第2話

私が差し出した焼き鳥の包みを先輩は嬉しそうに受け取ってくれた。


小春日和の公園のベンチ。

なんだかぼーっとしてくる。


いけない。

危うく寝てしまうところだった。

どこでも寝ることができるのが、私の唯一の特技だ。

小学校まではみんなにも「すげー」って言われて得意になっていたけれど、よくよく考えてみたら情けない。


まあいいや。今は焼き鳥に集中だ。


まずは一番好きな皮から。


くう~っ。美味しい!

やっぱり炭火で焼いた焼き鳥は最高だね。


特に皮は余分な脂が落ちて、代わりに炭火の香りが付いてくるので、ガスで焼いたものとは全然違う。

少し焦げたところもカリッとしていて、そこがまた良い。


ここでビールがあればなぁ、といつも言っているお父さんの気持ちが分かる気がする。


次は砂肝。


こ、これはっ!

コリコリが口中で反響しているじゃない。

しかも、噛めば噛むほど味が染み出てくる。

砂肝独特の臭みも全くない。


いや~。たまりませんなぁー。

またしても私の中のオヤジが顔を覗かしかけ、思わずそう口にしそうになったが、先輩が横にいることを思い出して、あわてて口をつぐむ。


そうだった。

先輩を励ますのが本来の目的だった。


一番肝心なことを今さらながら思い出し、チラッと先輩を横目で窺った私は、おずおずと話しかけた。


「先輩、どうですか?」

「うん。美味しいよ」

先輩はネギマを上品に食べている。


先輩が持つと、焼き鳥が別の料理、そう、例えば岩塩とハーブをまぶした小さなチキンソテーのように見えるから不思議だ。


ま、眩しすぎる。

私は先輩を直視できずに目を細めた。


「変な純ちゃん」

先輩は微笑んでネギマの鶏肉を一つ私にくれた。


そして、

「でも、ありがとう。少し元気出たかも」

と、私の腕に軽く触れながらお礼を言ってくれた。


もう、死んでもいい……。


私は壊れかけのロボットのようにぎこちない動きで先輩からネギマの一片を受け取ると、口に放り込み、気もそぞろに咀嚼した。


なぜだか、行ったこともないおフランスの味がした。


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