「真斗、大丈夫だから」
「お待たせ…」
私が公園のベンチで待っていると少し息を切らした真斗がやってきた。チラリ、と真斗の方を向く。少し待ってしまったが真斗がやってきてくれた事にホッと一安心。
「来てくれてありがとう、真斗」
「いや、それはいいんだけど…」
真斗がオドオドしながら聞きづらそうに口を開いた。聞きづらいだろう。いきなり呼び出されたのだから。
「単刀直入に聞くね」
「うん…」
「お母さんと何かあった?」
「………………なにも、ない」
嘘だ。顔を背けられて眉をひそめながらそう言っても何も説得感がない。まるで子供のようにたどたどしくそう言った真斗は続けて「それだけ?」と言った。
「それだけ。…何もないなんて嘘だよね。何かあったから助け求めたんでしょ?」
「でも……、ほんと、どうでもいい事だから…」
「どうでもよくないよ。それで真斗が傷ついてるなら──」
「ならずっといてくれんの?」
「え?」
急に真斗の態度が変わった。ほら、不安定。
真斗からはさっきまでのオドオドしさがなくなり、鋭い目付きで私の方を見ている。いや、睨みつけていると言った方が正しいのかもしれない。
「優良はさ、そうやって俺を助けようとしてくれているけど。結局それまでじゃん。助けて終わりじゃん。それで俺と一生一緒にいてくれんの?」
「それは…」
「いてくれないよね? だったら迷惑なんだけど。俺は、俺と、一緒にいてほしいの。優良がいいの、誰でもない、優良が…ッ」
ガタッ、と真斗は足から崩れ、その場に座り込んでしまった。いきなりの事で戸惑ってしまったが私はベンチから真斗に駆け寄る。
「なんで……ッ」
真斗は泣いていた。
「なんで置いてくの……。なんで、俺だけ、置いて…」
両手で顔をクシャクシャに多いながら真斗は静かに涙を流していた。そんな真斗の背中を私はさすってあげる事しかできなかった。
「真斗、大丈夫だから…」
「……大丈夫じゃない…。おれは…っ」
正直、真斗がここまで不安定だとは思わなかった。お母さんと何かあったのだろう。真斗はお母さんと仲が良くないらしいから。
と、ここまで思って私はひとつ疑問を抱いた。私が真斗のお父さんと出会った時、真斗はお母さんから“バイトの連絡先を教えた事を謝られた”と言っていた。
本当に仲が悪いなら謝らないのではないだろうか。寧ろ興味すら抱かないのでは…?
その疑問を真斗に聞こうにも今の真斗はとても不安定で聞ける状態ではない。
「真斗、色々と聞きたい事もあるからひとまずベンチに座ろ? ね?」
「………うん」
泣き止んだ真斗は大人しく首を縦に振った。
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