第5話 中学校一・二年の剛太

 中学校も達四人は一緒だった。


 は中学校になってからサラシを体に巻き付けるようになった。髪はショートカットのままで、男子用学生服を着てみんなと一緒に登校している。

 サラシを巻いているのは、いつでも剛太の身代わりに、危機が訪れた際に、この身を投げだす為と、身体的理由からだ。男子なら出てこない筈の部分がかなり主張を始めたからだった。


 の家はもともと、剛太の家を主家とする家で、次期当主である剛太は本来ならばご主人様に当たる。けれども、現当主である剛太のお父さんが、時代が違うと言ってくれて、剛太の良き友になって欲しいと頼まれたんだ。

 けれども、ウチのパパとママはそれではダメだって言うし、でも当主の言葉だから守らないといけないしで、友としては勿論だけど、影ながらいつでもお守りする心持ちを持つようにって言われて、現在まで一緒に過ごしてきたんだ。

 私が性別を皆に偽っているのもその為なんだ…… 

 ウソをつきました。本当は幼い頃に剛太がを男だって信じてしまって、いつまで勘違いしたままでいるのか? って楽しくなってきてしまったのが、真相です。ゴメンナサイ。


 そして、今日も剛太は告白した。中学校は三つの校区の小学校から集まってくるから、知らない子も多い。コレは惚れやすい剛太にとっては良かったのか悪かったのか……

 

橋本八舞はしもとやまいさん、貴女のそのスレンダーなボディに付随する、立派な八十二ある胸部に俺は顔を埋めたい! よろしくお願いします!」


 そう言って右手を差し出す剛太。最近になって貴広オジサンの家で見た【ねるとん紅鯨団】の影響を受けている。八舞ちゃんの返事は勿論、


「ゴメンナサイ。私、自分の胸がコンプレックスだから、無神経にそこを言ってくる人は大嫌いなのっ!!」


 だった。剛太は撃沈してプスプスと体から細い煙が上がってるように見えた。 


「くそー、またフラレた! いつか俺の女神はあらわれてくれるんだろうかっ!!」


「剛太、そのうちに剛太の良さを分かってくれる人も現れるよ(ここに一人居るし)」


 の言葉にその男臭い顔から涙を流して礼を言う剛太。


「有難う! 薫はそうやっていつも俺を励ましてくれる! だから俺は頑張れるんだっ! 本当に俺には過ぎた心友だっ!」


 は内心は複雑ながらもやっぱりそう言われると嬉しいから、ニコニコしてしまう。

 そして元気になった剛太はまた、女子に告白を始めてしまうのだけど。


 二年生になった剛太は何と衣里ちゃんに再アタックした。


「なあ、衣里。最近はとてもキレイになったな。俺達は心友同士だけども、キレイになったお前を好きになってしまったんだ。俺と付き合ってくれ。お願いします!」


 衣里ちゃんの返事は、


「あ、ゴメーン。剛太。言って無かったかな? 私、将暉と付き合ってるから、剛太とは付き合えないよ、ホント、ゴメンね」


 だった。いつの間に…… も気付いてなかったからビックリしたよ。 

 そして、剛太は、


「そ、そうか。将暉とな…… 心友の二人が付き合ってるなら応援しないとな…… ハハハ、末永く幸せになってくれ」


 目の端を光らせながらもそう言って家に帰った。は勿論そんな剛太の半歩後ろを歩いてついていったよ。


「薫、俺ってそんなにモテないのは何が悪いのかな?」


 ここまで落ち込んだ剛太も珍しいけど、は心友としてちゃんと言ってあげたんだ。


助平すけべえすぎるからだよ」


 ってね。剛太は更に落ち込んだけど、は続けて言った。


「でもね、剛太はそれで良いんだよ。いつか、剛太の助平すけべえも含めて、剛太を好きになってくれる人が絶対に現れるから(ここに居るよ)、だから、変わらないでいてよ」


 の言葉に剛太は号泣しながら抱きついてきた。


「薫ー、お前は本当に俺の心友だぁーっ! ああ、お前がもしも女性だったなら俺は絶対にお前に告白してるぞっ!!」

 

 はその言葉に真っ赤になりながら、内心で打ち明けようか迷ったけど、まだ早いって思って打ち明けなかったよ。もう少し、このままで居させてね、剛太。



 

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