「長瀬くん、辛辣!」
「って事で! もう完結? したからよろしくね!」
「お前、それ…メッセージで言えば良くなかったか?」
ジト目でこちらを見ながら長瀬くんがため息混じりでそう言った。確かにそうかもしれないが長瀬くんの時間を割いてまでのってもらった相談だ。直接会って言いたかった。
「もちろんセンパイには了承済みだよ! センパイも来たかったみたいだけど丁度部長会議があって」
「は? 兄ちゃんは副部長だろ。なんで部長会議に…」
「そこは察してくれ」
「………は?」
そうだよね、普通は思わないよね。部長が部長の仕事を副部長に押し付けてる、なんて。
全く意味のわかっていない長瀬くんを放っておいて私はくるり、と踵を返す。
「じゃ! 私はもう帰るから! 長瀬くんも気をつけて!」
「送る」
「え、気まずい」
「俺もだよ! でもブスでもクソでもおくらないと兄ちゃんに怒られんだよ」
と長瀬くんはやや不満そうにそう言い、私の隣を歩く。長瀬くん、見た目だけはセンパイに似てイケメンだから他の生徒の視線が痛い。視線で言われてるもん。「あの女誰?」って…。あいたたた…。
「顔だけって可哀想だよね」
「俺の事をバカにしたのだけは分かる。一発殴られる?」
「あーははは。冗談だよ、冗談。いいからその拳を下ろしてはくれないかね?」
全く。冗談を言った私も悪いとは思うけどそんな本気にならなくても。
「お前ってやつは本当に顔も最悪なら性格も最悪なんだな」
「しっつれいだね! 私の! どこが! 最低なの!」
「全部」
「泣く! これでも絵は毎回最優秀賞取ってるんだよ?!」
「へー。じゃ今回の冬のコンクールも最優秀賞間違いなしなのか?」
「うっ。それは…」
「取れないんだ」
違う、と言えば嘘になると思っている。私は間違いなく最優秀賞取れる自分の中で最高の絵を描いた。
しかし。
今回はあのモンスターがいる。天才と言われるモンスター。清水梓部長。あの部長と対等な土俵で争えるのは今回だけど思っている。
「………モンスターがいてね…」
「は? モンスター?」
「マジモンのモンスター。天才だよ。あの人は」
人が長い間かけて描いた絵さえもあの部長にかかればものの数分の絵で終わってしまう。実際に部長は私が必死になって描いていた間に何枚も絵を完成させていた。
「そのモンスターには勝たなくていいの?」
「良くない!」
勝つ! そして私の絵が最強だって知らしめてやる。
「…けど実際、その時の審査員の判断だからなぁ…」
「じゃー無理だな」
「辛辣!」
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