第49話 初授業です。
初の講義。
ケインとミランダで練習場に立つと、ピリピリと緊張した雰囲気が場に流れていた。
講義を聞くために集まる魔法使い。
その中でも中堅どころと思われる魔法使いの視線は母さんの顔に集まっていた。
「あら、見た顔が居るわね」
ゆっくりとそのうちの一人に近づくミランダ。
「ミランダ様お久しぶりです!」
ビシッと気をつけをしている一人の少し偉そうな男性魔法使い。
ニコリと笑いながら。
「その腕章、部隊長になったのね。
私に指導されていつも泣いていたのに」
その魔法使いの過去を暴露する。
「えっ、あの偉そうなカナルさんが涙目に」
若い魔法使い達から声が上がる。
「あの人は?」
「何者ですか?」
などと言う声が聞こえ始めた。
そして、
「バカ!
あれが『魔女』ミランダ。
逆らっちゃダメ。
根性焼きってファイアーボールを押し付けられるわよ!」
ミランダを知ってるのか、一人の女性魔法使いが必死に若い魔法使いに注意していた。
(根性焼きって……。
何時の時代ですか母さん……)
ケインは苦笑いである。
「あら、久しぶりね。
サリーさん」
若い魔法使いに注意した女性魔法使いに近づく。
「あなた、人望がありそうね。
あなたも小隊長になったの……」
女性魔法使いの周りをゆっくり歩くと、
「今度、私の息子がこの講義をすることになったの。
フォローお願いね」
ミランダが言うと、
「はっ、はい!
誠心誠意、仕えさせていただきます」
即決でサリーという魔法使いが赤べこのように頭を下げていた。
(やり辛いよ、母さん……。
これじゃモンスターペアレントだ)
再び苦笑い。
「じゃあ、ケイン。
講義をお願い」
ミランダがケインに振ってくる。
「えーっと、私の祖父が受け持っていた講義をを受け持つことになった、ケイン・ハイデマン子爵です。
若輩者ですが、よろしくお願いします」
そうケインが言うと、
(えっ?
普通じゃん……)
という雰囲気が流れる。
「まずは、魔力の圧縮について……」
ミランダとケインのギャップのせいか話を聞く師団の魔法使い。
「魔力の圧縮ができると、魔法そのものの威力が上がります。
特に炎系の魔法、ファイアーボールについてはこの大きさの物を普通に使うよりは、圧縮して小さくしたものを使うほうが、威力に格段の差が出てきます。
ではやってみましょう」
ケインはスイカ大のファイアーボールを無詠唱で発現させ、そのまま標的を狙う。
「ボン」
という音がすると、炎が上がった。
「これが発動した魔法をそのまま使った場合。
次は圧縮した場合です」
ケインはスイカ大のファイヤーボールをビー玉大に圧縮して、標的に投げた。
「チュドーン」
キノコ雲が上がりそうなぐらいの威力になる。
土煙が上がり、パラパラと破片が落ちてきた。
そして、土煙が晴れ、周りが見えるようになると、
そこには結構な大きさのクレーターができていた。
魔法使い達がケインを見る。
「魔女の息子は大魔王」
誰かが呟いた。
ケインはスルーして、
「こんな感じですね。
魔力についてはほぼ使用量が一緒です。
魔力制御ができれば、同じ魔力でも威力が全然違うことに気付いてください。
戦場では魔力回復がままならないと聞いています。
であれば、このことを応用して、同じ威力でも消費する魔力が少なく済むことになりますので、練習をお願いしますね。
あと、無詠唱の練習をしておいてください。
次回、できるかどうかを確認します」
そんな話をして、講義が終わった。
ザワザワという声が聞こえる。
「無詠唱だと?
そんなことができるのか?」
そんな事を言っている男に、
「あら、私はできるわよ?」
と母さんが人差し指を立て、その上に火球を出現させた」
「講師ですから私もできます」
俺は右手の指先全部に火球を出現させた。
「魔法とは事象を想像し魔法を使うことで発動させる物です。
ですから、火がつく理由や水が発生する理由、土が固まる理由、風が吹く理由を知っていれば、詠唱が無くてもイメージで魔法は発動させることができます。
ファイアーストームやサンドストームもそれの合わせ技になります」
ケインがそういうと、ミランダまでもがきょとんとしていた。
(えっ、知らんかったの?)
「ちなみに、もっと理解するとこのように青い炎が出せるようになります。
炎の温度は赤いより青い方が温度は高くなりますので、当然のごとく威力が高くなります。
青いファイアーボールを魔力圧縮して飛ばすと、多分この辺がなくなるのでやりません。
知りたい人は、私が居る時にでも聞いてください。
今日の講義は終わりです。
先ほど言った通り、無詠唱の練習をしてくださいね。
慣れていない方は部屋で練習せず、広い所でやることをお勧めします。
魔力が暴走したら、目も当てられませんから」
そう言うと、俺は練習場を出た。
「ケイン、凄いじゃない。
私も知らない事を言っていたわね」
「そりゃ、母さんの本を見たりして勉強したからね」
後に、ミランダの厳しさとケインの解説のわかりやすさで講義は好評を博す。
(コレで子爵が貰えるなら良しです……)
「ケイン、魔法師団の講師になったんだって?」
ラインが休憩時間にやってきた。
「耳が早いな。
誰から聞いた?」
ケインが聞くと、
「通学の馬車でエリザベス殿下から」
(ふむ、それなら仕方ない)
ケインは苦笑い。
「言ってはいけなかったでしょうか?」
エリザベスが不安そうだが、
「いや、そういうつもりじゃない。
耳が早いなって思っただけ」
エリザベスへのフォローの後、
「マーロン爺さんの跡を継げば子爵位が貰えるって聞いたんで、跡を継いだんだ。
仕事も魔法師団で講義をすればいいだけらしいから」
「マーロンってあの王宮魔術師筆頭だった?」
「そう」
ラインが少し考えると、
「えっ、子爵?」
と聞いてきた。
「そう、子爵。
形だけみたいだけど……
まあ、これでラインバッハ侯爵に言われた『子爵になれ』って言う約束は守れたね」
「うん。
嬉しい。
後はエリザベス様だけだね」
ちょっと不安そうなリズに、
「大丈夫、間に合わせる」
とケインがいうと、嬉しそうに頷いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます