第1部エピローグ 帰還の予感

 むかしむかし、ラドメフィール王国に異世界から一人の女性勇者が降臨しました。

 勇者には一人の賢者と一人の姫騎士がついていました。

 勇者たち3人はラドメフィール王国の上級魔術師とともに奮闘し、

 国の悪しき慣習を覆し、新しく豊かな国を築き上げました。

 そして勇者達は役目を終え、勇者の恋人となった魔術師をつれて元の世界へ帰って行きました。

 勇者達が導いたラドメフィール王国は、永きに渡り繁栄してくのでした。


 めでたし、めでたし……。



 市内の図書館で皐月と稀星が絵本を眺めている。


「皐月、この絵本ってこんな結末だったでしょうか?? わたくし違和感がありますわ」


「――ん? どうだったかな……」


 皐月がパラパラと絵本のページを進めた。

 そろそろ空の夕焼けが暗がりに飲み込まれる頃、帰宅前の一刻を図書館で暇を潰していた二人。

 今日はどうにも胸騒ぎがして、家に帰りたくない気分なのだ。


「さ、皐月!! ラドメフィール王国の勲章が光っていますわ」


 稀星はいつも自分のシャツの中に隠してある勲章を首から引き出すと皐月に見せた。

 確かに金獅子が抱える宝玉が怪しく光っている。

 もしかして胸騒ぎの原因はこれだったのかと皐月は訝った。


「まさか穂積が帰ってきたのかも!?」


 皐月と稀星は転がるように図書館を出ると、勲章の宝玉に導かれるまま、例の高架下の喧嘩スポットへ向かった。懐かし友と再会できるかもしれないとの期待に胸を弾ませ、スカートが激しく翻ることも顧みずに全速力で走って行った。


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