第12話 戦う事でしか語り合えない仲
思わぬ形で勃発した意見の衝突。それは仲間の亀裂だった。
私は勇者を抱っこしているエミリアに、
「エミリアちゃん、危ないと思ったら脱出してね。」と告げた。
「なんでいつも争うんですか。二人とも!」
「それはセレスが幼稚で周りの事を考える事のできない子供だからだよ。」
私がそう言うと、
「あなたは本当に失礼な人。普段から品がない。やっている事も最低で下品極まりない事ばかりな汚れてる女。そんな女に一太刀も浴びせられないワタクシは自分が許せない!」彼女は憎悪を滲ませていた。
「だから、ワタクシの視界から消えてもらいます!」
そう話した瞬間に帯刀していた剣で私の首を跳ねようとした。
その一撃を交わしつつ杖で彼女の頭部を狙った。しかし、そこに来るのが分かっていたかのように交わされた。
「不意討ちとは…へぇ~。成長したね、セレス。」
彼女は無言で手数ではなく、確実に致命傷になるように剣技を繰り出してくる。その技を避けるのでは、なくてすべて弾くことにした。
(避けたらその技のどれかが体に当たる。一度当たると切り刻まれる)
彼女が剣を振る度に杖を使い受け流す。
「このままじゃセレスが負けちゃうよ?全部、太刀筋を読まれて受け流されてるよ?槍を使いなよ?待ってあげるからさ?」
それでも、彼女は剣技を繰り出し続ける。私はそろそろ決めてしまおうと少し振りを大きくした時に彼女はその秒単位の行動パターンを変えて隙ができた私の首を跳ねた…。
「そんな、そんな、ユウナちゃん!」
エミリアは首を跳ねられた私を見て崩れ落ちた。
「なんでなんですか!セレスお姉ちゃん!仲間なのに…」
エミリアはセレスに向かって言った。
「………。」セレスは何も答えなかった。
自分の体の侑名が死んだ事を受け入れかけたその時、
「どうだった?憎い相手の首を切った気分は。」
声がした後ろをエミリアが振り向いたら…侑名がいた。
「ユウナちゃん!無事だったんですか!じゃあ、あのユウナちゃんは?」
もう一度見るとその遺体は無かった。(あれ?なんで?)
「首を跳ねた手応え、気分が悪かっただろう?セレス。」私は問い掛けた。
「最悪の気分でした。怒りや憎しみで相手を殺すとこうなるんですね。」
セレスがそう答えた。
「どういう事ですか?教えてくださいよ!ユウナちゃん!」
パニックを起こすエミリアに、
「今度はこの事態になったら勇者を連れて逃げろ。エミリアちゃん。」
「答えになってないですよ!切られたユウナちゃんは誰ですか!」
(ああ、この子はもう、)
「最初から本物はエミリアちゃんの後ろにいたよ?セレスと戦っていたのは魔封じの杖で作った魔力の幻影。」
「つまり、幻影に杖を持たせて戦っていた、だけだよ?」
「そんな事、出来るんですか?」エミリアは驚いている。
「前に言ったろ?魔力の塊、エミリアの体は最強の一角だって…。」
「私が大魔導師の体を焼いた時、装備出来ないはずの雷神の槍を使った事を覚えている?」
「あっ!そう言えば、気にもしていなかったです。」
「エミリアちゃん、観察力が足りないよ。あの時、私は雷神の槍を自分で振った訳じゃ無くて、幻影の手に持たせて振り抜いたの。」
「あたしの体、そんな事出来ませんよ!」
彼女は自分の体で非現実な事ばかりする侑名に言った。
「気付いて無いから言うね。エミリアちゃんは白魔導師じゃないんだ、白魔法が得意な魔導師なんだよ?」
その事を聞いたエミリアは、
「………。えー!初めてですよそんな事を言われたの。じゃあ、何魔導師なんですか?あたしは?」彼女が問い詰める。
「君は聞いてばかりだから才能が無いんだよ!そこは反省しないと。」
私は彼女を叱った。
才能が無いと言われた彼女はかなりへこんだ。気にする事なく私は、
「強いて言うなら幻影魔導師かな…。魔力を自在に外へ出したり、道具に魔力を込めたり。敵の帯びた魔力を吸収したり、魔力を纏って肉体を強化したり、なんでもできるよ?」
「その究極の技が幻影の分身を作り出す事だったんだ。」
そろそろ、話を元に戻そうかな。
「どうする?セレス。君の負けは確定だからね。」
「敗者に語る口無しです。お好きなように処分を。」彼女が言ったので、
「勇者を守る盾になることを勇者様に誓え!」と叱咤したあと、
「セレスは成長してただろ?だって君が寝ているときに槍のセレスちゃんとずっとひたすら戦っていたからね。肉体の経験値は凄かったはずだよ?」
「はい。今日、戦って分かりました。ワタクシのためにずっと特訓してくださっていたんですね。ありがとうございます。ユウナ様。」
「ワタクシは勇者様の盾となり、ユウナ様の剣となり、全身全霊をかけて戦うことをここにいる者に誓います。」セレスは答えてくれた。
「仲直りしてくれてよかったです。」エミリアは安堵していた。
「しかし、幻影状態で戦うのはつまらないな。」私がそう言うと、
「でも、安全に戦えていいんじゃ無いのですか?」彼女は聞き返す。
私は真剣な感じで、
「戦うときに胸が揺れるあの快楽を味わえないんだ…。」
それを聞いたセレスとエミリアは変態を見る目で私を見てきた。
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