「真斗、どうして?」


「冬休み、デートしよ」


「は?」


どす黒い声が出しまった。女の子らしからぬ。危ない危ない。私は「ん"ん"っ」と咳をしてもう一度真斗の方を振り返る。


最も今はバイト中。いくらお客さんが来ないからって雑談をしていい理由にはならない。それを真斗に伝えると「だから清掃も終わらせてこうして2人で仕込みしてるんじゃん」と言われてしまった。


テキパキとフライドポテトを計り、袋に詰める私とは対照的に慣れているのか目分量でピザの仕込みをする真斗。


「店長もいないしさ。2人で仕込みしてるのに黙ってるなんて暇じゃない?」


「確かに」と思ってしまうのは良くないのだろうけれど。私はため息をついてフライドポテトを入れた袋の口を縛る。


「だからデートしない?」


「しない」


「なんで!?」


「むしろなんでこの流れでオッケーされると思ったの?! ノーだよ! ノー!」


「えー!」


「“えー!” じゃない!」


ぶーぶー、と口を尖らす真斗を無視して私はポテトが入った袋を量産する。これ以上は冷凍庫に入らない量まで作り終えたがその間ずっと真斗は私とデートするならここがいいだの、あそこがいいだの言っていた。正直ちょっと恐怖を感じてしまった。怖い。


「だから公園でデートとかどう?」


「公園歩き疲れるから嫌だ」


「でも彼氏となら?」


「歩くの大好きだから二つ返事で了承」


「俺泣きそうなんだけど」


無視。泣くならどうぞ。もしその場合は無視するけど。なんて思いながら私は両手にポテトが入った袋を抱え、冷凍庫に仕舞う。


真斗はもうとっくにピザを作り終えたようでポテトの入った袋を仕舞うのを手伝ってくれた。こういう所は本当に優しくて好きなんだけどな。もちろん友情視点でだけど。


「ねぇ優良」


「何?」


真斗の呼び掛けに適当に応えながら私は時計を見る。あ、もう少しで店長来て上がりだ。ラッキー。今日は暇だったなぁ。


「優良はさ、ずっとあいつといられるって、本気で思ってる?」


ここでの“あいつ”とはきっとセンパイの事だろう。私は間髪入れずに首を縦に振って答えた。


「もちろん」


「でも“絶対”じゃないよな」


「何が言いたいの? そんなの絶対に──」


「俺なら。…俺なら、一人の時の寂しもわかるし、だから…優良を、一人にさせないって誓える。だから…ッ!」


「無理だよ」


真斗の必死の訴え掛けにも私は靡かず、首を横に振った。


「センパイじゃなきゃダメなの。センパイじゃないと、私が嫌」


「……………っ! なんで…っ」


真斗はそう言うと私の両肩をガッ、と掴んだ。力を入れているのだろう。とても痛い。


「真斗…っ、痛…ッ!」


「優良……ッ!」


真斗は私の目を見る。その目は揺らいでいて今にも消えそうだった。そんな、なんでそんな不安定な目をしているのか。私には分からなかった。



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