第18話 自分の習慣、成長した妹
家に着くなり、明日の日付が書かれた手紙、それ以外にも幾つかの手紙を先に読むが、今日のこと……アリスのことについては一切書かれていなかった。
深いため息をつく……、未来に来て不安ばかりで何も分からないことばかり、唯一の道標となるはずの手紙も、何故か今日のことは書いてない。
自分の知らない5年間の中で、皆んなが皆んな何かを隠している。それは手紙に何も書いていない、自分ですら何かを隠そうとしているようにすら感じた。
「おにいー!ご飯だよー」
下から自分を呼ぶ元気な声に、反応して手紙をしまいリビングにつく。
そこには成長した、妹しかおらず母親の姿が見えなかった。
「あれ?お母さんは?」
「何言ってるの?お母さんも仕事だよ?」
「いつから?」
「あー忘れてるんだーお母さんもねお兄ちゃんが海外に留学したいて言うから足しになるようにて仕事始めたんじゃん」
「ご飯は……」
「そんなん私が作ったに決まってるでしょ?」
「え?」
仕事があるのに自分を優先して、学校まで付き添ってくれたことに対する母親からの愛を知り、心に響く何かを感じる。一緒に行くのが恥ずかしいと思っていた気持ちが恥ずかしくなった。
何より、リビングに並ぶ和食から妹の成長も感じる。改めてエプロンに身を包む妹の姿を見る。
一つ下の年齢だったのに、目の前には4つも年上の妹の姿、お姫様カットされた、ショートボブのこけしに見える髪型だが、158センチほどの身長に女の子のような柔らかなきめ細かい肌に、クリッとした目が彼女の可愛らしさ容姿に拍車をかける。
数日前のことなのに、目の前には立派に成長した妹の姿。きっと部活に入っていた自分に変わって、いつから母親が仕事をしいたかは不明だが家を支えてきたのだと知った。
「美味しいっ」
「何当たり前のこといってだってばよっ」
「何その喋り方?」
「えー?のりわるかったのにさらに悪化してる……記憶を無くしたのを機にエモいがわかるお兄ちゃんに改造しようかな……」
「エモいってなに?」
「そこからー!マジ卍だわー」
「ごめん会話出来なさそう」
前言撤回、成長した妹とは会話すらできない宇宙人のような人になってしまっていた。クリッとした目、こけしのような頭にきっと、宇宙人にキャトルミューティレーションされたのだろうと。思考を放棄しつつ食事は感謝しながら残さず食べた。
その後は妹に促されるまま、お風呂にも入りリビングでくつろいでいる時だった。
「新聞あるよー朝走りも行かなかったしこれも郵便受けから受け取って読まなかったでしょ、家で読むのお兄とお父さんだけなんだから……記憶なくしても無駄にせんでね、ほいっと」
「新聞?」
妹に新聞を投げ渡される。新聞を読んでいた記憶はないから、今の自分の習慣だろうと思い。
新聞を広げる。そこにはさまざまなスキャンダル、誰が引退した、会社が倒産した等の内容から細かい世界の変化まで書いてあった。
恐らく、手紙に書いていないがここに記載されていることは一字一句過去に持ち込んだらそれだけでも価値のあるものになるであろうことは過去からきた柳永には想像できた。だが、未来にきた事を実感すればするほど自分の中で処理するのが難しく、頭痛がしたため、新聞を置きソファーでケータイをいじり足をプラプラと遊ばせている妹を後に部屋へと戻った。
新聞を渡す時からの妹の自分の首を注視するような視線に柳永は最後まで気づかなかった。
時刻は22時を刺しており、眠れないと思っていたが、その日は疲れが溜まっていたのかベットに横になるなりスマホに届いたメッセージも読まずに柳永は床についた。
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