第3話 初めての朝、50通を超える手紙。

澄み渡る青空、小鳥が囀る音が窓から差し込む陽光とともに目を覚ます。


「うーん」


目が覚めると、そこは自分の部屋だと確認できるが、いくつか配置が変わっていたり、知らないトロフィーが並んでいるのが見える。

今眠っていたベットも昔の物とは違い、羽毛なのかとても触り心地が良く感じる。


その目でふとかけてある時計を見ると時刻は6時を指していた。


「ランニング……行かなくちゃなのかな」


昨日の自称彼女の言葉を思い出す。ランニングだけは欠かさないようにと、今の自分からの伝言が頭に残っているが、昨日は色々あり、今も混乱の最中のため今日は行かないことを選択した。


昨日は帰宅後泣き疲れて眠り、目が覚めたら病院で検査を受けた。そこでは高次機能障害や、ふとした弾みで記憶が戻ることもあるなど説明を家族と一緒に受けたが難しい話で殆どわからなかった。

聞かれたことを答えたが、それで良かったのかもわからないまま、頭自体に異常はなく入院はせず、深夜に帰宅したのだった。

身体を起こし、まだ慣れない身体の中足を運び机の上を見る。ノートがあるとのことだったが、机とその上のちょっとした本棚を見るがそれらしき物は見つからない。

すると怪しいのは自分の使い慣れた子ども机の鍵がかかった引き出し3つだと思い当たり、手をかけて引いてみるがびくともしない。

鍵も探してみるが、見つからず、自分の記憶を辿ってみる。自分はいつも鍵を隠す時机にセロハンテープで貼っていたことを思い出し、椅子を引き机をしたから覗くとそこにはセロハンテープで貼られた鍵があった。


「あった」

鍵のかかった引き出しを上から開けて行く、1番上を開けた時、そこにはノートがあった。

(サッカーについてのノート)


「これだな」

それを手に取り、机の上に置く。その他にもノートが3冊と本2冊入っていたがすぐ下の棚も気になり開けてみる。


そこは上より空間があるためか、勉強に関するノートが入っていた。見たかぎり、授業別に入っているようで確認した後、気になっていた一番大きな下の棚を開ける。


そこには、またいくつかのノートと、下にはサッカーシューズの箱が入っており、箱の表紙には(手紙)と書かれていた。


箱の上のノートを机の上に置き、手紙と書かれた箱を開ける。


そこには見える限りで、50は超えていそうな手紙が入っていた、中には手紙というより物が入っているのか小鼓のような物もある。手紙それぞれに日付が降ってあり、一番最初に読むようにと書かれた6月1日と記載された手紙を手に取り読み始めた。 


背景過去の自分へ

まず、こんらんしているのはわかる。追記平仮名で書くのは習ってない可能性のある物だけにさせてもらう。

ここは5年後の世界で、俺は県立だいえい高校1年5組に所属している。席は一番後ろの窓際。

今日は登校日で、サッカーの朝練もあるがそこは下に行けば記憶喪失で休むように連絡をすると母親から聞かされるだろう。いつもは登校に1時間かかるから6時には家を出るように、朝練は7時10分からだ。今日ランニングサボったのは許してやる。

いつもは朝5時に起きて40分走るように。難しい時はヒートだけでもいい、これはノートに残しておく。その時はストレッチも欠かさずに。


(……サボってるのバレてる……当たり前か未来の自分も経験してるから……。)


まず伝えたいことは沢山あるが、全部は伝えきれないし、覚えてないのが本音だ。

まずサッカーだが、一年でスタメンは取れないからひたすら走って、体幹トレーニングだけするように、技術は口の悪い先輩達から盗め。先輩達は口が悪くて、性格も良くないがこれは一流のスポーツ選手に共通していることだ、これからサッカーを続けて行くなら通る道、U12で選ばれたいなら尚更だ。スポーツはきれいごとだけじゃない、どれだけ相手の嫌なことをできるかが重要だからだ。そこはおいおい学ぶからとりあえず必要だと言うことだけ頭に入れておくように……。


(行先が不安だらけなんだけど……)


勉強は高校を選んだ理由もここにあるがマークシート式を採用してるからだ、サッカーが強いのもあるがそこそこだ、俺は他県の強豪からも誘われていたが過去の自分が来て、退部になるのは目に見えているのでやめた。

話を戻す。マークシートは知らないだろうから簡単に、問題を答える欄が1ー4の書かれた数字になっていてそこを塗り潰すだけだ、迷ったら3を塗り潰す。これを忘れるな?迷ったら3だ。大事なことなので2回書いとく。記述式もあるが最初の内は無理だから諦めるように。授業は授業別にノートを作ったからそれを持参してわかるように努力しろ、これしか言えん。


(ますます不安……とりあえずマークシートは3ね)


それから色々と書かれていたが、最後にと書かれた所を読む。

最後にママはやめろお母さんと呼ぶように、敬語は父親から注意されていたからわかるよな?父親と会話するように部活では活用しろ、クラスは逆に自分らしくいれば自ずと友達が出来る。


(家は厳格な父が話す時は必ず敬語だと小さい頃から言われており、それが染み付いている。未来に会うのも不安なくらい怖い父だが、昔はプロで活躍していたサッカー選手だったため尊敬もしている父だ)


彼女のことだが……あいつは大切にしてくれる。だからお前も大切にしろよ?ああ見えて心は弱いから。

何かあったら伝言で114106とRainで送ってくれ、スマホのパスワードもこれだからよろしく。これはお前と彼女に送る言葉だ。俺は信じてる。自分でやったことは自分に返ってくる。それを良く覚えておくように。

psネットで調べんようにね?彼女にもそう伝えておいて。


「おにいー!朝ご飯だよーまだ寝てるの?」


手紙を読み終えると自分を呼ぶ妹の声が聞こえてくる。


「今行くー!」

114106てなんだろう?とは思いつつ。

散らかった机をもとに戻して、授業別のノートは忘れないようにバックに入れ下へと向かった。


リビングについて開口一番妹に言われたのが制服は?と言われた。頭がはてなマークでいっぱいになったが、顔を洗うなどの身支度を整えて、しょうがないと母親に言われながら慣れない制服に身を通し、しっかりネクタイも結んでもらった。


そこで部活は記憶喪失で来週まで休めるように連絡することを告げられ同じように学校に事情を説明すると告げられた。

手紙の通りだと感心しつつ、「ありがとうま、お母さん」と伝えると、寂しそうな顔で無理しなくていいのよと告げられた。


それからも学校についてくなど一悶着あったが、彼女さんに教えてもらったと伝えると納得してくれるかと思いきゃ、そうはならず結局直接学校に伝えるからと母親付き添いの元通学することになった。その時メロンという便利なパスポートがあることを初めて知った。


母親付き添いで登校しまた学校で一悶着あるのは別の話し……。

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