまで、やりすぎると死んじゃうよ、落ち着きなさい」
投げ飛ばされたようだ。手加減はされたらしい。
起き上がると、御者の人は、強盗二人を倒していた。
御者の人も近寄ってきた、おもむろに大人っぽい女性に話す。
「おつかれさま、やはり狙ってきたな、イレギュラーはあったが」
女性も話す。
「まあ、想定内ね。ところで君はどうしてこんな所で、ココは休憩所には遠いし、人があまり使わない街道よ、最初出てきたときは敵かと思ったわ。
隠蔽するでない、殺気も無いから巻き込まれたかな」
私も落ち着いてきた。
「カミヤといいます。ここがどこかは良く分からないんですが。
なんて話したらいいか、いい言葉が見つかりません」
「これから私達は街に行くけどどうする? この街道は街まで徒歩だと半日以上かかるわよ、馬も見当たらないしね」
大人の女性が話す。
少女もそれに続いて話す。
「そうね、この街道は暗くなると夜行性の動物が出るから、一緒に来た方がいいと思うわ。事情も聞きたいし、盗賊も連れて行くからね」
連れて行くときいて驚いた、激しい切り結びをやっていたのに、賊は生きてるらしい。
「盗賊、殺さずに制圧したんですか、すごいですね、私なんかは必死で叩くのがやっとでした」
大人の女性は、にっこり笑って話し始めた。
「まあ、巻き込んだお詫びは、させてもらうわよ、一緒にきなさい」
にっこり笑顔で話してくれた。
「それではよろしくお願いします。それで質問いいですか。」
私は気になったことを聞く。
「ん? 何かな」大人の女性は返事をする。
「名前を知らないんですが、どう呼べば?」
「あらそうだったわね、私はミズキ、男がシキモリ、で妹みたいなのがユカリよ」
妹にしては、歳が… ミズキさんの後にドラゴンが見えた気がした。
考えないようにしよう、
改めて返事をする「私はカミヤ シノブです、よろしくお願いします」
このときは私は、短い付き合いだと思っていた。
単なるこの出会いが、一会一期だと思っていた。
シキモリさんが盗賊を縛りに行って、連れて帰ってきていた。
馬車を街道に戻し強盗を乗せる。
乗せるといっても、荷物扱い荷台に結わえ付けるが正しいだろう。
準備が出来た所で皆で、馬車に乗り街に向かうことになった。
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