第19章…決心


◎空side◎


千尋が引っ越してから1ヶ月

俺と結衣は夏休みに入っていた

最近の俺らというと

学校では毎日下校していた

それ以外では他の友達と一緒にいたりしてたけど昼になったら結衣と食っていた

もっと広く人と絡んでればよかったと後悔している

逆に結衣は誰とでも仲良く絡めるので

そんなに苦労はしてないのかと思いきや本人は変に気使うから疲れるらしい

でもうまくやっていけてるんだからいい方だと思う


千尋とはちょくちょく電話とかラインはしている

この1ヶ月でお腹も少し大きくなっていっててびっくりしていた

相変わらず元気そうだし俺らも安心している


そして

夏休みに入ったということはやはり

あのお祭り騒ぎ大好きな結衣がイベントに誘わないわけがない

やつから電話がかかって来る


「はい?」


『くぅぅーー!!ぜん!!ぜつごのぉぉぉー!!』


ブチッ


俺は結衣の電話を切った

うるさすぎて不愉快だったから

家に居てあんなテンションになれるのもおかしなはなしだ

そしてまた電話がかかって来る


「はい?」


『35億』


ブチッ


俺は結衣の電話をまた切る

そしてまた電話がかかって来る


「はい?」


『あのね!大喜利やってんじゃないんだからちょっとは待ってよ!』


今度はちゃんと喋った

なんだよちゃんと喋れんじゃん


「うん、でも面白かった

いい暇つぶしになったよ」


『そう、よかった』


「おう、じゃあな」


『うん、またねってこらーー!!!

一発ギャグだけやりに電話しに来る奴がどこにおんねーーん!』


相変わらずテンションたっけー

でも面白い、見事だ


「要件は?」


『はい、問題、あたしが空と行きたいところはどこでしょ?

1お祭り

2プール

3花火大会』


めんどくさいなと思いながらも俺は答える


「3の花火大会?」


『ブッブーー!正解は全部でしたー』


「なんだそれ!」


わけわからなすぎる!

祭りもプールも花火大会も行くってことか??


「夏の定番攻めまくるね!」


俺も嫌な気はしなかった


『でっしょー!』


電話越しでもドヤ顔してるのがわかる


プールか…


海かプールは行くと思っていた

だからその前から少しずつ鍛えてはいたけど

結衣の水着姿

んーーーー

背は高くないけどスタイルはそんなに悪くはないと思う

結衣とか千尋のスクール水着は見たことあるけど

ビキニで来るのかな?

何色だ?ちゃんと露出してんのか?

いかんいかん!妄想が止まらない

結衣の胸の大きさとかに興味があるわけではないが

高校1年生で女子とプールに行くというのはそれなりに考えてしまう

うん、悪くない


「よし、プールに行こう」


『いや?お祭りとプールと花火大会

全部やってるとこあるからそこ行こ』


「え!?」


そんな大イベントあんのかよ!!


そして結衣と夏の定番を攻める当日


……くそ

結衣のやつまた寝坊だろ!

千尋の時は朝早かったから仕方ないとして

今日は9時集合だぞ!?

学校の時間よりおせーのに何してんだよ!

もう集合時間から10分経ってる

本当に時間きっちりしないやつは嫌いだ

とりあえずまた電話する

ワンコールで出た


「もしもし??」


『ごめんーー!!ダッシュする!』


この間俺が謝るのがおせーって言ったからすぐに謝ってた

まあ許してやろう

その5分後に結衣が来た


「あああーー!!ごめんねー!!

お許しをー!」


本当に申し訳なさそうに言っているので


「おう、早く行こうぜ」


「うん」


すぐ許した

俺が機嫌悪くなるのわかっててすぐ謝ってくれてたならそれでいいんだ

結衣は結構素直でいいやつだからな


「何をそんなに時間かけてるんだ?」


「んーー前の日に服何にしようとかめっちゃ迷ってたらいつの間にかアラームつけないで寝落ちしてた」


「へぇーーそんな気使わなくてもいいのに」


「ダメだよ、だって大事なデートだもん」


そんなこと言われるとドキッとしてしまう

俺なんてその時目に入った服を着る感じなのにな

結衣は毎回おしゃれをしてくる

今日はプールと祭りと花火大会だからわりと、ラフな感じ

そうか、結衣のやつ俺のこと好きって言った以来あんまり2人で出掛けてなかったもんな


そして


バスも乗り、目的地に着く


「うーーわ、でか!!」


見えたのがかなり長いウォータースライダー

下手すれば100メートルくらいあるんじゃないか!?

ぐるぐると回るようなタイプのウォータースライダーだから

もしかしたらもっとあるかもしれない

早速プールの中に入ってみる

めっちゃ広いプールだ

流れるプール、波のプール、ウォータースライダー、アスレチック

色んな遊び場がある


「おぉーー!そらー!あそぼー!」


「待て待て、まずはレジャーシートから敷かないと」


こういう時だけ子供と親みたいな感じだな


結衣も手伝ってレジャーシートを敷く

飛ばないように荷物を置く

これでよし


「じゃあおよごー!」


そう言って結衣はTシャツとスカートを脱ぎ出す

水着姿の結衣だ

白の水着が結衣らしくて似合う

肌が白くウエストも細く、でもキュッとしまったお尻

そしてほどよい胸、谷間

やはり結衣はスタイルがよかった

俺はついつい見入ってしまった


「早くー!!」


結衣が俺の腕を引っ張る


「待て待て、まだ俺Tシャツ脱いでねーから!」


「早く脱げばかもの!」


結衣は無理矢理俺のTシャツを脱がすと

あまり自信のない俺のわがままボディがあらわになる

いや、太ってはないけど筋肉もないかな

鍛えてたけど間に合わなかった感がある


「そらー!流れるプールいこー!」


結衣はいつものように俺の腕を抱くように歩くが

ちょっとその格好でやられると刺激が強いっす!

男の理性崩壊率30パーセント


流れるプールに入ると


「わわわわー!冷たい!気持ちいー!」


ひたすらはしゃいでる結衣

女の子らしい反応に俺もついつい見てしまう

にしても日焼け止めも塗らずに入って大丈夫なのか?

結衣は浮き輪の上を乗って流れる


「きゃーーーたすけてぇぇー!

流されるーーー」


結衣は流される人を演じてるみたいだ


「待ってろ!」


俺は結衣の浮き輪の下を持ちちゃぶ台返しをした

バシャーーン!と浮き輪と結衣がひっくり返る


「貴様なんでことすんだよー!!」


「はっはっはっは!」


心の底から笑ってしまう


「今度は空が上乗って!」


俺は言われた通り上に乗る

そして結衣も浮き輪を持ち上げようとするが

俺の重さは持ち上がらなかった


「はっはっは!無理は禁物だぞ小娘」


「んーー!!持ち上げるの!」


俺はそんな結衣の頭を掴み

水に顔を押し付けた


「あーー!!もー!むかつくー!

お前降りろ!」


からかいがいのある奴だなほんとに


とりあえず浮き輪を返し

結衣が使ってる浮き輪に俺も捕まり俺も流されるがままになる


「おい豆、お前あたしをいじめたから捕まんなよ」


「じゃあ1人で流されるのか?」


「前に行けっての!

後ろに立たないで!」


なんでだよめんどくせーな

俺は言われた通り結衣の正面を向けるように前に立つ


すると


結衣は俺の背中に腕を回し

首の周りも腕で包む


「お、おい抱きつくなよ」


「ふふ、捕まえた」


ドキッとしたその瞬間

不意打ちだった

結衣は体重を後ろに持っていき

俺はそのまま体を結衣の方へ倒れる

足のバランスを崩し


バシャーーン!!


倒された


「だーっはっはっはっは!!

ざまーみやがれぽんこつ!」


こ、殺す!

気色悪りぃ笑い方しやがって!

俺は結衣が持ってる浮き輪を取って

ビート板のように手を伸ばしてバタ足をした


「ねえー返してそれあたしの浮き輪!」


「俺のバタ足について来れるかの試練だよ」


「そんな試練いらないっての!」


結衣は俺に飛びつくように後ろから抱きついてくる

今度はさっきみたいに沈ませるわけではない

そのままおんぶするように流れるだけだ

さっきも言ったけどその格好で抱きつかれると色々とまずい

ドキドキが止まらないのと胸が当たるのと


あと

男の理性崩壊率50パーセント

なんとか理性を保たなければならない

結衣の濡れた髪が俺の顔にかかると

こんなにも近い距離でいることを改めて思い知る


でも俺はふと思った

こんな風に抱きついたり密着させてるのって結衣だけだった

俺は結衣からされるのを待っていただけかもしれない

それじゃあ男としてダメな気がする

こんなにも俺はドキドキしてるんだ


「ほら、結衣、こっちおいで」


結衣みたいにバカ正直に

素直になってみたかった


「ん?」


結衣は俺の前に立つ


「よっ!」


「おぉー!」


俺はお姫様抱っこした


「わーーいお姫様抱っこー!」


「そんなに喜ぶのかー?」


結衣はいつも以上に笑顔だった


「うん!幸せ〜〜」


そう言うと俺の首を抱いてた腕の力がギュッと強くなる

あー可愛いなー

なんて思ったりした


お姫様抱っこをした状態で30分は回っていた

特に何かを話すわけでもなく

ただただ流れていた


「そろそろ上がるか?」


俺は結衣に聞く

返事はない


「結衣?」


結衣の方を見てみる

……寝てるじゃん…

通りで大人しいと思ったけど

この状況でドキドキしてんの俺だけなのかな?と不安になる

とりあえず起こすかー

俺は手のひらで水を集めて

結衣の顔面にかけた


「ぶわっ!」


「おはよー」


「あ、おはよーございまーす」


結衣が起きると


「出ようか」


「うん」


流れるプールを出た

レジャーシートのところまで戻る

結衣はタオルを肩にかけて飲み物を飲む


「プールめーーっちゃ楽しいいいいー!」


「よかったわ」


座りながら色んな話をした


「そういえばさ

なんで結衣の家って親いないの?」


聞いちゃまずいかと思ったが

結衣の性格上何も隠さないだろうと思い聞いてみた


「あたしも物心つく前にはもういなかったから何とも言えないけど

何か最初からいなかったしもうどうでもいいかなって」


「あぁそうなんだ」


「うん、まあおじさん達が今は良くしてくれてるし

全然苦はないから大丈夫だよ」


「ふーーんそっかー」


「波のプールってやっぱすごいのかな?」


「そりゃまあ巨大だろ」


「いいねぇーー!いこー!」


波のプールにも行った


ウォータースライダーもかなり並んだけど待つ時間も全然暇じゃなかった


いっぱい話したしじゃれ合ったり

本当に楽しかった

こんなにも心を許せる人は居ないと思う


今なら

今素直になれたら

このまま結衣とずっと一緒にいたい

なんて思ったりした


「結衣」


「ん?」


「手繋いで歩くか?」


「なぁにぃーー!!いつになく素直じゃーん!

かわいいいいーー!」


「うん、たまにはね」


「あたしね、手繋ぐより腕組んで歩く方が好きなの

さみしがり屋だから離したくないって意味でね?」


結衣は俺の腕を組む


「かまってちゃんのめんどくさい女の子だよあたし」


「いいんじゃん?結衣はそうしてた方が可愛いよ」


「もおーー!!ばかー!

キュンキュンするじゃーん!

惚れてまうやろーー!!」


「うん、声のボリューム抑えようか」


こんなに心が弾むのは初めてだ

嬉しい、楽しい、面白い、幸せ

人を大切にしたいって思える

幸せにしたいって思える

そんな俺の気持ちがどんどん大きくなる

やっと自分の答えを見つけた

あぁもう俺も認めよう

素直な自分の気持ちを


結衣と一緒に居たい

結衣が好きだ

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