「センパイ、優しすぎます」


「優良さん…。顔色悪くないですか?」


「………………え?」


センパイと一緒に登校している最中、そんな事を言われた。


ハタ、と自分自身の頬に触れてみる。うん。プニプニしている。どうやら朝のパックが効いているようだ。やはり流行りのものにして良かった。


「目の下、クマが出来ていますよ…」


隣を歩くセンパイは心配そうに自分の目の下を指差す。どうやら頬の調子は良くても目の下のクマの調子は悪かったようだ。残念。


しかし、なぜ目の下にクマが出来てしまっているのか。それは最早明確であった。


「実は…、昨日の夜勉強してて…」


「勉強?」


「はい! そろそろ実力テストじゃないですか。だからちょっと頑張ってました…」


「それでしたら実力テストの勉強会しますか?」


願ってもない申し出である。まさかセンパイから言ってくれるとは思ってもいなかった。しかし受験生のセンパイに頼ってしまってもいいのだろうか。そんな疑問が頭の中をクルクルと回る。


「あ、いや…っ、でも…」


───センパイの迷惑になってしまいますから


と言いかけてやめた。優しいセンパイの事だ。きっと迷惑じゃない、と言ってくれるのだろう。しかしそんなセンパイに甘えていいのだろうか。


ううんううん、と悩んで私が出した結論は。


「お願いしますっ!」


結城 優良。センパイの事になると途端にバカになってしまう。


「はい。よろしくお願いします。本日の放課後から勉強をしましょうか」


「あっ、でも迷惑だと思ったら即言ってください! 速攻でえみとの勉強会に変えますから!」


「まさか。優良さんとの勉強会が迷惑だなんて…。思いませんよ」


センパイはどこまでいったってセンパイだった。めちゃくちゃ優しい。そんな優しさに触れながら私はセンパイと一緒に学校へと向かう。


その道中で何の勉強をするのがいいかとか、そんな話をした。残念ながら私の得意科目は国語のみ。他の五教科(英語、数学、理科、社会)はてんでダメだ。


「数学は前回教えた通り、分からないところは解説を見てから解くといいですよ。あとは…英語は基礎ができているなら問題を解いていますね」


「なるほど…」


私の場合、何となくで英語は解いていて文法が分からなくなってしまっている事も多いため、センパイの言う事は一理ある。今度試してみよう。


…しかし今度の実力テストに間に合うだろうか。


「英語もそうですが、勉強は一朝一夕ではないので積み重ねですね。今回の実力テストの範囲は広めなのでヤマを張りましょう」


「ぐすっ、ぐすっ。センパイが優しい…。ありがとうございます…、こんなバカに教えてくれて…っ」


「そんな卑下しないでください」


「優しすぎるぅう…っ」



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