第11話
アルベルト付きの侍女になったのは幸いだった。
とりあえずアルベルトにだけは、自分の考えを話し理解してもらえた。
そして協力を仰ぎ、アルベルトの側を付いて回れるようにしてもらったのだ。
思ったよりも協力的なアルベルトは、更に第二王子の所用でと言えば、どこにでも行けるようにもしてくれた。
アルベルト様様である。
菜子はその権限を最大限利用し、美香の様子を観察した。
やはりというかなんというか、アルベルトの話の通り美香はあれ以来本当に力が使えていないらしい。
何度かローズに「剣だけではあれですから、勇者に防具もお与えくださいませ」という提案に、美香は答えようとしたのだが、何度やっても出来なかったそうだ。
しかしローズはその度に「聖女の力は莫大な力を使うのでまだ力が戻っていないのでしょう」と勝手に結論付け、美香を責めるような事はしなかった。
そして2週間が経った頃――。
「聖女様、そろそろ力もお戻りになった頃でしょう?魔王討伐用の防具をお願いいたします。」
と言ってきたのだった。
しかも、国王陛下や王子様達のいる前で。
謁見の間と呼ばれるそこに美香を呼び出し、自分の言う事がさも正しいとばかりに、にこにこと美香を見つめるローズに菜子は辟易した。
今菜子は、突然ローズに呼び出されたアルベルトの付き人として、謁見の間にこっそり参加していた。
美香は美香で、自身に力が無いことに薄々感づいているのか、青褪めた表情でローズを見ていた。
「で、でも私……。」
「聖女様、お願いいたします。」
美香が何かを言おうとしたのを遮るかのように、ローズは恭しく頭を垂れて催促する。
益々青褪めていく美香。
それを見ていた菜子は、ぎりと歯軋りした。
――なんだろうこの気持ち……。
勝手に聖女に仕立て上げられ、力を振るえと言われている美香が、気の毒になってきた。
勝手に祭り上げられて、勝手に悠々自適に生活していたのだから知ったことではない、といえばないのだけれど……。
彼女だって被害者ではないか?という思いが強くなっていく。
辛い思いは知っている。
必要とされない者の、ここでの扱いの酷さも。
だからこそ、見捨てられなかった。
気づいたら、やってしまっていた。
「お、おおお!!」
広場に感嘆の声が木霊する。
自分は、お人よしだなぁと自嘲の笑みが漏れた。
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