第3章…告白


あれから数ヶ月が経つ

俺ら四人は無事受験を終えて

新たな一歩を踏み出した

もちろん四人共同じ高校

仲良しとかではなくてガチで4人とも同じくらいの偏差値だからだ

しかしクラスは運悪くバラバラになってしまった

翔と結衣はそれぞれ違うクラス

俺と千尋は同じクラス…

翔と千尋はまだ続いている

千尋とはあれ以来少し壁が空いてしまったような気がする


そりゃ男に生まれてきた以上

彼氏持ちの女が男友達と仲良くし過ぎるのはよくないと思うからでありまして

なんて思うけど、結局は俺が千尋に振り向いて貰えない事が確定してるからなんだよな


ただ完全に喋らなくなったわけではないので

そこら辺救われたと思ってます


高校生活の初め

大体の人は気を使ってる時期だけど


「相変わらず静かだな」


「仕方ないんじゃない?」


俺と千尋は普通に喋ってる

しかも席は中学の時と同じ斜め後ろに千尋が居る状態

だから喋りやすいのなんのってね

だから毎回言われる


「古瀬さんと真崎くんって付き合ってるの?」って


その度に胸が締め付けられる思い

当たり前だけど否定しなきゃ千尋に悪い

だからかな?

入学して2週間

千尋と全く話してないのは……


これも千尋に迷惑だと思ってのことだけど

何かすごい悲しい……

悲しいのもあるけどやっぱり1番は


悔しいんだ


俺と千尋はもう結ばれる事は無い

それが分かりきってるから付き合ってるなんて周りに言われると

虚しいし、悔しい

俺は哀れな人間なんだなとつくづく思うよ


学校が終わると…


「おーい!空坊、千尋、一緒に帰ろうぜー!」


翔が手を振る

その後ろには結衣が居る

いつも放課後は四人で帰るのがやはり日課になってる


「うん、ちょっと待ってて!

ほら、空も急いでよ」


千尋も俺の違和感に気付いてる気がするけど

いつもの口調で言う


「おう、」


ロッカーに教科書を入れて

二人のもとへ駆けつける


「数Aとかマジ意味不なんだけど!

空死ね」


「はあ!?そっちの方が意味不だわ!」


結衣にいきなり暴言を吐かれる

なんだこいつ!むかつくな!


「ホント高校になってから勉強がルービックキューブくらい難しくなってきたよな」


翔の斬新な例え

ただルービックキューブよりはムズくないと思うが…


「ルービックキューブって4×4の方が難しいみたいだよ」


結衣がボケにボケを重ねた


「知るか!帰れ!」


結衣が話題を広げたのに翔が辛口に言う


「今帰ってますがなにか?」


「うるせー!去れ!」


やはり辛口な翔

いいぞ、結衣にはもっと言ってやれ

と思ったところに


「結衣がかわいそー」


千尋が翔に言うと


「ごむぇん!許してぇ!」


ラブラブしやがる二人


「あたしに謝れよ!」


「黙れ!埋もれろ!」


「だから、かわいそーだって」


「ごむぇん!」


三人の会話に入れない俺……

千尋に対してならまだしもなんで三人の間で喋れねーんだ俺は


「空?」


そんな俺の顔を覗き混むように呼ぶ千尋


「最近元気ないね」


3/4はあなたのせいだ!

なんて言えるはずもない


「そんなことないはずだ」


なんとも普通な誤魔化し方


「なんかあるなら私に言ってね」


そんな親切、逆効果だよ…


「大丈夫だから、心配すんな」


また普通な誤魔化し方をする


「心配するよ、

……最近私のこと避けてない?」


ギクッ!


バレてる!?

翔や結衣には聞こえない声で言われる


俺からしてみると避けてるわけでないけどね

今はこんなこと言っちゃダメだと思うけど

千尋が好きだから…

避けてないと思ってるけど何もかもが言い訳か?

でもしょうがないだろ


「だぁー!もう!めんどくせー!」


突然俺の心に何かが芽生え始めた


「おぉ!雄叫びモードか?」


「うるせ!飛び蹴りするぞ?」


俺は結衣にいつか心の中でつぶやいたことを言う


「翔、悪いけど千尋借りてく!」


「え、ちょっ、引っ張んないでよ!」


俺は強引に千尋の手を引っ張る


「え?なんでなんで?なんで借りてくの?」


翔も混乱してる様子


「いずれ話す、とにかく今だけ貸してくれ」


「………わかった」


これも強引に説得させて

千尋を人気の少ないところに連れていく

一瞬結衣の方を見たけど腑に落ちない表情をしていた

そんなことはどうでもいい


「なに!?なんなの!? もう!」


「話を聞け」


そう言うと千尋は黙り混む


「俺が千尋を避けてるらしいな」


「なんであんたが私に聞くのさ」


相変わらずキレのいいツッコミだが

ボケじゃないんだな


「よく聞けよ?」


「………うん」


「俺は千尋が好きだから、傍に居づらいんだ」


「……………」


千尋黙ったまま立っている

今更だけど

どうせ手遅れなんだ……

今言った方が楽になる


「わかってくれるか?」


千尋はまっすぐ俺を見る

そんな千尋の目から涙が浮かんでるのが見える


「じゃあ先に帰るぞ、時間とって悪かったな」


俺はこの場を立ち去ろうとする


「待って!」


千尋が俺を呼び止める


「じゃあ私にも言わせて」


何を言うのかわからないが

少し怖かった

でも今さら逃げたくはない

そんなことを思いながらも千尋の次の言葉を聞く…

信じられない言葉を……


「私も空のこと好きだったよ……」


「…………………」


何言ってんだよ…

今更そんなこと言ってどうすんだよ

俺が千尋に対してどんだけ考えたと思ってんだよ


「空は私の初恋の人だから―――」


そんなこと言われると言葉につまる

俺は千尋の言葉を黙って聞くだけだった


「私ね…決めてたの

初デートもファーストキスも初恋の人とって」


なるほど…

あの時ゲーセンに誘われたのはそのためか

ん?待てよ!?


「お前まだ翔とキスしてないの?」


聞いていいか際どいが


「違う……」


どういう意味かさっぱりわからん


「引かないでね?」


「……おう」


少しためらいを持っているのか

一旦深呼吸をする千尋


そして


「中二の頃にね

具合悪くて寝てる空に……チューした」


「………えぇ!?」


なんだこのカミングアウト!

顔を真っ赤に染めて俯く千尋


「だけどね!」


そして話を変えるように大きな声で言う


「空は私の初恋だし、好きだったよ

両思いだったんだって考えると悲しいような嬉しいような感じする

けどね、私は今が幸せに思えるの

翔がそう思わせてくれたの

私は変わっちゃったけど、空は空のままで私を見てほしい」


「……………わかった」


そう返事をしたけどわからなかった

千尋の初恋は俺かもしれないけど

俺の初恋だって千尋だぞ

俺だって両思いだったことを嬉しく思うのに

悲しい、俺には何も残ってないんだから…


俺の心の中で何かが変わったような気がした

千尋に対する思い…

千尋の思い…

じゃあ…これからも仲の良い友達なのか……

なんとかなんねぇかな

なったら苦労はしないんだ



「じゃあ皆のところに戻ろ」


「おう、」


翔と結衣が待つ駅まで一緒に行く

何もなかったかのように戻る俺ら

なんの話してたか聞かれると

俺が千尋を避けてると勘違いされてたから誤解を解いてた

詳しいところまでは言えるはずもない

多分…これでもよかったんだろうな


自分の中でこれでよかったと決めつけるしかない

千尋が昔俺を好きだったなら今なんで翔と付き合ってんだろう

その疑問を持ってる時点で何もよくないはずだけど

やっぱり俺の中でこれでいいと決めつけるしかない

千尋を変えたのは翔であって俺じゃなかっただけのこと


“千尋が今は翔が好きだってことを”

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る