第13章…結衣



◎空side◎


結衣がトイレから戻って来た


「おまたせーー」


「おう」


まだ気持ち的にブルーになってる俺はテンション低め


「あーーまーだ落ち込んでるの?

シャキッとしろー!君は男だろー!」


「お前は立ち直り早すぎだ」


結衣を知れば知るほど感心してしまう

いつもこんなに元気なのは並大抵の人じゃ出来ない

もちろん落ち込んだ直後にこんなに切り替え出来るかと言われればもっと出来ない


「ふっふっふー

空豆、あたしの格言を聞くかね?」


「……なんだ?」


「ゴホン!」


わざとらしい咳払いをする結衣


「吾輩はだるまさんである!」


……なんだそれ?

ポカンとする俺を見て結衣は答える


「だるまさんって転んでも立ち直るでしょ?

落ち込んでる暇なんてないってことだよ

ネガティヴな時間ほど人生に勿体無い事はないからね

そういう時もある!七転び八起きだよー

落ち込み3秒立ち直り1秒!

そうやって気持ち切り替えてこ?」


悪い事したのは俺の方なのに

また結衣は励ましてくれている

やっぱりすげーなーと思った

結衣ってやつは一体どんな風に育ったのか

知らないことを知りたくなる

結衣に興味が湧いてくるのは長年一緒に居て初めてのことだった


結衣の言う通り

落ち込んでる暇なんてなかった

今日の俺はただ千尋に言われた事に落ち込んで

結衣に悪い事をしたことに落ち込んでいた

今日だけで何回落ち込むんだよ

それでも今日だけで結衣は何回も起こしてくれていた

助けてくれていた


「結衣、ありがとな」


「元気になった?」


「おう」


「うんうん、おっけー

あたしは空のその顔が見たかったの」


「なんだそれ笑」


気持ちも軽くなったところで

カラオケが再開された

やっぱり結衣と一緒だと楽しくて落ち着く


カラオケが終わって


「さて、そろそろ帰るかー

もう夕方だしね」


「そうだな」


俺らは家の最寄り駅に着くと


「そーらー疲れた!

早くおんぶして」


「なんでだよ」


「なんで嫌な顔すんだよケチ

あたしを襲おうとしたくせに」


「あーもー!それ禁句!」


「じゃあおんぶして」


「わかったよ」


それ脅しだからな!?

結衣が俺の背中に乗る


「んふふっ

やったー」


「満足か?」


「うん、嬉しい」


今日だけで結衣の温もりに包まれるのは何回目だ?

でも嫌な気持ちはしなかった


「はーーい今日は空君を独り占めでーす」


カシャっとインカメで俺との写真を撮る結衣


「もうなんでもいいから大人しくしてくれ」


こんな場面でも

すごくドキドキしてしまう俺がいる

結衣が俺のことを好きだなんて信じられないけど

思い返してみると結衣はどんな時でも俺を元気付けようとしてくれてた

今まではキャンキャン吠えるだけのチワワみたいなもんだと思って鬱陶しかったけど

結衣の存在がどんどん大きくなっていってる気がする

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