第2話 勉強のために自分の体を椅子に縛るとは・・・。

玄翠が麗子という存在を知り、麗子と会ったのは、玄翠が16歳。麗子が10歳の時だった。

高校の学力を計る全国統一試験で玄翠が人生ではじめて、1番じゃなかったのだった。

当時の玄翠は大帝国の第一王位継承者。

自分に盾をつくものはいないどころか、誰もが媚びへつらい。

色が白くて、すらっとしたその容姿もあり。男女の共に、周囲は常に玄翠に気に入られようと努力していたし、武術も学問も努力をせずとも常に1位だった。


そんな、絵に描いたような完璧王子のはじめての敗北。

相手は自国の公爵令嬢で、6歳も年下だという。


順位を見た瞬間、自家用車を執事に運転させ、公爵家に行くと、ヅカヅカと全国模試第一位と名前のあった鷺洲麗子の部屋に向かう。

不正をしたのか聞いてやると扉を開けると、玄翠は固まった。

な、な、なんだ。

虐待されているのか?

椅子にロープで縛り付けられた少女が一心不乱に勉強をしていたのだ。

「お前・・・」

「玄翠皇太子殿下っ違うんです!うちの娘は、ちょっと人と思考回路が違うだけで縛られるが趣味ではないんです!」

「殿下!己の限界突破を常に美徳と捉える変わり者なだけで。何をしたのかわかりませんが、この子は真っ当でございます」

大帝国の第一皇子がいきなり家にはってきて、しかも、怒った様子で麗子の元に向かう。

鷺洲夫妻はもちろんのこと、メイドや執事、護衛達もあたふたしていた。

玄翠は必死に訴える親と一心不乱に勉強を続ける少女を見比べる。


「下がれ」


「「え?」」

両親はその言葉に思わず声を漏らす。

「下がれ」

玄翠は顔を上げない麗子をじっとみながら、両親に言い放つと部屋の中の壁に背を預け。

麗子が集中力を切らせるまで、待つことにしたのだが。

彼女は・・・。

「終わったー!!!」

その言葉と同時に彼女は引き出しを開けると、ナイフを取り出しロープを切る。

そして、机の後ろの小型の冷蔵庫からケーキを取り出すと、歩きながら食べる。

「どこに行く」

執事にでも声をかけられたと思ったのか、麗子はタメ口でさらっと答えると食べ終わったと同時にトイレのドアを開ける。

「トイレ」

振り向くことなく、麗子はトイレに消えた。

これが玄翠と麗子の出会いだった。

なぜなら・・・。

トイレから出た麗子はそのまま、気絶し2日間眠りについたから。

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