第11話 勇者様を発見しかし…
勇者は子供だった。しかも泣いていた。
「勇者様!」セレスはその子供に向かって行った。
「ワタクシは王国の近衛兵、セレスです。一度謁見の時にお会いしたのですが、なぜこのような姿に。」(このような姿とは?)
「勇者様は術で子供にされてしまったのです。」レックス君が答えた。
「レックス君がやったの?」私は聞いてみた。
「私は呪術を使用できませんから。」(あ~あ。三流だったからな。)
「誰がやったの?」
「魔王の側近の従者で人間みたいでした。術師に化けていましたから。」
(えっ、人がやったの?)
「人間がなぜ!魔王軍にいるのだ!」正義感の塊、セレスは怒っている。
「私には分かりません。魔王軍にはたくさんの組織があったので、それぞれがバラバラの行動をしていましたから。人間だけの組織もあるかもしれません。」レックス君は話してくれたが、
「お前は役立たずだな。何も知らないとは。」私が言うと、
「ご主人様!申し訳ございません!」謝罪してくるレックス君に、
「謝るだけなら猿でもできるぞ。レックス!お前に命令を下す!」
「魔王軍人間組織の部隊に加わり、内情を探れ!」
私がそう話すと、
「御意!」とレックス君が外に行こうとしたので、
私は、レックス君の後ろから抱き付いて、
「お前だけが頼りなのだ。褒美は私の生下着をくれてやるからな。」
レックス君のテンションは最大級になり、
「はっ!では、行ってまいります!」
そう言うと足早に去って行った。
それを聞いていたエミリアが、
「ユウナちゃん!なんでそんなイヤらしい事を言うの!」怒っている
セレスは激怒しながら、
「ユウナ様!勇者様の前でそのような発言をお控えください!」
敵意を私に向けてくる。
私は怒るばかりの無策な二人に、
「だから、セレスは私に勝てないのだ。策も無しに無能なレックス君を魔物の巣にほり込んで見ろ、即死だ。敵も味方も場を掌握したものが勝つのだよ。」
「それとあなたの下着が関係あるのですか?」セレスが聞いてくる。
「レックス君がこの世で一番好きなのは私ではない、私の下着なのだ。」
「魔王がこの世界を征服するために手段を選ばないのなら、レックス君は私の下着を手に入れるためにどんな汚い手でも使う怪物になる。」
「綺麗ごとばかりのセレスでは、世界を救えない。エミリアも勇者様も守れずにすべてを失うだけだよ?」
これを聞いたセレスはそれ以降、何も反論しなくなった。
そろそろ、勇者をどうにかするか…、
「勇者様~。私たち三人の中で誰が良いですかぁ?その人の所に行ってください。」
「ユウナ様!そのような発言は止めてくださいと言いましたよね!」
セレスが怒り狂っていた。
「ユウナちゃん!なんでそんな事を言うの!」エミリアも怒る。
「二人とも怖いよね~。私なら勇者様を優しく包み込むよ~。」
私は母性を全開にアピールしている。
すると勇者様は、エミリアの前に行き、抱っこを求めた。
「へっ?私…。なんで?」エミリアは困惑していたが、
「勇者様のご指名だよ、抱っこをして差し上げなさい。」と私は話した。
エミリアは勇者を抱っこすると安心したのか。眠ってしまった。
「エミリアちゃん。良くやった。」私はそう言うと、
「なんで私なんですか?ユウナ様。」と聞いてくるので、
「その体が一番、人の血の臭いがしないからだよ。」私は答えた。
「どういう事ですか?」彼女が引き続き聞いてくるので、
「私はその体で過去に一度も攻撃を受けた事がない。ついさっきエミリアの体の私が初めて侑名に攻撃を当てただけだ。」
その言葉を聞いてセレスが「一度も?あり得ない!」と言った。
でも、エミリアが、
「確かに私が初めて出会ってからユウナちゃんは一度も攻撃を受けていませんでした。ウォーベアとグリフォングロー戦、それにセレスお姉ちゃんとの戦いも無傷でした。さっきの戦いで怪我したのが初めてだったんですね。」
私は、
「侑名の側は世界一安全な場所なんだ、子供にとっては。」
「いくら最強の私でも勇者様を守りながらは戦えない。だからエミリアが私の代わりに勇者を守り続けて欲しい。敵は私とセレスにまかせればいい。」
「分かりました。その役目お引き受けします。」
エミリアはそう言いながら頷いた。
「私には無理です!」セレスが突然、叫んだ。
「お姉ちゃん…。」エミリアがその態度の変化を心配している。
「ワタクシはその一度も負けたことがない体に傷を付けてしまった。それにユウナ様に一度も攻撃を当てられた事が無い。そんな弱い人間が勇者様も守れるわけない。王都に帰ります!」彼女は部屋を出ていこうとした。
私は部屋のドアの前に立ちふさがった。
「帰るなら、私を倒してからにしてね、セレス。じゃないとここからは出られないよ?」
「ワタクシは強くていつも的確な判断ができる完璧なあなたが憎い!だから、ここを出るためにあなたを殺します。」今度は明確な殺意を持っていそうだ。
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