22章…確認


あれから5ヶ月

季節は冬になる

俺と結衣は喧嘩多めだけどまあなんとかやっていけてる

主に小さな喧嘩が多いけど

最初に大きな喧嘩したのは付き合って3ヶ月の時


結衣が寝坊グセが激しくて

さすがに怒った


「お前いつまで寝坊すんだよ!

時間通りにこれねーやつ嫌いなんだけど!」


強く言いすぎた部分もある


「なんでそんな言い方するの

あたしだって寝坊したくてしてるわけじゃないもん」


「何回目だよ!電話しても起きねーじゃん!」


「じゃあもういいよ」


結衣は帰り道の方へ体を向ける


「どこ行くんだよ」


「ん?帰っていっぱい寝る」


「ばかじゃねーの!?

何開き直ってんだよ!」


「空に嫌いって言われたから」


その時俺はやっと感情から怒りがなくなる

多分結衣は俺に嫌いって言われるのが1番ショックなんだろう


「ご、ごめんね

でもさ、やっぱ結衣と一緒にいれる時間が減るのが嫌なんだよ」


「うん、寝坊したあたしが悪いよ、それはごめん

でもあたし空に嫌われたくない」


結衣は体をこちらに向けようとはしない


「嫌いにならないよ

今日も楽しみにしてたんだからさ」


結衣はやっとこちらに体を向けた

よく見ると泣いている


「好きな人に嫌いって言われるの

本当に傷つくぅ〜〜」


泣きながら俺の胸の辺りを2回ほど叩く


「ごめんって、ほら見ろよ俺の変顔

ばぁぁー!」


「ふふっキモい」


結衣が笑ってくれた

その日は結衣も機嫌が治り

カラオケで楽しく歌っていた

なんでも感情的になるのはいけないと

結衣から学んだことだ


そしてしつこいようだけどもうひとつ

結衣にご飯食べに行こうと誘われた

もちろんいいと言ったがそこからが問題だ


「何食べたい?」


結衣が俺に聞くと


「どこにするかー

結衣が決めていいよ」


「いや、たまには空が決めてよ」


「俺はなんでもいいよ」


と言うと結衣はしかめ面になり


「いっつもあたしが選んでんだけど

お前自分で選べねーの??」


と言われ


「別にそういうわけじゃないけど」


「だってどこ行くにも何するにもあたしが決めてるんだよ?

空が行きたいところに行きたいのに

全然誘ってくれないじゃん」


「いやー誘ってくれてるからいいかなって」


「お前冷めてるなー」


そんなことはないと思っていても

結衣が言ってるんだからその通りなんだろうな

俺はそれ以来行きたいところを結衣に言うようにしている

そうすると結衣も喜んでくれるからだ


まあ、そんなこんなでなんとかやってるわけです

今は冬休みに入っている

クリスマスも結衣と夢の国に行ったし

夢の国は喧嘩するとか言ってたけど全然そんなことなかった


あと結衣と付き合った直後に千尋に連絡した

結衣と付き合ったと報告したら


「えーー!やっとかー!

おめでとー!」


と言って千尋は喜んでいた

結衣と付き合うなんて1年前の俺じゃ予想もつかなかったろうな

でも結衣の魅力に惹かれて好きになったのも事実

こんなに素敵な人は他にいないとまで感じていた



そしてある日のこと

今日は久々に朝から結衣の家にお邪魔していた

おじさんたちに挨拶するのも含めて

今日は美菜さんと洋平さんは朝からいるみたいだ

めちゃくちゃ緊張する…

今は結衣の家のちょっと前

歩きながら怖い顔をする俺を見て


「なに緊張してんの!

大丈夫だよ、美菜さんも洋平さんも付き合ってること知ってるし

喜んでたからさー」


「でも緊張するんだ!」


「よしよーーしかわいいなー

よーしよしよしかわいいなー」


「ムツゴロウみたいになるのやめろ!」


そして結衣の家に着き

結衣はドアを開ける


「ただいまーー!」


結衣が元気に挨拶

リビングに行くと


「おぉーー

おおーー空君こんにちは」


美菜さんが1人でリビングに居た


「あれ?洋平さんは?」


「外でタバコ吸ってるよ」


外を見ると

窓越しから笑顔で手を振る洋平さんの姿があった


洋平さんが中に入ってくる


「空君こんにちはー」


明らかにいい人そうな雰囲気の洋平さん


「こんにちは」


俺も挨拶を返す


「久しぶりだね空君

結衣ちゃんから話は聞いてるよ

あ、ほら、座りな?」


洋平さんはテーブルの椅子を指した

その椅子に俺は座ると


美菜さん、洋平さん


俺、結衣で対角に座っている状態だ


なんだこの緊張は


「空君と結衣ちゃんが付き合うとはなー」


洋平さんが明るく俺に言う

結衣に似てやっぱり家族みんな明るい

だから結衣もこんなに明るい人になったんだ


「ただ、空君ね」


洋平さんは真剣な表情に変わる


「は、はい」


俺が返事すると


「結衣ちゃんは俺の娘じゃないかもしれない

けど、本当の娘だと思って育ててきた

小さい頃から結衣ちゃんは辛い思いをしてきたよ?

だから、結衣ちゃんを悲しませるような事をしたら

俺は君を許さないからね」


そう言われた

でも俺は曲げない


「もしかしたら俺は今まで結衣を傷つけてきたかもしれないです

……ただ、これからはそうならないように絶対に結衣を幸せにします!」


俺は洋平さんの目を真っ直ぐ見て言う


「……頼もしいね」


洋平さんは俺の隣まで来て


「君なら結衣ちゃんを任せられそうだ」


俺の肩に手を置いて言う


「ありがとうございます」


と言って俺は洋平さんの笑顔を見た

いつも結衣が力強く何かを伝えてくれているから

自然と出た言葉だった

それが洋平さんにも伝わってくれた



「うん、じゃあ後は好きにして」


洋平さんがそう言うと

結衣は無言で俺の手を引いて俺を部屋に連れてく


「どした?」


ずっと無言だった結衣だったから少し気になる

すると結衣は俺に抱きつき


「空ってほんっとさいこー!大好き!」


結衣はそのまま俺を押し出す


「お、押すなよ」


俺はベットに座る

それでも結衣は俺に抱きついて離さない


「あんなこと言われて嬉しくない彼女なんていないよ

あたしも空とずっと一緒にいるからね!

めっちゃ迷惑かけるけどずっと好きだからね!」


結衣は俺の胸あたりにおでこをつけてスリスリする

まるで犬みたいだ


俺も嬉しかった

結衣が俺の胸に顔を埋めているので

その顔を上げる

俺は結衣に顔を近づける

結衣も目を閉じて待っていたが


ブーー!!ブーー!!ブーー!!


結衣のケータイが鳴った

その瞬間俺らは止まる

なんだよこの漫画みたいな展開!


「電話?」


「うん、ごめん」


結衣も慌ててケータイを取り出す


「あ、千尋からだ」


千尋かーーい!!

あいつ空気読めやー!!


結衣が電話に出る


「もしもーし」


俺にしがみつきながらも結衣がしばらく千尋と話す


「ん?今空と居るよ

ビデオ通話にする?」


結衣がケータイをインカメにして画面に俺だけを映す


『ちょっとー!空だけはやだよー』


「ははっ僕、空だよ、ハピネス!」


結衣が夢の国のネズミの真似をする

またふざけた事しやがって


『あのさーもうすぐで生まれそうなんだよね』


千尋もインカメで自分の姿を映す


「どれ?見してー」


結衣が言うと千尋はお腹を見せてくる


「うわー!めっちゃでかいな!」


ぽっこりと膨らんだ千尋のお腹を見て俺も驚く


「ええー!生まれたら絶対会いに行くわ!」


結衣も興奮しているようだ


『ありがとー!』


いつもの笑顔で手を振る千尋は元気そうだ


しかし


千尋の言った一言で俺らも

一つ欠けていることに改めて気づく


『本当はそこに翔がいてくれればいいんだけどなー』


俺らは沈黙になる


『え、そんな反応しないでよ笑

全然いいんだよ?』


あれからやはり翔から連絡は一切こない

むしろ俺らから連絡しても繋がらないってのが現状だった


『まあでもお腹大きくなったよって報告ともう生まれるって報告だけだからさ』


と言って千尋は『じゃあね』と言って電話を切る


結衣も少し何かを考えてる様子


「翔がいればきっともっと千尋は幸せだったのにね」


結衣が言った事に俺は深く頷く

確かに、翔が大事って言った千尋が報われないしな


「空には言ってなかったけどさ

あたし初めて千尋に空のこと好きって言った時に千尋はそれを受け入れてくれて

そのおかげであたしが空と一緒にいれるようになったんだよね」


「……そんなことあったの?」


そういや前に結衣の家に泊まった時に千尋も結衣が俺のこと好きって知ってたな


「そう、だから今度はさ、あたしたちが千尋と翔をもう一回くっつけようよ!」


と健気な笑顔で言う結衣

そうは言ってもなー


「翔のやつ今何してんだろうな?」


「絶対に居場所突き止めてやろうぜ」


結衣が親指を立ててドヤ顔してくる


「でもどうやって?」


「翔のお母さんのところに行く

そうすれば居場所はわかるでしょ?」


行動力に定評のある結衣はスッと立ち上がり


「ほら、行くよ」


「今行くの!?」


「早い方がいいの!

思い立ったら即行動!」


そう言って結衣は俺の腕を引っ張る


向かった先は翔の家

すごくボロボロのアパート

やっぱ見るたびに何でこうなったかと事情を知りたくなる


「よし、行こう」


翔の家の部屋まで行く

インターホンを押すと

ガチャっとドアが開く


「あら…」


翔のお母さんが居た

よかった、仕事とかじゃなくて


「こんにちは」


俺も結衣も挨拶をする


「どうしたの?」


申し訳なさそうな顔の翔のお母さん


「あの、今更で悪いんですけど

翔の居場所ってわかります?」


結衣が単刀直入に言うと


「……知ってどうするの?」


本当に嫌そうな顔をして言う翔のお母さん

俺も話を聞いて欲しいから言う


「千尋が、もうすぐで赤ちゃん生まれそうなんですよ」


そう言うと驚いた顔をして下を向く翔のお母さん


「色んな事情があったのかも知れない

でも、一度だけでいいから千尋に会って欲しいんです」


俺が言うと黙ってしまうお母さん

しかしその重い口を開いてくれた


「ついこの間、翔から連絡来て

大阪にある工場で働いてるらしいの」


工場……


「住所とかはわかります?」


「うん」


翔のお母さんは住所を教えてくれる

大阪って遠すぎじゃねーか!?


「空、お金ある?」


「まあ、バイト代貯めてたし」


「うん、じゃあ行こう」


「は!?今!?」


「今やらないでいつやるの!!

ほら行くよ!」


行動力えげつねー!!

でもそれが1番いいだろう

千尋のお腹も大きいし今翔に会えるのは俺らくらいしかいない


「ありがとうございます!」


俺は翔のお母さんにお礼を言う

すると


「千尋ちゃんには本当に申し訳ないってこと伝えといて」


「わかりました」


俺と結衣は駅へと急ぐ


「新幹線乗ればいいんだよね!?」


「大阪までだな」


駅に着いて電車に乗り

東京駅に着いて新幹線のチケットを買う


「自由席だけどいいよね!」


「この際なんでもいい」


自由席を選んだけど

たまたま席は隣に座れた


「年末なのに珍しいな」


「ラッキーだね、よしいこー!」


新幹線に乗る

こっから3時間くらいかな?

翔が居る大阪まで本当に向かっている

翔の本当の気持ちを知るために

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