「センパイ、ありがとうございます」
「“なんで”って…」
それは長瀬くんとのメッセージのやり取りでお母さんの話題を出したから。いや、正確には話題を出そうとしてやめてたから。
どうしよう。なんて返事をすればいいのだろうか。そのまま聞いてもいいのだろうか。…いや、むしろここで変に誤魔化しても後でバレるだろう。
『誰かから何か聞いた』
続けて真斗からメッセージがきた。遅れて『?』も。
『聞いたというか見た。ごめん』と私が送ると真斗は『いいよ』と返信してきた。
普段、画面越しにもうるさいのが分かるくらい絵文字を使う人とは思えないくらい静かである。このまま話を続けていいのか、と悩んでいると真斗からまたメッセージがきた。
『ゆら』
ポンッ、とメッセージがくる。
『ゆら』、『ゆらは、』、『たすけてくれる?』、『俺を』、『助けて』、『いや』、『ごめは』、『ごめん』、『こっちの』、『はなし』、『忘れて』、『ごめん』
ポンポンポンッ、と何通も立て続けにメッセージがきて少し焦る。ただそのメッセージのひとつひとつが不安定な真斗を連想させる。大丈夫なのだろうか。真斗は今、どうしているのだろう。
私は焦って真斗にメッセージを送ろうとして止める。
私は真斗に何も答えられてあげられない。真斗は大切だ。しかしその大切さは“友人”としての“大切さ”であり、決して“男女”の関係には結びつかない。
そんな私が真斗に手を差し伸べていいのだろうか。
『真斗』
ポンッ、と送る。すぐに付く既読。
真斗はいつもいつも私の周りをくっついて回っている。それは凄く迷惑だが、そんな元気な真斗が急に元気をなくしたらそれはそれで調子が狂ってしまう。
知らない人じゃなくて、真斗だから。
『昔遊んだ公園に来られる?』
それに、ここまで来て助けないのはそれこそおかしいだろう。
そう真斗に送ってから私はセンパイから返信が来ているのに気づく。
『お疲れ様です。無事に帰られたようで良かったです』
そうメッセージが来ている下には『優二から聞きました。真斗さんが大変なんですね』と来ていてちょうどタイムリーだった。
『そうなんです。ごめんなさい…センパイ。私真斗と会って話をしてきます』
『分かりました。不安定な真斗さんは気味が悪いので。真斗さんの事は優良さんに任せます』
『ありがとうございます!』
私はそう返信をして携帯を閉じる。真斗からは返信がなかったがきっと大丈夫だろう。真斗はくると思う。そう信じて私はパーカーを持って部屋を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます