「センパイ、表彰ですよ!」
「部長はま〜じで一言余計ですよ!」
「あはは。ごめんごめん」
この先輩の場合、言葉では謝っているが本当に悪いと思っているのかは別である。ジトっ、と部長をやや睨んでから私はセンパイへと近づく。
「センパイ! センパイも入賞していて良かったです!」
「久々の入賞なので緊張していますが、優良さんはそうでないみたいですね」
「まぁたくさんステージには上がってますから」
なんて話をしていると学級担任の先生にそろそろ始まるから静かに、と怒られてしまった。そこから私たちは話はせず、大人しく部長、センパイ、私の順で並び直して表彰されるのを待つ。
「続いて冬の絵コンクールの表彰に移ります。名前の呼ばれた生徒はステージに上がってきてください」
そのアナウンスでピシッ、と背筋が伸びる。今回のコンクールは大賞、金賞、銀賞、銅賞、審査員特別賞がある。ここで名前を呼ばれれば大賞だ。
「冬の絵コンクール、大賞───」
ここで名前を呼ばれれば大賞。
大丈夫。部長に勝つために頑張って絵を描いた。冬の雪の日。振り積もった雪の上にある足跡…というシンプルな絵だが私の中では渾身の作品。
見る人によって姿かたちを変える。真っ白なキャンバスに雪と足跡。それだけなのに私の絵はそんな絵になった。
だから、きっと大丈夫。私の絵は最高だ。
───しかし
「───3年1組、清水梓」
「はい」
名前を呼ばれたのは部長だった。
分かりきっていた事。私がその1枚を完成させるのに対して部長は入賞間違いなしの絵を何枚も描いてきた。経験の差だ。
いや、これは。
───才能の差だ
部長はコンクールなどにさほど興味がなかったため、今まで応募してこなかった。そのため私が大賞やら最優秀賞やらを総ナメしていただけ。本来はそこにいるべきは部長なのだ。
「冬の絵コンクール、金賞。1年3組、結城優良」
「…はい!」
悔しい。センパイにも部長にも、他の部員にだって褒められてきた絵で部長に勝てなかった。いっつもヘラヘラとしていて仕事をセンパイに任せる部長に、だ。
悔しい。いや、悔しいなんて言葉では表しきれない。悔しいが涙は出てこない。涙くらいは出ると思ったのだが。私は意外と淡白なのかもしれない。
ステージに上がり、部長同様に表彰をしてもらう。高校に入って絵を描き始めて初めて貰った大賞や最優秀賞以外の賞状をもらう。
「おめでとう」
「ありがとうございます」
ぺこり、とお辞儀をしてステージ端による。隣には私が欲しかった大賞の賞状を持っている部長。
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