音色のペンギン

おひさまばんび

TIME TABLE1 パワフルガール

「えーっと、あーあった。桜井さんですね。ありました。じゃあこの書類持って西棟の2階、1-2教室までお願いします。」

昇降口で新入生ガイダンス資料を受け取り、理央はうんと頷いた。

「この書類ですねーありがとうございます!」

彼女の名は櫻井莉緒(りお)。今日から埼玉県立大宮音楽高等学校に通う新高校1年生だ。風貌はかわいい系のちょっぴりおしゃれな少女。セミロングヘアーの天真爛漫な性格で好奇心旺盛。パワフルガール。

音楽の高校とは言っても音楽科の他に普通科も存在する少し特殊な学校になっている。彼女は、音楽科だ。

教室につくと一番窓際の真ん中に自分の席を、見つけたのでそこに座った。

莉緒の家は大宮区ではあるが、この高校とはかなり離れている為、教室を見渡す限りは知っている人はいなかった。

しばらくすると、教室に先生がはいってきた。

「皆さん、はじめまして。担任の羽田美琴です。これから一年間皆さんの担任を務めます。よろしく」

担任の先生の自己紹介が始まり、先生の家族の話で盛り上がった。兄は有名なバンドのギタリストらしい。

そんな前話を終えた後、体育館で入学式を行った。式では、全国トップクラスの実績を持つ吹奏楽部の演奏が行われ圧倒的な迫力に莉緒はここに来て良かったと改めて感じていた。

新入生もピアノ伴奏発表が行われる。


 伴奏直後、その圧倒的な演奏力に会場がどよめいた。

「え、あの子って全中の合唱コンクールで話題になった子じゃない?」

「知ってるー!ピアニスト特集雑誌にも載ってたよあの子」

流れるようにさばかれていく鍵盤に華奢な指先。しかし、そこからの放たれる音は見るもの聴くものを魅了するするだけの力がある。


入学式が終わると各教室でガイダンスをしてお昼になった。

近くの席クラスメイトたちとすっかり打ち解けた莉緒はみんなで机をくっつけてお昼ご飯を食べていた。

すると後ろの席になった福島花音が話しかけてきた。

「莉緒ちゃん、楽器なにやってた?あたしピアノとエレクトーン」

「いやー。楽器は得意じゃないんだよねーでも歌えるからいいかなって」

「そっかぁ!声楽系ね。じゃあ歌、歌ってみて」

そんな急な無茶ぶりを花音からされた莉緒であったが莉緒であれば問題ない。

「いいよーじゃあ教壇の上で歌うねー!」

幼い頃から人前で歌う事の好きだった莉緒は目立つ事が何よりも好きだった。

刹那、彼女の歌声が教室にいた全生徒の耳を傾ける。伸びやか広がりを感じさせるロングトーンやビブラート、何より聴いていて心躍る気持ちになれる。そんな歌唱力だ。

当然その歌声は教室外にも響きわたり、廊下から聴こえるその美声を聴こうと教室前には人だかりが出来ていた。








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音色のペンギン おひさまばんび @kakuyo3162

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