第8話 じゃがいもスープとミント
二つ目の山と、三つ目の山で山賊に襲われたが、ユウジのミントで瞬殺して先へ進んだ。
そのぶん、5日間の旅は運動不足のユウジには厳しかったので、スバルに助けてもらいながらなんとか、目的地「ランスパンフ」にたどり着いた。
「着きましたね…」
「ああ、ようやくだ」
ユウジとスバルはかたい握手をする。
ふたりの仲は出会った当初よりも深まっていた。喧嘩も多かったが、途中殴り合いにも発展したが、陰湿な嫌がらせ合戦も生じたが、ミントティーを飲めばいつも沈静した。
ランスパンフの入り口の門番に、冒険者登録証を見せるスバル。ユウジも久しく使ってなかったそれを見せた。
門番は目を丸くする。
「おぅ?トースターのギルド発行なんて珍しいな!あそこ滅んだろ!」
「ええまあ僕が」
「行くぞさっさと」
ユウジの口を塞いで引きずるスバル。街に入る前から変な噂でも立てば後々動きにくくなる。
街の中心部にギルドの建物があった。トースターの街より立派であり、ユウジは感嘆する。
「金があるところは違いますねぇ」
「ここも大した街じゃねえぞ、王都と比べればな」
スバルがギルドの扉を開けると、割烹着のおばちゃんが大鍋を抱えて走り回ってた。
「あ!スバルちゃんおかえり!どうだった?」
「おう、その説明するからまずは落ち着いて…てかなにしてんの?料理?」
「そうよ〜実は王都から貴族の方がきてらっしゃるの!だからここはギルド長として腕の見せ所!美味しい料理いっぱいつくるわよ!」
「そういうのは飯屋か、宿屋の仕事だろ…」
スバルとユウジはテーブルに腰をかける。
「あの方がギルド長さんですか?」
「おう、もてなし好きのおばちゃんアッちゃん」
奥の方でドンガラガッシャーン、と音がする。ずいぶん慌ただしいクッキングのようだった。
「そして、えーとあの方に、僕が犯人だとバラすんでしたっけ?」
「ああ、そしてアッちゃんに王都でお前の罪を放免してもらうための説明状を書いてもらう」
「んー僕って犯罪者なんですねぇ」
「そろそろ自覚持てや」
しばらくするとアッちゃんは、スープをふた皿持ってきた。
「おあがりなさい!できたてのスープよ!お腹いっぱい食べてね」
「ああさんきゅ……ってちべた!これ冷製スープかよ!」
スープはひんやりとしたジャガイモの冷製スープであった。
「出来立てと言われて冷製スープ飲んだのはじめてです…あーでも美味しいですね」
アッちゃんは鼻を高くする。
「あたし自慢の手料理よ!そして畑のひとたちにも感謝!拍手!パチパチ!」
「ただ、ちょっともったりしてんな…そうだ、ユウジ、ミント出してくれよ。このスープに合うかもしれない」
「あーいいっすね」
ユウジはパチンと指を鳴らし、直後スープの上にミントを発生させた。
「……?」
キョトンとするアッちゃん。
「おー合う!スッキリした清涼感が加わりました!」
「いいなこれ!進むわあ」
「…………」
アッちゃんの心情は複雑であった。手の込んだ料理を作ったというのに、謎の葉っぱをトッピングされ、それを美味しそうにたべられる。
こちらの世界風に言えば、10時間煮込んだラーメンスープを出したのにコショウとニンニクをかけられたようなもの。店主しょぼん状態である。
「ちょっと……」
アッちゃんはなにか言おうとするが、踏みとどまる。
これはエゴなのかもしれない、と。食べる人が美味しく食べてくれる。それが一番ではないか。
例え、握った新鮮な寿司に醤油ドバドバつけられようとも。揚げたてサクサクコロッケにソースでぐちゃぐちゃにされようとも。
美味しく笑顔になることが料理にとっては一番なのである。
「ん?どうしたアッちゃん。一口飲むか?」
「ええ…いただくわ!あっうまっ。合うわねこれ。うまっ」
このあとアッちゃんに説明して署名をもらった。
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