金と権力ある俺様王子が、最強令嬢を溺愛結婚する件

林檎の木

第一章 馴れ初めついでに日常をお見せします。

第1話 愛も強けりゃ、口も強い公爵令嬢様

宝玉大帝国は国土面積、経済、医療、IT、武力と何においても世界最高峰とされているのだが。

大帝国は国王、妃、第一皇子のたった3人が国を回していた。

そんな大帝国の第一皇太子の執務室には、大28歳の皇太子である宝玉玄翠と、この国の大学を卒業したばかりの最年少副大臣の鷺巣麗子、22歳が机を挟んで向かいあっていた。

どっしりと宝石の散りばめられた重厚感あふれる座り心地抜群の椅子に座るのは、第一王子の玄翠で、机にも宝石は埋め込まれ国家の財力がいかに莫大であるかを物語っている。

そして、そんな皇子の前に仁王立ちする麗子は仁王立ちする麗子は黒のスーツを着て、真っ白な肌に大きな瞳。漆黒の黒く長い髪をポニーテールにぎゅっと結んでいるのに、溢れ出る色気と綺麗さが止まらない絶世の美女。


「陛下の目は節穴でございますか?」


「いい度胸だ。誰にものを言っている」

呆れたような声にドスの聞いた声で玄翠は答える。

度胸?度は、物事の大きさを測る意味を持ち。胸は・・・乳でいいのよね?つまるところ、胸の大きさ?

つまり、私の乳をこの殿下はお褒めになったのね。

まぁ、私の乳は大きくはないが。

cカップ。この国の平均値だ。

「胸の度数は平均です。良いということは、お好みに合うということ。よかったです。さて、話を戻しますが。殿下のその頭は飾り物でございますか?」

次期皇帝に失礼なことを言えば打首にされても文句は言えないのがこの世界のルール。

最年少で副大臣になるほどの頭の持ち主である彼女であれば。

度胸は胸の大きさの話をしていると思わないはずなのだが?今は突っ込まない事を玄翠は心に決めて口を開く

「何様のつもりだ?」

「何様と言われても、公爵令嬢様です。そして、あなたの恋人です。本当に殿下の大きいのは、思考ではなく、口と態度だけのようですね」

彼女はこの国の貴族最高位の位である、鷺洲公爵家の長女であり。

飛行機で6時間ほど遠くにあるオリーナ大帝国の国王夫妻の孫。

「・・・」

「二の句が継げませんか?」

冷血非道王の前で仁王立ちをする彼女は淡々と丁寧な口調で大帝国の次期国王を罵る。

「ちっ」

玄翠の舌打ちに、鷺洲麗子はため息をついた。

2人は仕事の話をしていたのではない。

「バレンタイン。私が女で、職場は男のみ。チョコを同僚、上司にばら撒いて何が悪いんですか?」

「態度がでかい」

「当たり前でしょう?身長、157センチ。体重45キロ。この男99%。私しか女はいないこの職場で、態度が小さくて副大臣がやってられますか」

彼女はそう言うと、時計をみる。

「なんだ?」

「王妃様に呼ばれているのです。失礼」

「待て!王妃と俺!どっちが優先だ」

「もちろん・・・。王妃様と殿下であれば、王妃様が優先です。夫婦関係より、嫁姑関係のほうが築くのが難しい」

しれっと麗子は言い切ると部屋を後にした。


「何が喧嘩の原因だったんですか?」


玄翠の幼馴染であり、絶大な信頼を置いている執事のカールは麗子と入れ違いに入ってくる。

--------3時間前。

バレンタインという事もあり、今日の王宮には玄翠にチョコを渡そうと沢山の姫や貴族令嬢が押し寄せていた。そして、遠方に住むものなどは郵送をするので、その結果、11トントラックが5台分のチョコが王宮に到着。

段ボールに入れられたチョコが次から次へと執務室に運ばれて来ていた。

「今年も大量ですね。選別し、孤児院や貧困街の炊き出しのおまけとして配給しましょう」

麗子は部屋にやってくると、段ボールの前に座り箱の中身を確認する。

「自分の"彼氏"がモテていて。さぞかし、心配だろう」

「いいえ、全く。浮気したって構いませんよ」

麗子はとくに感情を込める事もなく、段ボールの中チョコを選抜し、頂いた方には必ずお返しをしなければ。

漏れがあっては大変と、パソコンのエクセル機能に送り主の名前、送られた品のおおよその金額を書き加えていく。

「しない」

玄翠は浮気なんてしないのだが。

浮気なんてしないでっと、可愛く麗子に言われたかった。しかし、麗子はそんなことを言うような女の子ではない。

いつものことだが、玄翠の求める回答は返ってはこない。

「浮気をしたとしても、私は全く構いません」

重ねていう麗子に玄翠は不機嫌そうに机の書類から、床に座ってチョコの選別を行う麗子を見る。

「じゃあ、浮気してやる」

麗子よりも、玄翠の方が6歳も歳が上だが。

この手の恋愛の話になると、玄翠の精神年齢は極端に下がった。

「してもいいですが。した時は、玄翠の体にペットの迷子防止のGPS付き首輪をつけ。貴方の携帯は全てチェック、クレジットカードの明細は勿論、お金はお小遣い制にして、私が管理します」

それは、浮気をしても良いと言えるのか?

なんだか・・・。愛が重い。・・・重くないか?

許す。興味ないと言われるよりかは、遥かに関心を持ってくれる事は嬉しいが。

愛の方向がずれているというか、ちょっと、重たくないだろうか?

玄翠は麗子を真っ直ぐ見つめる。

「1回目はそのような感じで。2回目の浮気という重犯罪の再犯があった場合」

1度目の浮気をしていないのに既に・・・。再犯のことまで、考えてるなんて。

仕事においてありとあらゆる考えられる事柄を考え、思慮をつくしているのは嫌というほど見てきたが・・・。プライベートにおいても、抜け目がない。

「重犯罪をした場合?」

「テレビ電話をトイレの時も、お風呂の時も。ずっとつけっぱなしにしておいて下さいね?」

「・・・重い」

麗子、想いが重い・・・。

ヘビーだ。

ヘビーすぎる。

玄翠は顔を引き攣らせる。

「重くなんてないですよ。スマートフォンを首からぶら下げてもらうつもりですから」

いやいや。録画する機器の重さの話をしてるんじゃないよ?

麗子。

玄翠は自信満々の麗子に突っ込みたいが・・どう?名案でしょう?

にっこり微笑む麗子に玄翠はあることが閃き、鼻で笑う。

「スマートフォンの充電がビデオ通話で1日持つとは思えんな」

言い返せないだろうと玄翠は渾身の一撃を麗子に与えたつもりだったのだが。。

そんな、玄翠を麗子は冷めた目で見る。

「お金はたくさーんっあります。スマートフォンごとき、5.6台買えばいいでしょう」

やりかねない。

この女なら、やりかねない。

なんなんだ?

やや引いていると麗子は立ち上がり、紙袋を玄翠の前に出す。

「バレンタインチョコです」

袋の中には、1粒1万円もする高級チョコが1粒。金箔の貼られた重厚感のたっぷりある箱に入れられており。

その隣には、玄翠の趣味である飛行機の立体的な缶に入ったチョコ。

そして、手作りだろうか?

市松模様のクッキーが5枚ほど入ったビニールの袋が入っていた。

彼女から、バレンタインに何かを貰えるのは嬉しい。

「考えられるバレンタインのプレゼントをモーラしてみました」

よく玄翠がみんなからもらう高級チョコ、庶民の子供達が友達や好きな男の子に贈りそうな500円前後の缶のチョコ。そして、男心をくすぶる手作りチョコ。

玄翠は席から立ち上がり、箱の中から赤のリボンをつかむと、麗子の首に赤のリボンを軽く巻きつけた。

「本命チョコ、ありがとう。本体をもらえるかな?」

本体=麗子。

お前が欲しい。

そして、どうだ。

言ってて恥ずかしいが、麗子の口の強さに勝つためには羞恥心の一つや二つ。数分くらい封印せねばならない。

照れるのを期待した玄翠だったが。


「な・・・。くそっ負けた!」


その発想はなかったと、麗子は悔しそうに拳を握る。

「・・・勝負はしてない。照れろよ」

玄翠はため息をつきつつ、力無く執務室の自身の席に戻る。

麗子は年々、綺麗になって来ているのは間違いない。

何せ、麗子の母親は綺麗だし。

麗子の祖母、オリーナ大帝国の王妃は若き頃、天女、女神と呼ばれた伝説級の美女だ。

「よく、チョコの単価がわかるな」

麗子の手元に抱えたパソコンの一覧表を2メートルほど距離があるが、玄翠の目では読むことができた。

そして、この一言が、喧嘩の始まりだったのだ。

「ええ。職場の皆さんにもお世話になってる頻度によって、価格帯を変えてチョコを選ぶ為に百貨店を3軒梯子。カタログを100冊ほど取り寄せていたら、自然と頭に入って来たの」

そんな麗子に玄翠は渋い顔をした。

「俺は浮気は許さん」

「はい?義理チョコを撒くのがどうして浮気なんですよ」

「チョコを撒くな」

「だから、義理チョコです。あなたのが本命チョコだし、すでに大量に撒きました。そりゃもう、朝から大量に。ざっくざっく」

その言葉で玄翠の中の嫉妬心に火が付いたのだ。

つまりバレンタインチョコを1番初めに貰ったのは俺ではないということだ。

「軽率だ。妙な噂がたったら、どうする気だ」

お前が俺以外を好きだとか。気があるとか。

「火のないところに煙は立ちません」

ピシャリと言われるが、玄翠の妙な嫉妬心は燃え上がり。

「誰かが、お前の義理チョコを本名だと勘違いするかもしれん」

「そんなやつの目は節穴です。あ、そうか・・・。玄翠殿下」

麗子は立ち上がると仁王立ちをして玄翠を見る。


「殿下の目は節穴でございますか?」


っと、冒頭の文になったのだ。

「そで、先ほどの展開になったのですね」

カールはそんな玄翠にため息をついた。

「惚気を聞かされたのか。男の嫉妬を聞かされたのか」

やれやれと言う彼の前で、玄翠は腕を組んで天井を見上げた。

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