【前編あり】「センパイ、構わないでください!!」

ひよこ🐣

「センパイ、応援しますね!」


「センパイは受験生なんだよ」


『うん』


「じゃあ私が何をすればいいのかわかるよね?」


『別れる』


「ンッッな事あってたまるか! 違うよ!」


思わず電話越しでツッコミをしてしまった。友人─須藤すどう えみ─は今日も絶好調である。


彼氏である長瀬ながせ栄一…、センパイとお泊まりでの勉強会が終わった翌日。冷めやまないこの気持ちを誰かにぶつけるべく私は朝13時という比較的健康な時間帯に電話をしたのだ。


さすが、と言うべきなのだろう。えみはもう既に起きていてなんと勉強をしていたという。センパイとのラブラブな勉強会が終わってすぐにひとりだけの勉強を再開する気力は私にはなかった。


『じゃー何よ』


電話越しにえみよ気だるそうな声が聞こえる。きっとスピーカーにでもして勉強をしているのだろう。優等生め。


「センパイを応援する事だよ! 分かる?」


『知らん』


「知らん言わないで! なんか遠く感じるから!」


『元々遠かったよ』


「そんな訳!」


ダメだ。えみのペースに飲まれてしまう。私は脱線してしまった話を元に戻す。


「だから! センパイを応援するにはどうしたらいいかなって思ってて…」


『勉強している時に脇から茶々入れられたら嫌だから何もしなければいいと思うよ』


「あれ? それ今の現状言ってる?」


『よくお分かりで』


「どうしよう。泣きそう…」


しくしくと嘘泣きをすると『でもさー』とえみから話を振ってくれた。


『正直、応援っていってもたかが知れてるでしょ。先輩、そういうの喜ぶ人?』


「……分からない」


『一緒にいるのに?』


「うん。まだ3ヶ月くらいだし」


3ヶ月くらいでセンパイの人となりを全てわかる程、私はよく出来た観察眼を持っている訳でもない。センパイもまた私の人となりを全て分かっているわけではないだろう。


難しいな、交際って。


『まー、いいんじゃん? 優良が先輩の事を応援してたら先輩も喜ぶんじゃん?』


「さっきは茶々入れられたら嫌かもって言ってたじゃん」


『気のせい』


気のせいじゃないんだよなぁ、と苦笑いをしながら私はお礼を言ってえみとの電話を切った。


ボスっ、と今まで座っていたベッドに寝転がる。私がこうしている間にもセンパイは勉強をしているのだろう。


大学受験。今高校1年生である私たちからしたらまだまだ未来の話だ。しかしセンパイにとってはすぐそこの未来。1歳しか歳が違わないというのになぜこんなにも距離があるように思えるのだろう。


すぐそばにいたはずなのに気づけば遠くの方に言ってしまったような感覚。


──なんだか


「なんだか、センパイが…遠いな…」



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