第7話 中学校三年(転移無し)

 達が三年生になった時に、クラスに転校生がやって来た。

 間中光輝まなかこうきくんだ。東京からやって来た爽やかルックスのイケメンで、アイドルだって顔負けの笑顔で自己紹介した。

 女子のほとんどがその笑顔にやられてしまったようだ。席はの隣になった。

 

「やあ、君は本当に男かい? そうなら僕は負けてしまってるね」


 なんて訳のわからない挨拶をされたけど、笑って誤魔化した。


 休み時間になってが席を立って剛太の元に行こうとしたら、光輝くんは僕の腕を掴んだ。


「どうだろう? 僕はまだ来たばかりでよく知らないから、学校を案内してくれないか?」


 はイラッとして強い口調で言ってしまった。


「お断りだね。女子なら喜んで案内してくれるだろうから、女子に頼むといよ」


 すると何故か傷ついた顔をする光輝くん。しかし、腕は離してくれたから剛太の元に向かった。

 そして見てみると、クラスの女子に囲まれてにこやかに話をしている光輝くんが居た。


「どうした? 薫、捕まってたみたいだけど」


 剛太が聞いてきたので、経緯いきさつを話すと、


「ふーん、アイツも友達が居なくて寂しいのかもな。し、後で話しかけてやってくれ、将暉」


 言われた将暉くんが剛太に突っ込んだ。


「イヤイヤ、言い出したのは剛太なんだから、剛太が話しかけてやれよ」


「フン、俺は心友以外の男に興味は無い!」 


 ハハハ、相変わらず剛太はブレて無い。はそう思いながらも二人に言った。


「アレだけ女子が居るんだから、誰か案内すると思うよ。だから、大丈夫だよ」


 がそう言ったら、ホッとしたように将暉くんが、


「そうだよな。俺もそう思うよ」


 そう言った所に衣里ちゃんが来た。


「剛太、薫、将暉、今日も師匠の所に行くんでしょ? 今日は薫が私の相手をしてね。今日こそは一本取ってみせるから!」


 衣里ちゃんが貴広オジサンの所で学んでいるのは小太刀だ。と乱取りをして、前回負けた衣里ちゃんが燃えていた。


「衣里、薫から一本取るのは難しいぞ。俺でも油断してたら一本取られるからな。将暉だってまだ、薫には敵わないし」


「フッフッフッ、我に秘策ありよ。剛太、見てなさい。今日は私が一本取るわよ」


 衣里ちゃんは何か策がありそうだ。それでもは衣里ちゃんに負けるとは思わないけど。


「うん、それじゃ今日は衣里ちゃんの相手をするよ。秘策が何かも知りたいしね」


「フッフッフッ、薫。いい度胸だわ。放課後が楽しみね」


「そうだね。僕も楽しみにしておくよ」


 そして、アッという間に放課後に…… はならなかった。

 とにかく隣の光輝くんがやけに馴れ馴れしいのだ。教科書が前の学校のと違うからと言って、にピッタリくっつくように座り、小声で


「今日の放課後に町を案内してよ」


 とか、


「誰か付き合ってる人はいるの?」


 なんて聞いてくるから鬱陶しくて。それが放課後まで続いたから、の精神はかなりすり減ってしまったんだ。それでも何とか放課後まで乗り切ったから、やっと離れられると思ったら、光輝くんは達四人に近づいてきて、


「四人でどこに行くんだい? 良かったら俺も連れて行ってくれないかな?」


 なんて言うんだよ。もう、は我慢の限界で、大声で拒絶しようとしたら、衣里ちゃんが先に拒絶してくれた。


「アラ、見て分からないの? 私達、これからダブルデートなのよ。私はコッチの将暉と付き合ってるし、薫は剛太と付き合ってるから、貴方が来たら邪魔になるわ」


 よりによってなんて断り文句を言うんだって思ったけど、そこで剛太が光輝くんに


「ずっと見てたけど、初対面であの態度はダメだと思うぞ。都会では通用するかも知れないが、ココは田舎だしな。それに、薫はお前に興味が無いから、諦めろ」


 とマトモな事を言った。は内心でビックリしたけれども、剛太をますます好きになってしまった。


「クッ、そんな事は無い! 薫ちゃんは俺の魅力にまだ気がついて無いだけだ! 必ず俺のモノにしてやるからな!」


 そう捨て台詞を吐いて光輝くんは去っていった。


「あいつ、大丈夫か? 薫の事を薫ちゃんなんて言ってたけど。そりゃあ、男の俺から見ても薫は美少年だけど…… ひょっとしたらあいつってソッチの性癖持ちか!? 薫の貞操の危機だ! 明日から俺と席を変わろう、薫」


 うん、気付いてないのは知ってるけど、そろそろ気付いて欲しいなぁ。でも、まだ我慢。

 それにしても、光輝くんって本当にソッチなんだろうか?

 それなら、が本当は違う性別だと知ったら諦めてくれるかな? 





 

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