第17話 (閑話)わが村
私はラムル村の住人。
小さな畑を耕し、麦を作り、税を納めていた。
税率は高く、ほとんどの物を納めていました。
しかし、食料については、魔物が居るもののそう強い魔物ではないため倒して肉を得たり、森の中で山菜やキノコを採ることで、何とか賄えています。
そして、その皮を売ってお金を得たりしていました。
貧しいながらも、生活を送っていたのです。
ある日、村長の下にルンデル商会の会頭が現れました。
「この村で、やって欲しいことがある。
雇用も増えるし、現金収入も多くなる」
会頭の知り合いだった村長はそれを受けたようです。
厩と小屋ができていきました。
厩の前には柵を作ってあります。
えっ? 我々に馬を?
そんなはずはない……。
私の思い通り馬は来ませんでした。
その代わりに来たものがホルス。
男の子とその後ろに従う美しい女性がホルスを連れてきたのですが、ホルスは気性が荒く、なかなかなつかないはず。
そしてコッコー。
あの素早く逃げるコッコーを十羽以上連れてくる少年と女性。
周りに飛んでいるのは……アベイユ?
えっ、何?
アベイユを使役?
見るとコッコーの体は痺れています。
アベイユに刺されると、私たちでさえ一日動けなくなる。
「森でアベイユ出会えば、刺激せずに即逃げろ!」
と言うのが合言葉のようなもの。
コッコーはそのまま少年と共に小屋に入りました。
そして、何かがあったようです。
少年の前で何故か敬礼をするコッコーが居ました。
村長が住民を集めました。
少年が、
「コッコーの新鮮な卵を得るためにここで飼うことにしました」
と私たちに言います。
「コッコーの卵だと?
食べると死ぬじゃないか!」
と一人の男が声をあげました。
「私の甥っ子はコッコーの卵を食べていたけど、ある日当たって死んだわよ!」
私も信じられない。
すると会頭が、
「それは新鮮ではないからです。
ルンデル商会で売り出すもののために、このコッコーの卵は必要です。
ですから、食べなくてもいいので、卵の回収をしてもらいたい。
当然雇用契約を結んで、給金を払います。
ホルスについても乳が必要になりますので、乳しぼりをしていただきたい。
これを荷馬車に積み割れたりこぼれたりしないように、王都に運んで欲しい。
通門証はこちらで準備します」
と言いました
「こんなものが食べ物になるのですか?」
と村長が聞くと、少年は何かを取り出します。
「まあ、食べてみてください」
少年はそれとスプーンを村長に差し出すと、甘い匂いが広がりました。
スプーンに掬って出てきた物はプルプルと震えます。
物が柔らかいだけではなく、手が震えているようです。
何といっても、死人が出るというコッコーの卵なので、なかなか食べる勇気が出ないようです。
そして村長は意を決してパクリと喰らいつくと、途端に目を細めた。
ほっこりとした顔をすると、
「美味い……」
としみじみ言いました。
「皆さんの分もありますので、とりあえず食べてみてください」
少年は言う。
「何だこれは?」
「こんなもの食べたことが無い!」
「僕にも頂戴よ!」
「お前には早い!」
小さな子にもそれを与えています。
優しい少年です。
「お分かりの通り、このお菓子は美味しい。
そのためには、コッコーの卵とホルスの乳が要ります。
ご協力をお願いしたい」
会頭が頭を下げました。
「おれやる」
手を上げる若者たち。
「私もやる!
卵を集めるだけでいいのなら」
若い女性も手を上げた。
すると次々に手が上がります。
「これは、この村の事業です。
この村に委託します。
村にお金を渡し、村長が村民に働いた分のお金を支払います。
村長、よろしくお願いしますね」
会頭が言うと、村長が頷いていました。
こうして、我が村でコッコーとホルスを飼うことになったのです。
現金が入ることで、潤うことになります。
毎日王都に行くので、雑貨なども手に入り生活が豊かになりました。
「指定したホルスの乳を納入しても、余ると思います。
その分については子供たちに飲ませてやってください。
卵についても同じです。
皆で分けて食べてください」
少年は言っていました。
お陰で子供たちの顔色も良くなり、他の村の子供よりも大きく成長しています。
感謝です。
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