「センパイ、おはようございます!」


「今日の始業式は午前中で終わってすぐに下校。どこかに寄ってもいいが、本来はダメだから俺に迷惑がかからない程度にしろよー」


我らが担任、カーティ(本名、とどろきひかる)。そう言うと気だるそうに学級日誌を手に前側の扉から廊下へ出る。


そんなカーティに続くように私たちも廊下へ。えみと喋りながら体育館へ向かおうかと思っていると後ろから声をかけられる。


「おー。結城は別行動な〜」


「え?」


振り返るとこれまた気だるそうに欠伸をするカーティ。するとえみは納得したかのように「あ、なるほど」とだけ言い、私の背中を押した。


「いってら」


「え? なになに? 怖いんだけど」


「優良、冬休み明けの始業式で別行動とか。分かりきってんじゃん」


「……あ」


冬のコンクール。この前長瀬くんと話したではないか。すっかりと忘れてしまっていた。恐らくはその表彰だろう。何度も経験しているがこれだけは慣れない。


「って事だ。着いてこい」


「うぃっす」


えみと手を振ってしばしの別れ。私はカーティと体育館へ向かい、ステージ近くにスタンバイしておく。その道中、私はカーティに今回の表彰について聞く事にした。


「カーティ、カーティ。私の絵、どうだった?」


「自分的にはどうだったんだよ。上手く描けたのか?」


「自分的には……まぁ、そうだね。モンスターがいなければ最優秀賞…かな」


「“モンスター”?」


カーティは少し不思議そうにそう言った。そんなカーティに私は首を縦に振って答える。


「そう! “モンスター”。今までは寝てたんだけど、最後だからって起きてきたんだよ。やっと勝負が出来ると思ったのに最初で最後なんだよなぁ…」


「残念そうだな」


「まぁ…。絵に関してだけは尊敬してるんで…」


そこまで言ってハッ、と我に返る。少し寂しさが残る言い方をしてしまった。これではまるでずっと勝負がしたかったみたいじゃないか。いや、間違ってはいないのだが。


「あっ、でもね! 全然! 全然大丈夫! 渾身の作品が出来たから! 絶対に私が最優秀賞だから!」


「まっ、楽しみに待ってろよ。いつも通り名前が呼ばれたらステージに向かうんだからな」


「はぁい」


なんてカーティと話していると体育館に着いた。いつも通りのコースでステージ近くに行くとそこにはセンパイと部長がいた。やっぱりこの2人か、なんて思いながら私は挨拶をする。


「おはようございます。センパイは朝ぶりですね!」


「おはようございます、優良さん」


「優良ちゃんおはよ〜。賞取れたみたいで良かったよ」



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