「真斗、セクハラだよ」
「私ってさ…バカだよね…」
「え、何。急に…」
「実力テスト前だから早めに授業が切り上がるのに普通にバイト入れてたんだよ…」
「はぁ…」とため息をついてモップのハンドルの先端に顎を乗せる。グラグラと不安定でこのまま顎を乗せていたらいつか落ちそうだ。
そんな私の事を見ながらついさっき清掃から帰ってきた真斗はボックスをシンクの上に置きながらこちらを覗き見してきた。その顔は変な人を見るような顔だ。なんて失礼な。
「なにそれ。バカじゃん」
「だから言ってるじゃん! もういいっ。モップ掛けしてくる!」
「は〜い」
真斗の緩い返事を後ろに聞きながら私はモップを片手にキッチンを出てフロアに向かう。キュッキュッ、とモップ掛けをしながら私はブツブツと人称代名詞を呟く。高校生になってまで人称代名詞が分からないのか、と言われそうだがそうではない。
実力テスト前。本来なら勉強に費やすはずの時間をバイトに費やしている私はその罪悪感で押しつぶされそうなため、The 勉強といった事をしているだけなのだ。まさか自分から進んで勉強をしたい、と思うなんて思ってもいなかった。
そもそもである。そもそも真斗が今日バイト被っていなければ真斗に押し付け…、代わってもらったのに。
あ〜〜早く帰って勉強しないと明日の実力テストがああ〜〜〜。
なんて思っていたせいだろうか。
「へぶっ!」
モップによってツルッツルッに磨かれた床に足を取られて滑ってしまい、おしりからドスン、と尻もちをついてしまった。痛い。ダイエットしよう…。
「いてて…」
「大丈夫ですか?」
うわ、最悪。誰かに見られた。でも真斗じゃないからまだ………。
そんな事を思いながら声のした方を見る。
「あっ。はい。大丈夫で……」
「つるんって滑ってましたね」
「………真斗。死ぬか殺されるか選んでいいよ」
「いや……っ。ふふっ。それ、どっちも…ふふっ、死んじゃう、じゃ…ふふっ」
さいっっっっあく!!! 真斗に見られた! フルフルと怒りで震える手を抑えながら私は笑顔で真斗に質問をなげかけたがどちらも死んでしまう、と言われる。当たり前だろう。どちらも死ぬ選択肢を与えているのだから。
「最悪…。今なら死ねる…」
「生きてよ、優良は美しいんだから」
「何そのぽののけ姫の現代版みたいなセリフ…」
真斗は笑いながらこちらに手を伸ばしてきた。本当ならその手を引っ張って真斗も転ばせたいがここはグッと我慢してそのまま手を掴む。
「おしり大丈夫?」
「てんちょー。音無さんがセクハラ発言しましたー」
「ちょ! ご親切に心配したのに?!」
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