第6話 現在に時を戻し。助手席乗りなよっと笑った彼女が指したのは、副操縦席。ヘリコプターで、デートに出かけましょう。

さて、時は戻り。

現在。

午前中に軽い言い争いをしたのだが。自分はこの大帝国の全ての国を動かす省の統括省の副大臣、NO2。

チョコを巡る痴話喧嘩で職務放棄なんかできない。

午後は本気で、働くか。

お昼を済ませると、麗子は姿勢を正して、会議に出席するために統括大臣、交通省の交通大臣と共に会議室に向かった。


「今日の議題は、2年前。東側にミサイルを落としてきた為に征服し、我が国の一部となったの土地の深刻な水不足についてです。水がなければ、あるところから引けばいい。我が国最大の株式会社、ミスタープリンセス株式会社がリゾート施設を建てようと、広大な敷地を探しており。打診したところ、4分の1を買い上げました」

麗子は会議室のスクリーンに土地の画像を移りだす。

「幸いなことに、この土地の隣は水が余り過ぎて、何度も浸水の被害がでていたので。住民の反対党は一切なく、スムーズに水路・水源が整備され。何もない土地で民は貧困にあえいでいましたが、リゾート施設の設営に伴いその問題も解消しました」

そこで、ミスタープリンセス株式会社の社長とプレゼンを交代する。

「ご説明にあった通り」

白髪交じりの社長は淡々と話しだす。

「・・・であるからに。宝玉大帝国から借りていた、融資はきっちりこの場で返済いたします。ありがとうございました」

社長は丁寧に頭を下げると、スーツの右ポケットから財務省のトップである財務大臣に小切手を渡す。

「ほう。これで終わりか?色はどのくらい付けていただけたのだろう」

玄翠は営業スマイルを向ける。

「さすが、玄翠皇太子殿下。抜かりがございませんな」

社長は苦笑すると、左ポケットからもう一枚の小切手を玄翠に差し出した。

「1億円。・・・まぁ、いいだろう。しっかり、他国の旅行者から金を巻き上げ、税金を頼む」

にっこり営業スマイルを玄翠は社長に向けると、会議はお開きになった。


午前中は言い合いを軽くしていた二人だが・・・。

痴話喧嘩は犬も食わないとよく言うように。

グルメな人間である玄翠、麗子の2人は当然。犬が食べないようなものは、当人達も食わない。

昨日、今日、付き合った二人ではない。

あんな言い合いはコミニケーションのキャッチボール。

「へい。彼氏。私の隣に乗ってかない?」

会議室を玄翠は執事と護衛を連れて出ると、麗子は足元に置いてあったヘルメットを2個掴むと、会議室を飛び出した。

玄翠を呼ぶとヘルメットを一つ、玄翠に投げる。

玄翠は振り向きざまに飛んできたヘルメットをキャッチすると、無言で被った。

これは午前中の言い合いなんて、気にしてないよと言う麗子と玄翠の合図。

今日はどうしても、ミスタープリンセス株式会社の社長が今日の昼一番しか都合がつかず。

会議を入れたが、本当はバレンタインデートをする予定で開けてもらっていた。

玄翠は誘われることは期待していたし、分かっていた。

ただ、会議室を国の国王陛下の次の位である玄翠が、大衆しなければ会議が終わらない。


公私混同しないのは、素晴らしいわ。

デートが潰れても顔に出さずきちんと仕事をする玄翠は尊敬するし。

麗子は心の中で呟くが、本人には教えてあげない。玄翠もまた、麗子を尊敬していたが口には出さない。


ミスタープリンセス株式会社の社長から、斡旋を後押ししたわけではないが。企画を指示をしたこともあり、視察ついでに高級温泉施設のvipルームに招待をされていたのだ。

どこに行くんだ?

なんて、玄翠は聞かない。

「車じゃなくて、バイクですね。手配いたします」

今日から、新しく執事に入った玄翠の昔からの執事のカールの隣にいる執事はヘルメットに心得ましたと返事をするが・・・。

「この2人のちょっとは、ヘリコプター。遠出は飛行機です。因みに、いずれも、運転は麗子嬢がされます」

「・・・えっ」

カールは驚く新人執事をよそに、慣れた様子でポケットに用意をしていたサングラスを手に取りながら説明をする。

さすが、カールね。ヘリコプターに乗っても眩しくないようにサングラスを用意してるなんて。

さすがだわ。

用意の良いカールに麗子も玄翠も関心してしまう。

「え、あっ。麗子様が運転なさるんですか!」

この展開を読めていたカール。そんなカールを褒めるカップルだったが。

新人執事はあたふたしていた。

「大丈夫。公爵家の自家用ヘリコプターは頑丈だし。急いでるわけではないし、制限速度は10キロくらいしかオーバーしないから。誤差よ」

公爵令嬢は飛行機なんて運転しないなんて、発想は麗子にはない。

「自家用ヘリコプターの制限速度は、お前の為に、俺が作った法律だ」

破るなっと玄翠は突っ込むが。

「破ったら、おしよき?」

麗子は、期待していたツッコミに楽しそうに玄翠の顔を覗き込む。

「・・・あぁ。俺がいいというまで、愛でも囁いてもらおう」

おしよきなんて、用意してなかった玄翠は渾身の一撃と言わんばかりにどすの利いた声で言うが。

「ふっ」

え?何それ?

ご褒美じゃない。

麗子は鼻で笑うと、玄翠の手を掴んだ。

「一秒でも勿体ないわ。行きましょう」

玄翠はそんな麗子と共に走り出す。

まぁ、この二人の足は速い。

「お、追いつけない」

新人執事はその場で尻もちをつき。

カールは手に持っていた書類を兵士に預けると、後を追う。

追いつけなければ、おいていかれる。

かつて、何度かまさか・・・。

殿下と公爵令嬢が護衛も執事もメイドもつけずに外出などしないと高をくくっており。

裏切られた経験があるのだ。


「麗子公爵令嬢。本当に運転をされているのですか?」

ぜいぜいと飛び立つ直前に死に物狂いで追いつき、新人執事は乗り込む。

「そうよ」

麗子は操縦席に座ると、ヘリコプターに乗り込んだ見慣れない顔の兵士ににっこり微笑む。

「普通の公爵令嬢は運転なんてしませんが、麗子様はされますよ?」

カールはシートベルトを着けつつリラックスした様子で本を取り出す。

「普通の公爵令嬢どことか。普通の女は運転しない」

玄翠はカールに突っ込むと、麗子はふふふっと笑うとゆっくりと離陸を始める。

「あなた、いつからここの執事なの?見ない顔ね」

「はい!今年の4月に入社し、本日初めてお側仕えをさせていただきます」

「へぇ~。スピート出世ね」

側近執事は執事に入社をして5.6年はかかる。それを半年ほどでと言う事は、かなりのエリート。

度胸がこれであれば、最高なのにね。

麗子はそんな事を思いつつ、ポケットからリップを取り出すと口に塗る。

今日は温泉で玄翠とお泊り。

体はきちんと、隅々までまたケアをしなければ。

「れ、麗子様!リップクリームなど、後で良いのではないでしょうか?」

片手ハンドルでヘリコプターを操作していることに、彼は声を上げる7。

「高祖恐怖症?目をつぶっておいたら?彼氏とキスをするために、くちびるを鍛えてるの」

麗子はさらっといいながら、器用にリップの片手で占めるとポケットの中にしまう。

「麗子は綺麗だ。そんな事をしなくても十分だ」

玄翠の言葉に麗子はちらりと玄翠を見る。

「彼氏の言葉はあまり、当てにならないのよね。だって、玄翠の顔には、色眼鏡がかかってると思うの。しかも、10センチくらいの分厚いやつ。あっ・・・」

麗子は声を上げると玄翠はどうしたっと麗子を見る。

「・・・・仕事ができる。仕事が早い。仕事が的確。尊敬できる。不器用だけど、優しい。顔がいい。イケメン。男前。細い。長身。気遣いが以外にできる。博学。物知り。私の事が好き。笑いのツボが一緒。フットワークが軽い。字が綺麗。箸づかいが上手い」

「やめろ」

いきなり褒め言葉を連呼され。

玄翠はさすがに他人のいる密室でいわれるのは照れると止めるが・・・。

「さっき。制限速度を1キロオーバーさせたわ」

やめろって。

ご所望通りに制限速度を超過したから、愛を囁いてるんだけど?

「お前、わざとリップ塗って超過させただろう?」

「あら?ばれた?」

「当たり前だ」

「ふふふ。すごーく自然だっと思ったんだけど?」

「お前の考えていることは全てお見通しだ」

「それは、嬉しいわ。じゃあ、今考えていることを当ててくださいな」

「・・・しるか」

「本当に?じゃあ、ヒント。縞模様」

「ヨコシマ」

「大正解。ヨコシマな事を考えていました」

だって、彼氏と公私混同。

視察という名の温泉旅行よ?

麗子は笑いながら、しっかり前を見て、運転を続ける。

「なぜ・・・。公爵家のご令嬢が運転をできるのですか」

兵士は安全運転な空の旅に尋ねる。

麗子は話やすいオーラがあるのだ。

「私のDNAには、大酒飲みで、妖艶の代名詞となる祖母。しかも、16歳の孫娘に飛行機を与え、自ら鍛えるというお爺様も両親もお口あんぐり。開いたお口が、驚きで塞がらないような偉業を成し遂げる祖母の物が受け継がれているからよ。カエルの子はカエルっていうでしょ?容姿も中身も祖母の生き写し。隔世遺伝って怖いわね」

「一つだけ訂正を入れる。カエルじゃなくて、蝶だろ」

「蝶に例えられると少し嬉しいわ。捕まえてちょう(蝶)だい」

「ごめん。おっさんだった。大酒飲みのおっさん」

「あらあら。大帝国の王妃を大帝国の殿下がけなしていいのかしら?」

「お前が喋らなければ、ばれないからいい」

「それもそうね。お婆様、すでに玄翠の事も孫カウントをしているようよ」

「それは。お婆様孝行をぜひさせてもらおう」

いつまでも会話のキャッチボールをテンポよく麗子と玄翠は続ける。

この、何でもない日常が好き。

同じ空間で同じ空気を吸っているのが好き。

「玄翠が吐いた息が私の中に入ってきていると、想像すると。最高に幸せな気分になるわ」

玄翠はその麗子の発言に後ろを見る。

「お前ら、息をつめろ。麗子の吐いた息を吸われると思うと、不快だ」

「無茶苦茶な。死ねと?」

カールはやれやれっと突っ込みを入れる。

「そうよ?カールに死なれたら、そうそう。カールのような優秀な執事様が見つからなくて、結果、仕事に私たちも殺されてしまって。共倒れよ」

「じゃあ、窓を開ける」

「嫌よ。せっかく、髪の毛を立て巻きカールにしてるのに。崩れるじゃない」

楽しく話しているうちに、あっという間にヘリコプターは目的地に到着する。


「明日14時に。ここで」

視察が終わると、玄翠と麗子は手をつなぐ。

カール達執事と護衛に言うと、客室露天風呂のある部屋に消えていった。

誓約結婚の相手、婚約者とは腕を組むことはあっても、手を繋ぐことはない。

麗子は部屋の更衣室に入ると、浴衣の下にリボンを巻く。

そして、扉を開けた。

バレンタインを締めくくる。


最後のプレゼントは・・・わ・た・し。


その後、めちゃくちゃ温泉を楽しんだ 【この話はRではないので完】

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