「センパイ、帰りました!」
「ありがとね、送ってくれて」
「別に。兄ちゃんが言ってたからだから」
長瀬クンはぶっきらぼうにそう言うとそのまま帰ろうと身を翻した。このまま家に入るのもいいと思ったが一応姿が見えなくなるまでは送ろうと待機。
「あ」
長瀬クンが何かを思い出したかのようにそう呟くと同時にこちらを見て携帯を取りだした。
「これ」
「え? 携帯?」
「そ。兄ちゃんに連絡。忘れんなよ」
「それは大丈夫! なんならすぐに連絡したいから!」
「まーじでストーカー…」
「いや! 彼女だから!」
「うげぇ…」と心底嫌そうな顔をされたが私はめげない。すると長瀬クンはもうひとつ思い出したようで「あと…」と続けた。
「あと、何かあるなら本人に直接聞けば?」
「真斗の事?」
「ん。アンタは不安定だから〜とか言ってたけど。アイツ、多分聞かれたい派だと思うよ。それにアンタなら大丈夫じゃん?」
「そう、かな?」
「それとなく聞いてみれば? んじゃ」
長瀬クンはそれだけ言うと私に背を向けて今度こそ振り返らずに帰った。長瀬クンの姿が見えなくなるまで私は見送った後、家に入る。
「ただいま」と言っても帰ってこない返事。そうだった。ママは今買い出し中だ。私はひとり、部屋へと戻りベッドへダイブする。それからすぐにセンパイには“ただいま帰りました”とメッセージを送る。
「………真斗に、連絡…か」
真斗と連絡するといっても向こうからバイト先のグループから追加されたメッセージのみ
しか手段がない。しかしある意味電話だけしかないよりはマシだろう。
私は真斗から一方的に来ていたトーク画面を開く。一番最後に来ていたメッセージは一週間前だ。内容は『暇電』だけ。暇だからといって真斗と電話するわけがないだろう、と思いながら私は真斗に連絡すべく文字を打つ。
「“真斗”…、“何か”…何か…? “あった”…? いや。“平気? ”…? 違うな……」
普段、真斗と話すのは気を使わないくせにこういうメッセージの時だけ気を使うんだからなんだかおかしい。
結局、“真斗、お母さんに何かあった?”に落ち着いてしまった。今ここでお母さんの話題を出していいのか悩んだがこうでもしないといつまで経っても話題にすら踏み込めない気がした。
既読はすぐに付き、返信がくる、と思っていた。しかし一向に返信はこない。一分が経ち、二分が経ち、五分が経った。何か変な事を聞いてしまったのでは?と何度も文を見返すが特にない。強いて言うならばお母さんの事を話題に出したからだろう。むしろそれが原因かもしれない。
慌てて真斗に謝りのメッセージを入れようとした時だった。
『なんで』
真斗からのメッセージだ。
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