第6章…変化


次の日


俺は学校に向かっていた

千尋は来てるかな……?

何より…翔は来てるのか…


「そぉぉらぁぁ……」


背中の方で声が聞こえる


「ん?」


振り返ってみると


「……ぎゃあああああ!!!!!!!!!!!!」


「うるさーーい!」


酷く目が腫れて

目の下に隈が出来てて

全体的にホラー系の顔になっている千尋が居た


「頭痛いからおっきな声出さないでよ」


「どうしたんだ?その顔」


千尋の美顔が相当酷いことになってる

何て言うか例えると小麦粉を固めたやつで作った顔みたい←例え下手


「泣いたから腫れたの…

朝、寝坊したしメイクする時間がなかったんだよー」


よかった、いつもの千尋だ

泣いて腫れるとこんなに変わっちゃうもんなのか?


「ひっでー顔だなー(笑)」


「やめてよ…言葉に出来なくなる」


そんな千尋はこの後

コンビニでマスクを買ってメガネを装着した

完全に隠してるな

学校に着き、教室に入る


「うおー!!ちひろぉぉ!」


ものすごい勢いで走ってくる結衣が千尋に抱きつく


「大丈夫なの…?心配だよー!

体調崩したらあたしにいつでも言いなよ?」


「あはは、大丈夫だよ」


そう言って千尋は結衣の頭を撫でてあげる

時々結衣がこんな感じだと可愛く見えたりするな


「そんでこの装備なんだ?

外しなさい美形を晒せ」


「あ、ちょっ!ダメ!」


千尋の醜い顔が結衣によって晒された


千尋は授業が始まるまでうずくまった


「結衣のバカ結衣のバカ結衣のバカ結衣のバカ結衣のバカ結衣のバカ………」


クラスのみんなに見られたことに顔を赤くさせて居るようだ


「ドンマイ、そんな時もあるさ」


「他人事だと思って!」


別にそこまで酷いわけじゃないんだけどね

結衣はジャンピング土下座で謝ってたけど

立ち直れてない千尋(笑)


「まあまあ、落ち込んでても顔はすぐには戻らないんだ

おとなしくその装備で頑張ろうぜ」


「はぁー」


ため息を吐いて席に座る千尋


これはしょうがないんじゃないかなー


昼休み


「空、ちょっと来て」


俺は千尋に呼び出される

何言われるかは大体わかるけどな

言われるがまま千尋についていくと

人気の少ない屋上まで足を運ぶ

フェンスにもたれて俯く千尋

その表情と一緒でやはり呼び出しの内容は暗いものだった


「今日、一日さ翔のこと探したんだけど

居なかった…」


そう、呼び出された理由は翔のこと

俺も探してたけどどこにも居ないんだ


「俺はお前らの前には二度と顔を出さない

それって学校にも来ないってことなのかな?」


千尋が不安そうに俺を見る


「…まだちょっと翔を頼ってる?」


俺は千尋の本心を聞き出すかのように言う


しかし千尋はその言葉に首を横に振る


「ううん、もう翔は支えてくれないことはわかったからさ

ただちょっと心配なだけ」


「……そっかー」


千尋も心配してんのか

確かに暗い顔を浮かべてるし

ちょっと翔の事を聞いてしまったのはまずかったかな?


「よし!今日翔の家行こう!」


全然まずくなかったー!

決心を力強く言った千尋


「結衣にも伝えといて、」


「わかった、」


そういえば千尋に聞きたいことがあったんだ


「そういえば、千尋って今妊娠何ヵ月なの?」


妊娠してる人には必ず聞くことだと思うよ


「今、3ヶ月くらい」


「そんなもんなのかー」


これから千尋も無理のない生活をしなきゃいけないのか

すっごい大変だろうけど

俺も力になるぞ!


放課後


俺と千尋と結衣は翔の家に向かっている


「翔に何があったかわかんないけど

これは最低だよなー!死ねばいい!」


結衣は翔にこれ以上ないほどの怒りを見せている


「千尋、また何か言われたら殴っていいからね!

あたしが許可する」


「もうそんなことしないって」


結衣の気持ちもわかるけど

千尋はただ翔が心配なだけだ

説得させようとかじゃないはず

そしてもう一つ…

翔は千尋を見捨ててどこかに行かないはず

例え子供が出来ても

今まで通り、千尋を守ってあげてるはずだ

それが出来ないなら何か理由がある


「翔の家だよ」


俺は千尋に翔の家を紹介されたとき

びっくりした

なぜなら、目の前にあるのはボロボロのアパート

ここが翔の家だと言うのだから…

それは結衣も思ったことだろう

目を大きくさせていた俺と結衣を見て

千尋が説明しだす


「翔の家ね…もともと一軒家だったじゃん?

でも高校に入ってから家の事情で一軒家を売って

今の家になったんだって」


そうだったのか……

やっぱ何かあるんだろうな


「とりあえずインターホン押すぞ」


俺は代表してインターホンを押す


ガチャ…


「はいはー……あら…翔なら居ないよ」


出たのは翔のお母さんだった

前に会った時と随分様子が違う気がする


「あの!翔、どこに居ます!?

探してるんです!」


俺は必死な顔をして翔のお母さんに訪ねる


「………………」


お母さんは黙ってしまった


「あの、翔のお母さん、」


千尋が喋りだすと

翔のお母さんは申し訳なさそうに千尋を見た


「私、気にしてないから

また仲良くやろうって翔に伝えといてくれませんか?」


千尋が言った言葉に俺と結衣は目を合わせる

それでも千尋は翔を許そうとしていることに俺はびっくりした


千尋に対する罪悪感があってこそなのか


翔のお母さんは何も答えず下を向いている


「また帰ってきますよね?

帰ってきたらでいいので伝えといてください」


俺らはお辞儀をして去ろうとする

その時


「待って千尋ちゃん!」


翔のお母さんは千尋を呼び止めた


「はい………?」


「ちょっと話があるから

ごめんなさい。他の人は外で待っててくれる?」


千尋は家の中に入る

千尋にしか言えない事情がやっぱりあるのか

とりあえず俺と結衣はアパートの外で待つことにした

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る