第10話 高校入学で驚く剛太

 そしていよいよ【私】の決戦の時が来た。


 そう、今日から高校生になる私は女子の制服を身に着けている。将暉くんと、やっぱり気がついていた衣里ちゃんには既に話をしていて、今日の登校は一緒に行かないから、剛太をよろしくねと頼んでおいた。


 そして、みんなが学校に行くよりも、だいぶ早くに家を出た私は後悔した。


「おっ、ウチの制服じゃん。新入生? よかったら一緒に登校しない?」


「おお、今年はレベル高いみたいだなっ! こんな美少女が入学するなんて! どう? 俺と付き合ってみない?」


 この高校の諸先輩方は軟派な方が多いようだ。私はことごとく、間に合ってますと答えて、学校に急いだ。


 新入生では一番乗りだったようだ。校門にいた先生にずいぶんと早いねと言われてしまった。


「取り敢えず合格通知に記入されてた教室に行ってくれるかな。一年生はあの校舎の三階になるから」


 そう言って先生が指し示す校舎を確認した。私は一年二組で、剛太は一組だ。将暉くんと衣里ちゃんは同じ二組になった。


 誰も居ない教室に入り、将暉くんと衣里ちゃんが来るのを待つ。二人が来たら剛太も来てる筈だから。剛太だけクラスが違ってしまったけれども、進学するつもりも無いのに、受験して全てを九十八点という高得点を出したんだから、自業自得だよね。私は適度に間違えておいたのに。


 そんな事を考えていたら、将暉くんと衣里ちゃんが教室に入ってきた。そして、私を見て固まる衣里ちゃん。呟くように、


「何で私より大きいのよ……」


 そう言って私の胸をガン見している。そして将暉くんは、


「上から八十九、五十六、八十か……」


 その言葉を吐いたので、座ったままだけどボディブローをお見舞いしておいた。


「グワッ!! ゲホッ、ゲホッ」


「あー、今のは将暉が悪い! 私以外に使ったんだから」


 どうやら将暉くんも剛太と同じ訓練を真剣にやって、スリーサイズが見ただけで分かるようになったみたい。師匠、余計な事を……


「でも、八十九なの? もっと大きく見えるけど?」


「ゲホッ、背が高くて腰が細いからそう見えるだけで、サイズは八十九で間違って…… わかった、もう言わないから、二発目は許してくれ!」


 私の目線に気がついて途中で喋るのをやめた将暉くん。しかし、時既に遅し、衣里ちゃんからアッパーカットを喰らっている。


「私の腰が太いってかっ! あーん!?」


 衣里ちゃん、もう高校生だから口調は気をつけようね。そこに、隣のクラスから剛太がやって来た。


「おーい、将暉、衣里。薫は居たかー?」


 その声に黙って脇に避けて私が剛太に見えるように移動する二人。そして、私を見た剛太が、


「な、こ、なっ!! お、お前ら、もう友達が出来たのか? こ、こんな素敵な子と?」


 最後が疑問形になる剛太。まじまじと私の顔と髪型を見てから、私の胸、下腹部を見ている。そして、


「も、もしかしたら、だけど、か、薫か?」


 その言葉に衣里ちゃんが突っ込んだ。


「もしかしなくても薫以外にないでしょう。薫から聞いてたけど、あんた本当に気がついてなかったのね」


「えっ? 気がついてないって、何を?」


「ハアー、そこが剛太らしいのか…… 将暉は出会って直ぐに気がついたって言ってたし、私でも二回目に遊んだ時に気がついてたよ。薫が女子だって事に」


「なっ、何ーーーーっ!!」


 剛太の叫びが教室に響いたよ。

 クスッ、ドッキリ大成功だね。



 

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