第21章…幸せ


◎結衣side◎


「結衣が好きだから付き合いたい」


そう言われた瞬間

あたしは自分の体の重荷が全部降りたかのように軽くなり

あたしは空を抱きしめた


「あたしも大好き」


中1の頃に空の一生懸命な姿を見て

あーこういう人っていいなーって思った

気づいたら視界に入って

ずっと見ていた

でも空は千尋が好きで

毎朝学校に行くと空はいつも千尋を見ている

空の隣の席にいるのはあたしなのに

空はあたしを見てくれなかった


“自分は空とは合わない”


なんて思ったりもした

何回も諦めようと思った

そう思う度に泣いていた

それでも諦めきれない自分が居る


自分の気持ちを隠すのが辛くて

空が遠くに行っちゃうのかと思うと怖かった


でも今は


ほんのり柔軟剤の匂いがするシャツと空の温もりに包まれている

空はちゃんとあたしを見てくれている

こんな幸せなの初めて


本当に…本当に嬉しかった

空に好きって言ってくれて嬉しい…

あたしが生きてきた中で1番幸せな時間が流れる

いつの間にか涙がたまってくる


好きって言われて泣くなんて

なんかちょっと恥ずかしいかも

でも本当に嬉しかったから

あたしは空の見えないところで泣いていたけど

“グスン”と鼻をすすってしまう


「結衣?」


名前を呼ばれるとまた鼻をすすってしまう


「……なんで泣いてんの?」


優しく空が言うとあたしはもっと涙が溢れる


「だって……やっと好きって言ってくれたんだもん…」


涙が本当に止まらなくなる

なんでこんなに泣くんだろ

自分は空とは合わないって思って泣いていた時よりも

空があたしを見てくれている時の方が涙が出る


そんなあたしを見て空はあたしの頭を撫でる


「色々迷惑かけてごめんね?」


何が迷惑なのかわかんなかったけど

あたしは少し体を離して空の方に顔を向ける


「……ずっと好きでいてくれるの?」


あたしがそう言うと


「うん、俺も結衣みたいに誰かを守って支えて一緒に笑っていきたいって思えたんだ

結衣と一緒に居て俺も幸せになりたい

結衣のおかげで変われたんだよ」


空の一言があたしをまた幸せにさせる

やっと繋がった、やっと生まれた

空とあたしとで出来た本当の


“生まれた愛”


空はあたしの頬を軽くさすり

そのまま顔を近づけ

口と口を重ねた


まだ涙が止まらなかった

ずっと思っていた気持ちが溢れ出す

昔からずっと好きでいたのに今この瞬間が最高に好きで溢れてる

こんなに愛おしくなるなんて思わなかった

こんなに離したくないなんて思わなかった

空の腕の中で過ごす時間がずっと続けばいいと思っていた


ありがとー…

こんなあたしを好きになってくれて本当にありがとー!







◎空side◎


すごく恥ずかしい

だから電車に乗るまであまり結衣の顔を見れず話も出来なかった


あーどうしよ

とりあえずなんでもいいから話そう


「今日、楽しかったね」


俺が一言言うと

結衣はパーっと顔が明るくなり


「本当楽しかったー!サイッコー!!」


「あーうるせーうるせー!

電車ん中なんだから静かにしろ!」


いつもの結衣に戻った

やっぱこういうテンションの結衣が好きだな

最寄りまで着くと

手は繋がず普通に帰った


「そらぁー歩くの速いー

あたし疲れてそんな速く歩けないよ」


「なんで逆にそんなおじいちゃんみたいなスピードで歩いてんだ?」


「疲れたから、てか彼氏は彼女と歩くスピード合わせろよ!それでも男か!」


「うるせーな!」


「おんぶしろっつってんだよ!

察しろ鈍感男!」


「いちいちムカつく言い方するな!」


結局おんぶをしてやった


こんな感じに何でもズバッと言う結衣は不満とか何も抱えなそうで

でもある程度のことは俺も察せるようにはなりたかった

まだまだ俺も結衣を完全に理解出来てはいないけど

でも結衣となら大丈夫

この先もずっと結衣と一緒に居れば必ず幸せになれる

こんなにも俺を想ってくれた結衣とそんな結衣を支えたいと思える俺との


"生まれた愛"だから

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る