「長瀬クン、気まずいね」
「長瀬クン、ちょっと貸してもらってもいい…?」
「ん」
長瀬クンは短くそう言うと私に携帯を貸してくれた。
長瀬クンが“どうしたんだよ”とメッセージを送る前。真斗がポンポンとメッセージを送ってきた内容の中に気になるものがあった。
───母さんがさいきゆ
これはなんだろうか。一番最初に送ったメッセージ。きっと“お母さんが最近”と打とうとしてミスってしまったのだろう。誤字というやつだ。にしてもなぜ急にお母さんの話をしようとしたのだろう。
その割には直ぐに“間違えた”と送っていて私が素っ気ないと送っている。それから続けて“どうしてだと思う?”やら“別れさせたい”などと送っていた。
「長瀬クン、これ…」
私はそう言って真斗が誤字をしてしまったメッセージを指さす。
「それは俺も知らねぇ。なんか間違ったらしいけどそうとは思えないよなぁって思ってた」
そう言って長瀬クンはジュースを飲む(ちなみに中身はコーラである)。
普通、私の話をしようとしてお母さんの話をするだろうか? もしかしたらお母さんの話をしようとしたが、やっぱりやめて私の話をしたのか。ひとまずお母さんに何かがあったのだろう。
「長瀬クン、ありがとう。ちょっと真斗のお母さんの事調べてみるよ」
「そんな事しなくても本人に聞けばいいじゃんか」
「今の真斗はきっと不安定だから…、直接聞くのは良くないと思うの。辛いと、思うから」
「ふぅん」
長瀬クンはやや納得していなさそうな雰囲気でそう言うと残りのポテトをパクパクと食べる。私がほとんど食べていない事は気にしないでおこう。
「それじゃもう帰るね、ありがとう」
「送ってく」
「いいよ、別に。気まずいし」
「お前な…。普通“気まずいし”のところは言わないだろ。…兄ちゃんに言われてんだよ。送れって」
かなり気だるそうな長瀬クンに送ってもらうのはなんだか申し訳ないがセンパイの指示ならそうさせてもらおう。
フードコートを出て私たちは家へと帰る。長瀬クンが送ってくれると言ってくれたがやはり気まづいものは気まづい。何も話さずに家の近くまで来てしまった。長瀬クンは歩きスマホこそしていないが、そっぽを向いているし、私は私でどこを見ていいのか分からずに視線を右往左往。
物凄く気まずい時間であった。
「あっ、ここを曲がればすぐだからもう大丈夫だよ」
「いや。家の前まで行くから」
「なんで?!」
「兄ちゃんの指示」
「了解っす…」
センパイ、やや過保護すぎません???
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