「センパイ、行きましょう!」


「終わっっっった……」


ガクッ、と項垂れる放課後。実力テスト後である。“終わった”とは何か。言わずもがな、実力テストである。終わった。完全に終わった。センパイが教えてくれたのにも関わらず終わってしまった。


「そんなにダメだった?」


隣に座ってペロペロキャンディを舐めながら頬杖をつき、そう聞いてくる部長。なんなんだ。そもそもペロペロキャンディなんて舐めていいのか? ここは学校だぞ。


「ダメでした…」


「まぁ元気だしなって。俺もダメだったよ。100点取れるかなぁ…」


「私と部長じゃステージが違うみたいです…」


「ありゃ? そうなの?」


当たり前でしょ。実力テストで100点とかどこの天才…。どこの猛者だよ。なんて思いながら私はガタッ、と席を立った。


「それもこれも前日にバイトを入れてしまったせい…! 決して私がバカだからではない!」


「それはもう聞き飽きました。優良さん。部活動をしてください」


いつもの定位置でペタペタと作品に色を塗っているセンパイが遠目から私たちを見てそう言う。やっと冬休みのコンクールが終わったというのにみんな勤勉な事で…。


「私は今お休み中なんです! どうしてもというならセンパイを模写させてください!」


「お休みでしたか。それでは永遠におやすみなさい」


「永眠しろと?! 同じお墓に入りたいという事ですね!」


「違います。どうしたらそんな考えになるんですか」


センパイはため息を吐くとこちらへやってきて部長の首根っこを掴む。それはまるで親猫が子猫の首根っこを噛んでいる時のようだった。なんだか可愛く見えてしまう。


「清水部長もですよ。早く定位置に戻ってください」


「えー! 俺もう飽きたァ! 何もしなくない〜〜!」


「それなら引退してください」


「あとちょっと待ってよ!」


部長のその言葉に私はハッとした。


今は1月。うちの高校は部活動にも力を入れていて本人が希望すれば卒業のギリギリまで部にいられる。そしていられるのは2月の最後。


部長が部にいるのもあと1ヶ月ちょっとなのだ。3月になれば1日に卒業式がある。


こうしてワイワイ騒げるのもあと少しなのだ。そう考えるとなんだか寂しい。


「………優良ちゃん?」


「え?」


「話聞いてた?」


「すみません。なんでしたか?」


「暇だから今日の部活終わりにゲーセン行くんだけど優良ちゃんもくる? 栄一くんくるってさ!」


「だから僕はまだ行くとは…」


「行きます!」


センパイとゲーセンなんて久々だし、何より部活を引退してしまう部長とのいい思い出作りにもなるだろう。


「ぜひ行かせてください!」



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