「センパイ、大切にします」
「カンニングならダメですね」
そう言ってへラッ、と笑う私。しかし残念である。センパイが許可したら実行する気でいたのに。
そんな事を思いながら私はセンパイに教えてもらった通りにサラサラと長文問題を解く。当たっているのかハズレているかなんて分からないがとにかく解く。センパイの言っていた“区切りをつける”事と“全体を軽く読む”事、それから“接続詞などに注意する”事をしっかりと守る。
しかしすぐに成果が出るなんて漫画だけの世界だ。現実はさっぱりである。答え合わせをしながら8割がバツで埋まったノートを直視できる勇気はなかったため遠目から見つめる。
「う〜ん…」
どうしたものか。追試にはならないが直接内申に関わるのなら普段のテストよりも重要度は高いかもしれない。このままでは内申がとんでもない事になってしまうであろう。
中間、期末に比べて実力テストは範囲が“全て”という横暴さ。全てなのだから今更勉強の仕方が分からない。パタ、とシャーペンを机の上に置き、それからだらしなく机に覆い被さった。
「ダメだ…」
「頑張ってください」
「ダメです。無理です。できません」
「それでしたら僕が教えましょうか?」
「え」
パッ、と顔を上げるとそこにはニコニコと微笑むセンパイ─神様─の姿があった。
「いっ、いいんですか?」
「はい。ヤマを張ると約束しましたから」
センパイはそう言うと私の持っていた参考書をペラペラと捲り、目を通す。しばらく参考書に目を通した後、センパイはとあるページを開いて私に見せてきた。
「まずは基本の文法を覚えましょう。文法を覚えれば長文も解けるはずです。恐らく最終問題には自分で文を作る問題もあるはずですからそれにも生かせます」
「な、なるほど…」
となると私は今から文法を覚えないといけないと言う事だ。しかし逆をいえば文法さえ覚えればどうにかなるという事。
「それから…」
センパイはまたページを何枚か捲り、私に見せる。大量の英単語が並んでいる。上の方には“覚えておきたい英単語”とあり、恐らくこれを覚えればいいという事なのだろう。
「これを覚えればいいんですか?」
「その通りです。参考書はそれぞれですが学校が奨めている参考書なのでハズレはないかと。文法を書くのにも読むのにも英単語は必須ですから。間違いなく覚えておくといいと思いますよ」
スラスラとセンパイはアドバイスを伝えると各ページに付箋を貼ってくれた。この付箋は一生取らない。今決めた。
「付箋を貼ったページを中心的に覚えるといいですよ」
「ありがとうございます。大切にします」
「…………何をですか?」
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